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嵐の星のもとで  作者: 音頭
序章
1/34

崩壊

よろしくお願いします。

「はああ…。」


雲一つない晴天、心地よい涼しい風…多くの人にとってはそれはいい通学日和になるだろう。

しかしこの桜本正也にとっては、そうは思わない。心が重く、しんどい。

俺は学校は好きじゃない。

なぜなら俺のいるクラスはひどいところだ。差別・いじめは当たり前、片親だって不思議じゃない。

そして…先日俺たちの担任であった井出先生が亡くなった。どんな死に方だったのかは教えてもらえなかったが、朝来たら教卓に花瓶があってクラスのみんなが察した。その日はみんな泣いた。学校で唯一俺たちを対等に見てくれた先生と二度と会えないのは悲しかった。

もう授業って状況じゃなかった。いつもからかいにくる子たちでもその日は誰もからかおうとは思わなかった。

俺たちは井出先生がいたからこそ、このクラスにいれたと言っても過言ではない。後高校の残り1年一緒にいたかった。

まだ失踪のほうが心がしんどくなかっただろう。

(なんであいつが失踪で、井出先生が亡くならなきゃいけないんだよ。)

クソ野郎の大山、俺たちに好き勝手当たり散らしていた屑。

大学自慢で威張っていたが、俺からしたら屑教師に他ならない。あんなのが教師だとは認めたくない。

逆だったらよかったと思う。

ちなみに他に失踪している人も少なくない。俺のクラスだったら大沼神威、雛月栞奈、近藤正嗣、大宮佳織。他のクラスでもそんな事件が起きている。

(昨日のニュースで最近突然失踪する人が続出してるって言ってたな。もしかして…。)

嫌な想像はやめよう。気味が悪くなる。


「どうしたの顔色悪いけど?」


隣を歩く彼女。桜本優花は俺を心配している。

優花は同じ桜本と言う名前だが、俺は優花と兄妹ではない。同じところに住んではいるが、色々あって家族となった。高校を卒業したら家から出ていくつもりだが、まだ優花には話せていない。


「俺のクラスのこと知ってるんだったら、わかるだろ。」

「あ…ごめん、そうだよね。いい先生だったね…。」


空気が重い。彼女と俺は同じクラスではないが、井出先生は生徒から人気の先生で、他のクラスの子たちからも先生は人気だった。優花も例外ではない。


「ん?」


その時、俺の視界の隅に一瞬変なのが映った。


「どうしたの?」

「今、あそこになんかいなかったか?」


俺はその場所に指を指す。


「なんもいないじゃない。猫でもいたんじゃないの?」


指をさした場所には今は何もいない。しかし、俺の疑問は払拭しない。

(猫ぽかったんだけど、なんか足5本なかったか?)

路地裏を横切っていただけだったので、確かに一瞬しか見えなかった。しかし寄り道すれば遅れるかもしれない時間だったため、先を急ぐことにした。


キーンコーンカーンコーン

予鈴のチャイムが鳴った時に到着した。

いつもよりゆっくり歩きすぎて、時間がぎりぎりだった。


「おはよう。」


扉を開けて入るが、教室内は静寂に包まれていた。昨日と同じでみんな沈んでいた。

一日で気持ちが晴れるわけがない。


キーンコーンカーンコーン

席に着いたら、いつの間にかチャイムが鳴り、朝のホームルームが始まる。しかし誰も入ってこない。


「私たち捨てられたんだ。」


真白ちゃんがぼそりと言う。

周りがざわめく。状況が状況だけに気が気でない。


「真白、大丈夫だから。」


真白の双子の姉の真黒が落ち着かせようとする。


ガラァ


そんな時、扉が開かれる音がする。

入ってきたのは校長と副校長と教頭だった。


「本日付けで君たちを退学とする。」

「「「え!?」」」


校長の言葉にクラス全員の目が点となった。


「納得できません。説明してください。」

「説明も何も、君たちはあいつが死んだ今用済みとなった。君たちに授業のできる教師はいない。」

「他のクラスと同様にしたらいいじゃないですか?」

「他のクラス?勘違いしてるようだが、このクラスはもとより必要のないクラスだ。殺人・窃盗・傷害をしてるような奴らばかり。社会不適合者の集まりだ。あいつが1人で全員の面倒を見るなんていうから残してやったが…ふん、馬鹿馬鹿しい。初めっから従っておけばこんなことにはならなかったのに。才能の無駄遣いだ。ここまで面倒を見てやったんだ感謝してほしいものだ。」


先生は1年の時からすべての教科を教えてくれて、お腹が空いた奴には食事も食わせてくれた。好きな時に遊ばせてくれたし、何なら学校にも泊めさせてもらったこともある。自虐で「自費なんだよ。」って話していたことがあったんだが、あいつので確信した。先生は俺たちを自費で面倒を見てくれてたんだ。

俺は帰る家があったが、ない子からすると親代わりのようなものだった。

先生を馬鹿にされて不愉快にならない奴はこのクラスにはいない。クラスのみんなが拳を握る。

俺自身は小さいころから疫病神と呼ばれ、毛嫌いされてきた。だから嫌われるのはもう慣れてる。

でも…先生を馬鹿にされるのは許せない。


皆が席から立つ。校長のいる教卓に集まってくる。


「座れ屑ども。」

「校長、私たちは関係なく退学ですよね?」

「ああ?それはそうだが、どうかしたか?」

「でしたら、理由を作らせてほしいんですよ。邪魔だからっていうのじゃなくてね。」

「何が言いたい?」


俺たちは教卓の前に集まる。委員長である真黒が校長に対して冷静に話す。しかし確かな怒気を含んでいた。


「あなたを殴らせてください。」


彼女は怒りを抑えるのが限界に達していた。

校長陣営からはざわめきが生じる。


「真黒さん考え直してみたまえ、次貴方は保護観察では済まないのだよ。」

「今すぐその発言を撤回しなさい。」


教頭と副校長が言い返してくる。しかし、真黒は止まろうとはしない。


「自分の居場所が初めてできたのに、そんな場所をあなたは壊した。それだけでなく、先生を侮辱した。そんなの許せるわけないでしょ。」


そうやって怒り心頭になって殴りかかろうとしている瞬間だった。


「きゃあああああああ!!!」


校庭のほうから叫び声が聞こえてきた。

教室にいる皆が窓のほうに走って校庭を見る。するとその先にはあの猫に似た5本足の何かが体操服姿の生徒たちを襲い掛かっていた。生徒たちは校庭で逃げまどっていた。

そしてあの時と違うのは大きさが倍になっているところだ。


「…。」


皆がその光景に絶句していた。


「この世界もしまいだね。誰かが穴をあけた。」


教卓のほうから声が聞こえる。振り向くとそこには男が教卓の上に座り、教卓の中に入っていたはずの先生の生徒手帳を持っていた。


「誰だ?いやそれよりどういうことだ!?」

「難しい話をするつもりはない。しかしこの世界は終わりだ。堕とさせてもらう。」


校長らが興奮気味に男に話しかけるが、男は気にすることなく、生徒名簿を懐に入れると虚空の中に手を入れる。

虚空に腕消えたと思った瞬間、すぐに腕は戻ってくる。手には自分の身長と同じ高さはあるであろう巨大な裁ち鋏を片方ずつ持っていた。

鋏を円を描くかのように動かすとまた虚空に直した。


「外を見てみろ。」


外を見ると空に夜空が重く沈み込んでくる。

夜の帳が降りてくるとの表現が正しいのかもしれない。


「ここを切り取らせてもらった。悪いが死ぬまでせいぜい数秒しかない。安心しろ。痛みはない。」


言われたことで周りがざわつく。

同時に上から揺れるような音と上から何かのかけらが落ちてきた。


「なんだこれ?」


上を見上げると、上の階の床・天井が割れていた。

(天井が落ちてくる!!)

俺はその瞬間、この後どうなるかを察してしまった。

急いで机の下に隠れようとするが、間に合わず先に天井が倒壊し始め、瓦礫と何らかの液体がなだれ込み、下敷きになって、俺は意識を失ってしまった。






クラス内にいたメンバー

桜本正也、大島真白、大島真黒、城野知世、大石竜馬、神沼将貴、白野幸喜、要明日香、岡本朱莉

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