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親友が好きだと言っていた女子に告白された  作者: 白髪銀髪


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これからよろしくお願いしたいこと

 ◇ ◇ ◇



 白月茉莉と付き合うってことを真剣に考える。

 そう宣言したものの、そもそも、俺には付き合うっていうことがどういうことなのかよくわかっていなかった。

 なんとなく、イメージとしてはわかる。

 告白したりされたりで、一緒に食事をするとか、休日なんかにはどこかへ遊びに――デートに行くとか。

 けど、それと似たようなことは、いままででもやってきているわけで。そこに、付き合うっていう条件が必要なのかってことは、正直、わかってない。

 独占欲だとか、責任のことだとかって話になってくるのか?

 一応、満十六だか、十八だかになれば結婚自体はできるわけだけど、高校生にそこまでの責任能力はないだろう。

 家に帰ってからそのあたりのことを一晩考えたものの、俺には引き出しもなく、覚悟もなく、そもそも、一人で考えていても埒が明かないだろうと思いいたり。


「白月。聞きたいことがあるんだが、すこしいいか?」


 翌日の学校で、昼休みに弁当を食べ終えてから、白月に声をかけた。

 俺と白月の席は前後しているから、わざわざ、立って、席まで向かう、みたいな目立つ真似をしなくても済む。

 聞かれて困るってわけでも……いや、爽司に聞かれると気まずさはある。そりゃあ、いずれ明かさなくちゃならないんだろうけど。


「先程の授業でなにかわからないところでもありましたか?」


「今は、それとはまた別の、昨日の話で」


 当然、白月自身にはそれだけで伝わらないはずもない。

 

「そうですか。では、これからよろしくお願いします」


「まだ、なにも言ってねえよ」


 気が早すぎるというか、いや、待たせてる俺が悪いのは、そのとおりなんだけど。


「ほかに、今、真田くんに私が求めている問いはないのですが」


「それに関係してのことだよ」


 そもそも、俺のほうから聞きたいことがあって話しかけたんだけどな。

 今は昼休みということもあり、学食に行っているやつとか、昼寝してるやつとか、それぞれ談笑していたり、特別こっちに注目していることもない。

 入学直後であれば、白月の一挙手一投足に注目しているようなところもあったわけだけど、さすがに今は授業のわからなかったところを聞きに来るやつが――俺とか――ちらほらいるだけで、普通のクラスメイトくらいのところには落ち着いている。学校全体で見たなら、まだ、判断できないけど、それでも、入学直後なんかと比べれば、数は少ないと思う。 

 それでも、なんとなく、声は潜められる。

 

「あれは、まあ、普通に想像するような恋人として付き合いたいとか、そういう話なのか?」


 もちろん、白月の告白に誤解をするような余地があったとかってわけじゃなく、一応の確認だ。

 

「そうですね。それにきっと、私以上に真田くんを幸せにできる人もいないと思いますから」


 白月も、俺に合わせたように、声は小さい。

 まあ、わざわざ、クラスメイトとはいえ、部外者に知らせる必要もないからな。白月は、ナンパ除けのために付き合いたいわけじゃないと言っていたことだし。

 

「結婚だのって話はおいておくとして、その白月の求めることは、恋人っていう関係性が必要なことなのか? 白月はあまり、結婚ってことに関して、良いイメージを持っていないと思ってたんだけどな」


 自身の実父はすでにおらず、継父はあんなやつだっただろ?

 それでも、なお、付き合うとか、恋人だとかって関係を求めるとは、思い難いんだが。

 

「結婚とか、恋人などといったこと自体に、悪いイメージを持っているわけではありません。ものはそこにあるだけで、それを使っているのは、私たち、人間ですから。真田くんは、私が、恋人だとか、結婚だとかということを粗雑に考えていると思いますか?」


「……いや、そうは言わないけどな」


 むしろ、より真剣に考えているんだろう。だからこそ、俺に告白してきたことが、なかなか呑み込めないってことで。

 

「そして、私と父や母、もちろん、継父とも、違う人間です。違う人間だからということがなんの保障になるのかということは、説明できるものでもありませんが、私のことは、真田くんもそれなりにわかってくれていると思っているので」

 

 それは、信頼なんだろうか。

 俺をなのか、それとも、俺を想う白月茉莉自身へのものなのか。

 

「どうだかな。白月のことをそこまでわかっていると言えるほど、俺は――」


「それなら、これから知っていってくれればいいですよ。そもそも、なんでもかんでも知ってから付き合うなどという人も、いないとは言いませんが、それでも、極少数派だと思いますから」


 そりゃあそうだろうな。付き合ってから、あるいは、付き合ったからこそ、見えてくるってこともあるだろう。

 結婚していたって、多分だけど、なんでもかんでも知っている、なんて関係じゃないわけだろうし。

 

「そういうのも、楽しいとは思いませんか? 私は、真田くんのことを知れると思うと、楽しいです」


「……そうかもしれないな」


 そういうのが、恋人として付き合っていくうえでの、楽しさってことなのか? あくまで、白月的にはって話だろうけど。

 もちろん、それだけじゃないにしろ、だ。

 

「では、よろしくお願いします。あっ、一つ、これだけはお願いというか、頼みたいことがあるのですけれど」


「頼みたいこと?」


 それが、付き合ってくれとか、あー、いや、正確に言うなら、幸せにしてくれとか、そういうことじゃなかったか?

 ていうか、今のよろしくお願いしますっていうのは、もしかして、付き合ったんだから、これからは恋人としてよろしくお願いしますとかって意味でのことか?

 いや、困るとか、そういうことじゃないんだが、展開が急っていうか、それとも、告白に対する返事なんてものは、どれもこんなもんなのか?

 

「現状、真田くんは、私に対して、そこまで恋愛感情を持っているわけではありませんよね。驚く――いえ、残念なことに」


 今、驚くべきことにって言おうとして、言い直したのか?

 白月茉莉というやつと接しているうえで、驚かされているのは、むしろ、俺のほうだと思うんだけどな。

 一応、そういうやつだと認識しつつはあるんだけど、そんなにすぐにはっていうか。


「できれば、今のままでいいと思い続けてはいないでくださいね」


「それは、まあ、努力するというか、多分、付き合うってことは、自然にそうなっていくんじゃないかと思ってる」


 本当に、俺が自然にそうなるのかと、疑問に思っていることも事実だけど。

 それでも、俺を好きだとか、想ってくれている相手の気持ちに誠実に答えられるようにはなりたいと思ってる。それは、本心だから。

 まあ、だから、自然とじゃなく、努力してくれって話なんだけど。

 

「では、とりあえず、ステップの一つとして、デートをしませんか?」


「デートね。言っとくけど、俺にどうこうしろっていうのは期待しないでくれよ。いや、努力するって言った手前、そのとおりにはするつもりだけど、今のところ、俺にその手の知識も能力もないからな?」


 それから、放課後は基本的に道場での修行があるから、あんまり付き合えることもないと思う。

 

「たしか、休日は午前中に道場での稽古をなさるということでしたよね。そして、土曜日は、平日よりは若干、終わりが早いと」


 土曜日は学校のほうも午前授業だからな。

 

「では、金曜日の夜か、もしくは、土曜日の夜にでも連絡しますね。それで、決めましょう。もちろん、早朝のランニングには、これからもご一緒……は無理だと思いますが、顔を出させていただきますから」


 

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