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親友が好きだと言っていた女子に告白された  作者: 白髪銀髪


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他人にどう思われようとも気にならない

「告白はされませんでしたよ」


 電話口越しの開口一番で、茉莉はそう口にした。

 

「だろうな。爽司もそんな感じだったし」


 そもそも、デートをするとか以前に、茉莉のことを知った――あるいは、クラスメイトとしてでも関係を持った時点で口説きに行くとか、即座の行動を起こさなかった時点で、後は、時間をかけるんだろうなってことは察した。

 武術だって、先の先をとるか、後の先をとるか、大抵はどっちかに決めてるほうが強く出られるわけで、どっちつかずの曖昧な構えだと、えてして、うまくはいかないもんだ。


「ちなみに、茉莉のほうからはそのことを言ったりしたのか?」


「朔仁くんと付き合っていることをですか? いえ、言い出すタイミングもなかったので」


 まあ、二人で遊んでいる最中にそんな雰囲気にもならないか。

 デート? でもしているのに、他のやつと付き合ってるのかなんて聞くようなやつも、ほとんどいないだろうからな。

 

「べつに、悪いことをしているわけではないのですから、そんなに気にする必要もないのではありませんか?」


 それはそうだろうけど、気になるものは気になるだろ。

 

「デートまでしようと思うような相手のいる幼馴染の、そのデートの相手と付き合っていて、デートが終わった後に連絡までして、それを秘密にしているっていうのは、悪いことには入らないのか?」


「言われてみれば、たしかに朔仁くんは大悪党かもしれません」


 笑ってんじゃねえよ。

 

「ですが、朔仁くんが大悪党なら、それと付き合っている私も同じ大悪党になるのですから、似た者同士ということです」


「いや、それは似た者同士だから付き合ったんじゃなくて、付き合ったから結果的に似た者同士になってるってだけだろ」


 原因(あるいは、理由か?)と結果が逆転してる。

 まあ、この場合は、付き合うっていうのは、二人一緒じゃないとできないわけだから、同じところがあるって解釈でもいいのかもしれないけど。

 

「そもそも、常に恋人と一緒にいて、他人との交流を断つことが良いこと、健全なことだとは思いません。節度は必要でしょうが、それでも、そんな相手と付き合いたいと、朔仁くんは思いますか?」


「いや、茉莉以外と付き合おうとか、考えたこともないから」


 それは、茉莉も知ってるだろうが。

 どんなデートだったのかとか、話したこととか、まったく気にならないと言えば嘘になるけど、今こうして茉莉が俺と話をしているんだから、それでいい。

 話さなくてもわかるとか、茉莉と爽司を信頼してるとか、ましてや、二人が本当にどうにかなろうとまるでかまわないとか、そんなことじゃないけど。 


「……そうでしょうね。朔仁にはそんな度胸はないでしょう。ほかの意味では、見る人からすれば、大分肝の座っていることをするとも思われるでしょうけれど」


「それは、茉莉も他人に言えた話じゃないだろうが」

 

 他人に言えたどころじゃなく、度胸の塊みたいなやつだと思う。

 もちろん、それだけじゃないってこともわかってるけど、おおむねではってことで。

 

「どんな付き合い方だろうと、当人同士が幸せなら、それでいいんじゃないのか?」


 当人っていうか、まあ、関わってる人がってことで。

 さすがに、浮気だの、不倫だのを肯定するつもりはない。あとは、悪事で繋がっているとかってことも。それは、当人じゃなく、周りを不幸にするからな。それから、最終的には本人たちも不幸になると思う。


「朔仁くんは今幸せですか?」


 真正面からえらいことを聞いてくるもんだな。

 これに素面で言い返せたら、それこそ、すけこましとかって言われるんじゃねえのか?


「そうだな。茉莉と同じ気持ちじゃないのか」


「……小賢しい返し方をしますね」


 仮にも、付き合ってる相手に対して、小賢しいとか言うか?

 そもそも、付き合ってる相手に対して、今幸せか、なんて尋ねるとか、そっちのほうこそ小賢しいだろ。

 

「茉莉と付き合っていくなら、このくらいはしないと、一方的に俺が言い負かされる未来しか見えないからな。遠慮するような間でもないだろ」


 多分、俺が普通に答えて、同じ質問を茉莉に返していたら、今の俺みたいな返答があったことだろう。それは容易に想像できる。 

 それに、今のを小賢しいと認めたってことは、俺の考えが間違ってなかったってことの証明でもあるわけだし。

 

「まあ、でも、私は朔仁くんが他の女性とデートをした、あるいは、するなんて聞いたら、怒るでしょうね」


「……もしかして、爽司とデートするってことを止めてほしかったりしたのか? 一応、誤解のないように言っておくけど、気にならなかったわけじゃないからな?」


 茉莉も同じ理由だとは思うけど、信頼しているとか、度胸があるとかってこととは別の話で。

 

「べつに、そんなことは。ほかの人からどう見られようと、私の想いは私だけのものですし、朔仁くんのこともそうです。結局、人の心を動かすことはできても、決めることはできませんし、してはいけないことだと思いますから」

 

「それは」


 珍しく、弱気になってるのか? 疑ってるとかってことじゃないのはわかってるけど。

 

「他人にどう思われても気にならないということです。私の気持ちは、私と、それから、朔仁くんにだけ知っていてもらえればそれで十分ですから」


 まあ、そうだよな。いや、今のは俺だけに知っていてもらえればとかって言ったところに優越感的なものを持ってとかってことじゃなくて。茉莉の気持ちってことについてなら、縫子さんにもしっかり話すべきだろう。むしろ、俺よりもはっきりと。

 茉莉が弱ってるところなんて……一回くらいしか見たことないからな。あれを、弱ってるなんて言葉で片付けて良いのかってことはあるにしても。

 いや、弱ってなくていいんだけど。いつも笑って……は無理か。基本、クールだからな。とにかく、茉莉がそのとき、満足しているならそれでいい。

 刹那主義ってことじゃなくて、そのときが続いているなら、それは、ずっとってことだろ。茉莉の言葉を借りるなら、むしろ、俺が茉莉を満足させるべきなのかもしれないけど……それは多分、俺だけでも、茉莉だけでもなくて、二人で続けていこうとすることなんだろう。

 けどなあ。意外と、溜め込むタイプだからな。俺には大分発信してくれるようにはなったみたいだけど、多分、それだって、茉莉的には手探りな部分が大きいんじゃないかと思ってる。


「それなら、はっきり言うようにしてくれよ。いや、今でも十分ではあるけど、これからもってことで。俺も察することのできるようには、努力するから。だから、遠慮とかもするなよ」


 たとえ、今の茉莉が、自己防衛の結果なんだとしても。

 その努力を否定する気はないし、むしろ、根性のあるやつだと、すごいやつだと思ってる。

 実際、俺がこうして好きになっているのは、茉莉のそういう部分も大きいんだろう。


「朔仁くんの努力に見合うものを差し出せるとは思えませんね」


「それは、俺には察の心が致命的に足りていないってことか?」


 それとも、デリカシーとか、女心とか、そういうものか?


「そもそも、見合うものとか、そういうことじゃないだろ。俺が女心とかってことに疎くて、それで茉莉が困るってことなら、改善しようとするのは当然だろ」


 どうせいても、改善が見込めないとかそういうことじゃないわけだし……手の施しようがないとかって思ってるわけじゃないよな?


「べつに、困るとは言っていません。そういうところも含めて、朔仁くんと一緒にいるわけですし」


「そうか」


 それならいい。

 

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