表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嵐の星のもとで  作者: 音頭
序章
11/32

終幕

冷たい冬、そこに現れた者は初めから結末が定められていた。

そんなことも知らず、生きようとした。

だが、そのあがきは運命によって無慈悲にも潰された。


皆日常を楽しんで過ごしていた。

学校と同じように暮らし、遊んでは寝る。時に勉強することもした。

監視者は彼らの要望を聞き、出来る範囲で与えた。

1つ違うとしたら、30人が一斉に同じところに住むようになったところだろう。

初日は言い争いがあったりしたが、それが1カ月経つと、慣れて誰も文句を言わなくなった。

そんな平和な日が続くと思っていた。

我々もその記録を見て、猶予を4年からもっと短縮してもよいと考えていたその矢先だった。


それはもう3カ月になろうとした時だった。

空に蝶の大群が現れた。それは1日ではなくしばらくの期間続いた。春が訪れそうな矢先だったから、その子たちにとっては全く何も疑問を持たなかったんだろう。しかしこれは異常だった。

彼らのいる場所はエリアⅠ、この国の外に位置する場所で、それよりも外にあるエリアⅡ・エリアⅢと比較しても魔素の量が圧倒的に薄いため、植物も強力な魔物もほとんど生息していない。比較的安全な場所だ。

餌のないそんな場所に何故蝶が飛ぶ?そんな不可解な事情が続いた。我々はその不穏な空気を感じ、警戒態勢をとった。


そして、その予想は的中した。

始めは『眠れない』と訴えるだけだった。だが、徐々にエスカレートしていった。

己の体を自傷するもの、他者に暴力をふるうもの…。

それは監視者へも例外ではなかった。

その異常性ゆえ、無視することは出来なかった。状況の解析をするのがその時は優先すべき事項だった。

落ち着いた際に、1人1人にカウンセリングした。


そうしてカウンセリングをした結果、最悪な出来事が起こっていた。

思考誘導…。何者かの思念に彼らは引っ張られやすくなっていた。それは水面に落ちる波紋のように広がる。

誰かが行動を犯せば、それを真似する。そうして起こったのが狂暴化だった。この状態は非常に危険な状態だ。国民として認めたら、突如として暴徒化するリスクが非常に高かった。


この思考誘導は魔術の中でも最も難易度が高いとされている。それは術そのものの難易度ではない。

解術の難易度だ。術自体は精神の弱みに付け込んで暗示する…巣くって直接操作をする以上に質が悪い。

解除するにはこの暗示を晴らす必要がある。それは本人にとって、それ以上のショックを与える必要がある。即ちトラウマだ。


そう判断された結果、荒療治を行うことにした。

監視者は執行手形を発行された。いついかなる時であっても、彼らに罰を執行できる。例えそれが死であっても、執行できる。だがこれは最終の段階だった。

しかし現実はそれを実行させた。

いくら逃げようとしても、脱走防止で土壁を盛り上げて周囲を囲んである。その壁が彼らを絶望させた。恐怖が彼らを支配するまでそれは続いた。


その惨劇の後、彼らは従順になった。思考誘導は確実に解消された。

実はここまでに疑問があった。思考誘導はかなり厄介なものだ。

だが、どうやって彼らを扇情させたのかだ。火のない所に煙は立たない。

彼らをあそこまでヒートアップさせた何かがあったはずだ。


その日の夜に1人の子をカウンセリングした。その子が霧雨椎名だ。

実は唯一惨事を知らず、ずっと体調を崩し、隔離していた子だ。

本人からの要望ですることになった。

彼女は自覚なしの祝贈持ちだった。彼女の力は簡単に言えば、見えない声を聴く。

しかし彼女に聞こえている声は怨嗟だった。だからかなり不安定だった。

彼女は惨事を知っていた。そして教えてくれた。


そこで何故一連の出来事が起こったのか理解した。

原因は嫌悪感の暴走。即ち、クロカゲがゴキブリの蟲融人であることがばれたことだと。

同時に犯人は真名を知っている人間だと分かった。

そして、彼女と取引をした。


そうして、その声は私に憑いた。その声は憎悪と憤怒が入り混じっていた。

同時に『家が燃えてる。』と連絡がきた。

現場に駆け付けた時にはもう遅く、全て全焼していた。

ギルドに要請し、消火はできたが、残ったのは生焼けの死体と焼け焦げた木材だ。


次の日になって、家を調査すると、死体には部位がなかった。

あるものは手が、あるものは足がというように。

だが、その悩みはすぐに消えた。目の前に答えが来たからだ。

それは体が糸で紡がれた怪物だった。まるで人間の一部一部を紡いでいるようだった。


そいつはこう言った「私は冴羽双葉です。昨日の火事を命からがら逃げてきたんです!私は見たんです!コックローチが火をつけているのを!」って必死にアピールした。

それは自分で犯人だと自白していた。


「…ここで私は確信した。

これは陰謀だった。お前がいなければ誰も欠けずに生きれたことだろう。」


フライは長話を終え、口を閉ざした。話された話はにわかには信じがたいことだった。

フライの周りの空間が大きくゆがみだす。


「何をするつもり?」


双葉は顔を青ざめる。


「生きながら食い荒らされるのはとんでもなく苦痛だ。」

「待ってよ、謝るから。何でもするから。」


双葉は顔に怯えを見せる。


「謝る?謝るで済むもんじゃない。お前が何を言おうが、どうでもいい。死体の体は…体を保つのが限界なんだろ。もうさっさと失せろ。フィルターをかけ続けるのが面倒だ。お前からもらう情報は何もない。用済みだ。

これにて終幕だ。」


フライは冷たい言い放った。

歪みは黒い影だけを残し、双葉に近づく。


「嫌だ、やめてやめて、いやあああああああ!!!」


双葉は黒い影に覆われ、断末魔を上げ、黒い影も双葉もいなくなりそこには色とりどりの蝶が舞っていた。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ