表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親友が好きだと言っていた女子に告白された  作者: 白髪銀髪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/98

付き合っている相手から他人を勧められるということ

「今日、七原くんからデートに誘われましたよ」


 夜、白月からそんなメッセージが届いた。

 そのこと自体に驚きはない。俺自身、爽司から直接、そんな考えを聞いているからな。

 

「そうか」


「それだけですか?」


 画面に映るのはメッセージの文字列だけだから、白月の顔色とかまではうかがうことはできないけど、なんとなく、不満を持っているような雰囲気は伝わってくる。

 

「それ以外にどうしようがあるんだよ。もしかして、もうすこし独占欲を発揮してほしかったか?」

 

 自分で言うのはかなり精神的に辛いんだが。

 

「だいたい、白月は断ったんじゃないのか?」


「……はい、お断りしました」


 若干、間が空いたのは気になるけど。

 なんで今さら? とは思う。


「爽司は良いやつだよ。そのうえで言っておくけど、今回の爽司はかなり真剣みたいだったな」


 だからって、道場はもちろん、引き下がったりはしないけど。

 だいたい、悪いやつなら、複数人相手と、同時じゃなくても、付き合えるはずもないんだよな。もちろん、俺は女じゃないから、本当のところ、男女の精神構造の違いなんてものがあったとしたら、それを理解しているとは言い難いけど。

 そんな返事をすれば、白月から通話がかかってきて。


「真田くんにはしっかり顔を見て話さないと伝わらないと思いましたから」


 一応、無料通話アプリのメッセ―ジでのことだから、料金自体はかからない。まあ、そんなことを気にすることもないんだろうけど。

 

「真田くんはご自分の彼女が他の誰かとデートをしても平気なんですか?」


「そりゃあ、まあ、平気じゃないけど……」


 白月は少し怒っているみたいな様子だった。

 

「それとも、私のことを疑っていますか?」


「白月のことを? 疑う?」


 なんで? そもそも、なにに対しての話だ?


「真田くんもご存じのとおり、私は今まで、たくさんの方からアプローチを受けたことがあります。もちろん、重大な隠し事をということではなく、恋愛的な意味での話ですよ。もっとも、自身の秘めた恋心という意味では、重大な秘密だということに違いはないのかもしませんが。まあ、中にはストーカーとか、行き過ぎたこともありましたが」


「それはよく知ってるけど……?」


 いや、詳しい人数とか、個人を特定できるレベルでとか、日付とか、台詞とかまでって意味で知ってるわけじゃないけど。


「過去にされてきた告白に対しては、すべてお断りしてきました。こうしている今を除いて、誰かと付き合ったことはありません。真田くんだけです」


「それは、まあ、光栄だって言っておけばいいのか……?」


 白月のほうこそわかってるかどうかは知らないけど、俺だって今までに誰かと、恋人――彼女とかって意味で付き合ったことがあるわけじゃないんだから、そのへんの機微について聞かれてもさっぱりわからないからな?

 もちろん、努力するとはいったけど、いまだ、理解できているとは言い難い。そもそも、対象が白月からってことしかないわけで。さすがに、付き合っている相手のいる誰かに聞いて来いとまでは言わないよな?

 

「そう言ってくれるのなら、冥利に尽きるということもありますが、今私が言いたいのはそういうことではありません」


 白月は、俺を試すか、あるいは、気づくのを待ってでもいるかのように一度間を空ける

 

「真田くんの言っていることはつまり、私の真田くんに対する気持ちを疑っているのと同義ということですよね。あるいは、真田くんにそのつもりはなくても、言われた相手はそのように受け取るということです」


「そうなのか……?」


 つまり、女子――いや、付き合っている相手の心情に対する理解とか、配慮が足りていなかったってことか?

 それは、俺だって初めてなんだから大目に見てくれるとありがたいんだけど。もちろん、いつまでもって話じゃなく。

 

「そうなんです。普通、付き合っている相手から、他の誰かのほうがお似合いじゃないのか、みたいな話を切り出されたとしたら、それは別れ話をしていると取られても不思議はありませんよ?」


「まじかよ……」


 白月は断言した。

 そこまで言っているつもりはなくて、ただ、少し疑問というか、気になっただけのつもりだったんだけど、そんなに大事になるような話だとはな。

 

「ん? けど、白月はわかってるんだよな? だったら問題はないんじゃないのか?」


 俺の付き合っている相手は白月だけで、他の相手とどうこうなるなんてつもりはないからな。言葉っていうのは、コミュニケーションのための道具とか、手段なわけで、意思疎通自体がなされているなら、とくに問題はないってことになるんじゃないのか?

 

「本当に、一から全部教えたほうが良いですか?」


 白月は笑顔だったけど、それが怒ってるんだってことくらいは、俺にもわかった。

 言葉にしなければ伝わらないこともあるということは、俺もわかっている。さっきのこととは逆になるかもしれないけど、言葉というコミュニケーションツールが発達したからこそ、他のことに頼るんじゃなく、それを使いこなさなくちゃならないわけで。

 

「……全部とは言わずとも、今の気持ちくらいは教えてくれるとありがたい」


 俺だって、白月からの告白を受けると決めた以上は、しっかり、そういう相手として向き合う必要はあると思っている。

 ただ、白月だって今まで誰かと付き合ったりしたことはないはずなのに、わかっているってことは驚きだけど。


「今の私の気持ちを簡単に言うなら、真田くんの馬鹿、といったところでしょうね」


 白月はお茶目にそう言って。

 

「まず、前提として、そういったことを詳しく尋ねようとすること自体、デリカシーに欠ける、あるいは、配慮に足りていないのだということは知っておいてください」


 どうやら、おそらく俺は説教を受けているらしい。

 

「真田くんにもわかりやすいように、単純にして説明すると、普通は告白した相手からべつの誰かを推薦されようものなら、それはあなたとは付き合えないからと断られているのも同じということです」


 べつに、不特定の誰かとってことを言ってるわけじゃないんだけどな。

 

「告白するという時点で、私はあなたに興味関心がありますと言っているようなものですからね。もちろん、告白するということと、告白を受けるということは違いますよ、言うまでもなく。本当に受けてもらいたいと考えるのなら、相手の気持ちまで想像するべきでしょう。もっとも、自分のことを好きになってほしい、見てほしい、そういう風に思うようになることが恋愛とも言えるわけですから、単純にすべてを否定するつもりはありませんが」


 つまり、白月が今まで告白を受けてこなかった理由の一つってことなのか?

 告白されるってことに関して言えば、俺より遥かに経験値の高いやつだからな。


「その相手から、べつの相手を勧められるというのは、私にはあなたを受け止めるつもりはありません、他の誰かを好きになってください、そう言われているのも同じことだということです」


 その理屈で言うと、白月の告白してきたあのセリフはなんだったんだと思わなくもないけど。

 いや、ある意味じゃあ、これ以上にないくらい、俺の気持ちっていうか、見るべき先を示してくれたとも言えるものだったのか?


「もっとも、知らなかったということは、いままでそういうことが頭にもなかったということで、それはそれで嬉しいことでもありますから、難しい話ですけど」


「それは、なんとなく、わかる」


 多分、俺も爽司に対して思っているような、いい加減じゃなく、一人に決めろよなっていうのと、同じ、あるいは、似たようなことだろう。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ