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嵐の星のもとで  作者: 音頭
序章
10/32

茶番

「フライさん?」


俺は目を疑った。そこで死んでいたはずのフライが、ぴんぴんして立っていたからだ。


「なんだその死人を見るような目は?」

「だって死んで…。」

「よく見てみろ。」


言われた通り、ピアノに倒れているものを見る。

それは服を着ているものの、手は白く、人間の肌の色にしてはあまりにも白すぎる気がする。

恐る恐るそれに触れる。手は折った分だけ折れ、精巧な人形のように動く。

その動きをするのは服屋にあるあれだった。


「これは…マネキン?」

「正解。君たちが脈をとっていたのはただのマネキン。マネキンに脈なんてあるわけないね。一生懸命とろうとする姿。あれは傑作だったよ。笑いをこらえるのが大変だった。」


俺と優花の姿はフライにとってはとても滑稽な姿に見えてしまったことだろう。思い出すだけでも、恥ずかしい。

よく見ると、血だまりもただの色水に変わっている。

でも、俺はあの光景がまやかしであったことは到底信じきれない。


「君の思っていることは最もだ。」


読まれた?


「私は眷属を体の中に入れ、コントロールする。いわゆる寄生ってやつかな。ただ、全身を操るのはできるが、面白くないんでやらない。あくまでも、君たちが指令を出すところに居候させてもらっているだけ。だから思考は読み取れるし、見た・感じたこともわかる。それをいじることができる。ただ唯一触覚はいじれない。厳密に言うと、バレるからいじらない。」


あーね、見た光景をいじって、殺人現場にしてしてみせたのか。

あたかも自分はいないようにしていたのかあ。


「もしかして、ピアノ弾いてたのは?」

「私。」

「飛んでいたハエも。」

「それも私。」


全部掌の上で遊ばれていた。

(悔しい。あんな恥ずかしいこと言ったのに!!)

顔から火が出そうだった。


「いやあ、君は男だったよ。GG。」


グッドサインを見せられる。何がグッドゲームだ。本当に自作自演だったのかよ。


「そうだよ。だからピンポンって言ったじゃん。」


あのピアノの音、正解の音かよ。分かるか!


「生きてるのなら言ってくださいよ。そうならそうだと…。」

「え、言ったらおもんないじゃん。」


優花は少し顔を真っ赤にしているが、フライはただ彼女で遊んでいるようにしか見えない。

でも彼女は怒っているわけではなく、あの極限の緊張から解放されて、少しはほっとできているようだ。


「梨花って子は結局誰だったの。」


結局最後の最後まで分からなかった疑問を投げかける。


「私の眷属。最近梨の花の香りがする香水、あれがいらなくてね。在庫処理どうしようかと思った矢先、丁度いいやって思って、演出用に敢えて瓶を割って、その周りを眷属で固めて、人の形にしたもの。だから押しただけでも、体にずぼっと穴が開く。そこからちょろちょろちょろぉっと冷たい香水の液が流れていく。そこで、視覚情報をいじったら、あら不思議。まるで血が流れてきたみたいで、とってもびっくりしただろうね。」


彼女は始めから存在はしていた架空の人物だった。それで双葉は梨花を殺したと焦って、俺たちを口封じしようとしてきたのか。


「今日以外でも、ピアノはなってたよ?」

「ああ、それは仕込み。私が弾いてた。そっちのほうが幽霊信じ込みそうでしょ。」

「サイテー。」


優花は地下から声が音が聞こえて気味が悪いって怖がっていたからな。まさかその真相がこの茶番劇のための準備だと伝えられたら、そう言いたくもなる。


「なんで、梨花は殺されたんです?」


別にただ喋るだけでは、双葉も殺そうとはしないだろうし、一体なんでだろうか。


「そもそもあいつは始めっから全員を殺す予定だったよ。」

「「え?」」


2人して驚く、まさか根っからの殺人鬼なのか?


「快楽目的ではない。誰かに言われてだろうね。最もそんなことにはならなかったんだけどね。だってね、誰が生き残ってるのか知らないし、そうかもしれない奴に『ばらすぞ』なんて言われたときは堪ったもんじゃない。衝動的にやってしまった。

押しただけで体が貫通する。穴が開いたところからちょろちょろと血が出てきた。腕を急いで引いた。ふと見たら、梨花が勢い良く頭をぶつけて、赤い池に倒れている。君は殺したと焦った。でもすぐ帰らないと怪しまれる。君はどうやったらいいのか考えた。とりあえず、彼女をピアノの下に隠した。階段を上がりキッチンで手に着いた血を流した。その後は何事もなかったかのように装い居間に戻った。その後は私が1人だけで地下にいった。


君は読んでいた。入ったら死体のあるピアノのほうに行くと。だから、仕込みを一つしていた。天井に蝶を召喚しナイフを持たせたんだ。軽いナイフだからな眷属でも簡単に持てる。そうして油断した私を殺した。うまくいった君は殺人を継続することにした。


後は1人もしくは2人を下に送るだけ。1人残るのなら、その場で殺せばいい。外に出るのなら、鱗粉を吸わせればいい。どちらにしても簡単に始末できる。ここはまわりに何もないから目を気にする必要はない。

今回は2人とも下に行った。下では2人が鱗粉を吸って殺し合うのを見て、相打ちになったはずだった。

けど、残念。本当は全然違いました~。それは私が見せた幻でした。」


ガン!


「クソが!」


双葉はヒトが変わったように荒れ、思いっきり床を叩いた。


「まだ話は終わってませ~ん。ピアノにいったマネキン君はギリギリで蝶の接近に気付いた。だが間に合わず、相打ちになった。それは帽子を深くかぶっていて、判断が遅れてしまったからなのかもしれない。

血がドバドバと溢れて死んだ。そんな感触があった。手ごたえがあった。

けどそれは私の仕込み。どうやったらいい感じにリアルで血を出せるのか、工作した。それは自由研究みたいだった。久しぶりに童心に帰って楽しかったなあ。


なら本物はどこに?眷属分解して、ばらばらに散らばってました。そうなれば2人が階段を下りても気付くわけがない。2人が入った後、身体を元に戻して、ドアを閉め、外から押さえた。

中ではマネキンが倒れているだけ。梨花はどこいもいない。何故ならもう梨花は眷属の姿に戻っていたから。それは香水を散布させた。瓶を適当な位置に落とした。これがあの部屋の匂いと瓶と液体が離れた位置にある正体。

後は時を見て、ブレーカーをオンオフして、ホラーっぽい演出をする。そして、驚いてる間にそうっと扉の隙間から入る。


ということで…ドッキリ大成功!!」


テレビでよく見る『ドッキリ大成功』と書かれた看板を掲げてる。

正直、何が何だかわからなくて、どうリアクション取ったらいいかわからない。

取り合えず、遊ばれてたってことが分かった。


「あれ、しけてんな。ん~何でだ?」


そらそうよ。あんたからしたら茶番でも俺たちからしたら必死だもん。笑ったり楽しんだりする余裕はない。


「…してやる。」

「ん?」

「殺してやる!」


双葉は手に持ってた包丁をフライに向かって投げる。その形相は般若のようだった。


「おっと。買うのめんどくさいんですから、やめてくださいよ。」


看板に突き刺さる。フライはどうとでもないというように軽口を叩く。


「もうすぐで楽になる、今のうちに懺悔をしておけ。そうすれば苦痛を和らげられるかもな。

そして、ええ、分かってますよ。もう我慢ができないんでしょう。」


双葉に話しかけていたと思ったら、突如明後日の方向に喋りかける。


「30人殺し、その真相を話しましょう。」


パチン!

フライは手を鳴らす。


「きゃ!」


俺と優花の後ろに女の子が落ちてきた。


「その子は霧雨椎名、この事件の唯一の生存者だ。

そして、今はただ我慢しなさい。もうすぐで終幕ですよ。」


誰に話しかけているかは気になるものの、ついに終幕が訪れようとしていた。









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