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親友が好きだと言っていた女子に告白された  作者: 白髪銀髪


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白月が興味をひかれるものとは

「ところで、外で待ち合わせたってことは、白月はどこか行きたいところでもあるのか?」


 普通のデートがどういうものなのかはわからないけど、白月が誘ってきたってことは、やりたいことなんかがあるのかもしれない。

 俺が自分で考えることを放棄しようとか、そういうことじゃなく、ただ、発案者の意見は尊重したいってことだ。


「そういうことではないのですが。家で待ち合わせてもやることもありませんし、それなら、外のほうがまだ選択肢があるのではと思っただけです。もし、真田くんが家が良いということでしたら、勉強をするのでもかまいません」


「じゃあ、適当に歩いてみるか」


 白月は趣味に勉強とか答えるようなやつだし、俺も、仮に聞かれでもしたら、武術とか、鍛練とかって答えるだろう。

 白月のほうはともかく、俺のほうは、どう考えても、デート向きじゃないってことくらいは理解している。

 とくに、共通してる趣味なんてものがあるわけでもなく、そもそも、高校生である俺たちには、そんなに金はかけられない。

 

「晴れて良かったですね。一応、天気予報は確認していましたが」


「そうだな。雨だと、外に出るのも億劫になるからな」


 風邪ひくリスクも高まるし、視界は悪いし、ウィンドブレーカーのジャージを上下着てても、完全に防げるわけでもないし。


「傘を差さない人ですか?」


「いや、学校行くときとかは差すだろ。教科書とか、ノートの類がびしょ濡れになるし」


 ビニールで包むとか、面倒だろ。


「ジャージを着た上に傘まで差すんですか?」


「いや、そのときは傘は差せないだろ。危ないし」


 なんか、会話がかみ合ってないな。


「……俺が傘差さないでウィンドブレーカーのジャージでって言ってるのは、走り込みの鍛練の話だぞ」


 基本的に、晴れだろうが、雨だろうが、雪だろうが、支障はあっても、決行することに変わりはないからな。風邪とか、大怪我とかでもしてない限りは。

 

「そうでしたか。え、雨の日もランニングをしているんですか?」


「むしろ、なんでしてないと思ったんだよ」


 学校の部活で外の運動部が雨の日に練習を中止することがあるのは、グラウンドの整備の関係の話だろ? それでも、やるところもあるわけだし。

 俺が走り込みに出ているのは公道で、基本的には舗装されている道だから、影響はない。

 このあたりには、氾濫しそうなほどの川も、土砂崩れが起こりそうな崖もない。もちろん、大雨洪水警報が出るほどとか、台風で外に出るのが危険と言われてるときとかは、自粛するけど。

 

「普通の土砂降りとか小雨程度なら、全然出るだろ」


「土砂降りは普通ではないと思いますが」


 とはいえ、幸いというか、このあたりは雨が多少降っても、浸水するとか、道路に水が溢れる、みたいなことは起こったこともないから、それで断念したことはないけど。

 あえて、行かなかった日をあげるとするなら、小学校とか、中学のときの移動教室当日で、集合が早かったときなんかだな。

 

「とはいえ、雨が降ったなら、デートは延期にしていましたよ。これから先、休日がずっと雨続きということもないでしょうから」


 まあ、それが普通だろうな。

 

「俺はするけど、白月は無理するなよ。はっきり言うけど、風邪ひいても責任とかはとれないからな?」


 高校生の同級生に言うことじゃないとは思うけど。

 ただ、白月は多分、俺のところに邪魔させてもらってる、みたいな考え方が強いだろうから、俺が待っているものと考えて、無理にでも来ようとする可能性がある。


「その場合は、先に連絡くれればいいから」


 それで、連絡の行き違いになった場合でも……まあ、気にすることなく、それぞれで走ればいいんだけど。走り込みなんて、一人でもできるものだし。

 白月はうちまで来て、それから、一緒に走り出している。どうせ、ペースはそれぞれなんだから、べつべつにやっといいだろうとは思うけど。一応、防犯とか、そんなことのためって意味もあったけど、どうしても必要とは思わない。

 だからって、白月と一緒に走りたくないとか、そういうことじゃないけど。

 

「え? 一人でデートに出かけるんですか? それはデートではないのでは?」


「なんの話だよ。あっ、いや、話がとんでたか。走り込みの話だ」


 一人で雨の中デートって、そもそも、白月の言うとおり、それはデートじゃない。わざわざ、雨の中で一人でしたいことがあるわけでもないからな。

 

「白月は、勉強以外で、やりたいこととか、なにかないのか?」


 学生の本分が勉強なのはそのとおりだろうし、それに積極的だっていうのは、学業成績での特待生としても、模範とするべきところなのかもしれない。

 

「そうですね。最近は、もうすこし、運動なんかもしたいとは思っていましたよ。ですから、真田くんとのデートがランニングになっても、それはそれで、楽しめると思います」


 白月は部活も所属していないし、課外活動に勤しんでいることもない。

 それなのに、良い身体つきはしていると思う。もちろん、女性としてってこと(だけ)じゃなく、武術とか、ようは、運動全般をするのに困らなさそうで、健康的に見えるって意味で。


「ですが、それだと、真田くんのほうはあまり楽しめないのではありませんか? デートでなくても、私とは一緒に走り込みをすることになっていますし、普段とは違うことをしたほうが楽しめるのではないですか?」


「違うこと……たとえば、テニスとか、水泳とかにしてみるって話か?」


 プールは、少し離れてるけど、市営プール(とそれに隣接する、市民体育館)があったし、その近くにテニスコートとか、サッカー場なんかもあったはずだ。

 まあ、二人じゃあ、サッカーはできないけどな。

 白月はため息をつき。


「真田くんの頭の中がそんなことでいっぱいなのはよくわかりました。とはいえ、私も男女交際の経験があるわけではありませんから、それも真田くんと一緒にという話なら、なにが楽しいのかということはわかりません。ですから、なんでも試していきましょう。もちろん、武術の稽古ということでも、かまいませんよ」


「いや、それはかまえよ」


 武術の稽古とか、見てて楽しいものじゃないだろ。いや、自分でする分には楽しんでるけど。

 

「そうでしょうか? もちろん、毎度ということにでもなると、さすがに呆れると思いますが。真田くんも世界大会の柔道なんかはテレビでだったり、見たりするんですよね? それと似たような感覚だと思います」


「それは、俺が格闘技に興味を持ってるからだろ? 白月は、そこまで、格闘技に興味があるわけじゃないよな?」


 護身術のほんの触り程度は教えたりもしたけど。 

 それでも、道場に通うようになるほど、好きになったわけでもない。


「格闘技にはそこまでの興味はありません。少しはありますけど。ですが、真田くんがずっと続けてきているくらいには、はまっていることだということですよね。その、真田くんが取り組んでいる姿には、興味があります。私はそんな風に、一つのものに熱心でいることはありませんから」


 勉強、はそういうカテゴリーじゃないだろうからな。

 

「今からでも、なにか始めてみようとは思わないのか? やってみたら案外のめり込むみたいなこともあるかもしれないだろ」


 それが武術だってことなら、俺は嬉しいけど。

 

「ええ、まあ……」


 白月にしては珍しく、言葉を濁した。

 もちろん、趣味とか、習慣なんて、強制するものじゃない。勧誘はするけどな。前に誘ったときにも断られてるし。

 

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