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親友が好きだと言っていた女子に告白された  作者: 白髪銀髪


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教師側へ説明

 主犯は去ったけど、透花が連れてきてくれた教師への説明はする必要があった。

 それは説明していたし、理解していてなお、逃げ出したんだから、あいつらに情けをかける必要はない。そもそも、もともとそんなつもりはなかったしな。

 あいにくと、うちのクラスの担任は帰っていたけど、当直の教師だけが残っていた状況だったようだから、ぜひもない。

 

「それでは、なにがあったのか、説明してもらえるんですよね?」


 呼んできてくれただけでも、もっと言えば、付き合ってくれているだけでも、透花には感謝しかない。結局、俺たちも参加することになったから、必要がなくなったと言えばそのとおりではあるけど、頼み事をしたのは事実だしな。

 

「それは――」


「真田くん。それは私のほうから説明させていただけないでしょうか?」


 当事者である白月から語らせる? 

 それは、筋だけでいえば、そうするのが正しいんだろうけど。

 俺は爽司に視線を向けたが、爽司は肩を竦めて、好きにさせれば、とでも返してきたから、俺も黙っていることにした。

 いざとなれば、証言とか、証拠の提出とかはできるけど。

 

「この教室、もっといえば、私の机や椅子に見過ごすことのできないほどの悪ふざけが施されていたため、その犯人を白日の下に晒そうと、今回のことを計画しました」

 

「悪ふざけ……? いったい、なんの話をしているんですか?」


 クラスの担任でない相手にどれだけの効果でもって伝えられるかはわからない。 

 しかし、今、話しておくということは、間違いではないはず。


「これが、今朝のこの教室での白月の席の状況です」


 俺はスマホの画像データを見せつける。撮影した時間も記録されているから、証拠能力としては十分だろう。

 学校内では、授業の妨げにならないのであれば、スマホ類の使用は許可されている。

 朝、俺が教室の風景を写真に収めていたところで、校則違反に引っかかることはない。


「こんなことがあったとは、職員室でも話題になっていないけど……」


 当然、これが見つかっていれば、職員室やら、ホームルームやらで、問題として取り上げられていたことだろう。

 

「はい。それは、当然でしょう。俺が登校した時点で片付けましたから。うちのクラスでも知っているのは、俺より先に来ていたやつらと、俺より後でも、清掃している最中に来たやつらだけです」


 もちろん、様子を外で見ていたやつらが、写真でも撮って、ネットに上げていたとか、そんな話になるなら、俺の知ったことじゃないが。

 

「なぜ、職員室へ報告しなかった?」


「時間がなかったからですね。職員室へ報告するより、白月本人に、直にその光景を見せないほうが先決だと判断したまでです」


 あとは、正直な話をするなら、教師陣を信頼していないからだ。

 もちろん、教師の仕事が忙しく、朝、あるいは、放課後でも、他にやるべき仕事がたくさんあるんだろうということはわかっている。

 ただ、それでも、誰も教室の見回りをしていなかったのかとか、朝来て最初に確認しなかったのかとか、そもそも、干渉するつもりがあったのかとか、いろいろと、聞きたいこと、言いたいことはある。いや、確認したいことと言ってしまってもいいかもしれない。

 

「ただ、これもこちらの勝手な判断にはなりますが、仮に、報告したとして、すでに片付いている状況で、積極的に解決に向けて動いてくれるつもりはありましたか? 今回は白月が相手でしたが、それが白月が相手でなくても?」


 白月茉莉は、特待生である。

 しかも、学費など、全額免除の成績最優秀者の一人だ。

 その、白月の言うことだったら、あるいは白月本人が対象になっていたんだから、職員側としても配慮したかもしれない。だが、そんなことは差別だろうと、そんなことをするような職員室には頼ることはできない。そんな風に思い込ませてしまった時点で、教師側として配慮が足りなかった証拠じゃないのか。

 なにせ、それを発見した生徒は白月じゃないんだから。むしろ、白月は見ていないとまで言えるわけで。

 

「たしかに、白月への配慮で、事を大きくしたくなかったということはあります。ですが、生徒の小さくはない問題を、教師側で把握すらしていなかったということも問題ではありませんか?」


 生徒が健全に学校生活を、そして、授業を受けることを阻害されていたんだから。

 そういうことにも対応できないのなら、教師の役割っていうのはなんだ? って話になる。ただ、自分の担当教科だけを淡々と進めるだけでいいのなら、べつに、教師という役割は必要ないだろう。たとえばスマホのアプリにだって、いくらでも、効率的な学習をサポートするものがある。

 もちろん、機械類に強くないやつもいるだろう。

 そういうサポートもあるんだろうけど、なにより、人間性、あるいは、人間味というか、そういった観点からのサポートは、人にしかできないと思うから。

 俺だってそうだけど、なかなか、生徒から教師に――あるいは、他人に――助けを求めるっていうのは難しいことだからな。そもそも、自分の深い部分について、他人に頼ろうっていうこと自体が。

 

「先生方にも事情はあることと思います。教師の仕事の大変さなど、今の俺たちには、想像もできないことでしょう。ですが、大人として、生徒を守ってくださるよう、お願いします」


 それは、なにも、被害者側だけの話じゃない。

 もちろん、加害者が自分の意思でやっていることなら、それは悪いことだと、たとえ、高校生であっても、しっかり注意して、叱ってほしい。

 子供だから間違えることもあるだろうと、それは間違いないことだけど、その間違いで傷つけられるやつもいるってことを忘れないでいてほしいし、気にしていてほしい。

 

「ああ、わかった。しっかり見て、ちゃんと考えるようにしよう。約束する」

 

 きっと、これをしでかしたやつらにも、誠実な対応をしてくれるだろう。

 それは、安易に、停学だ、退学だなんて処分を下すってことじゃなく。

 

「……真田くんがあそこまで教師にはっきり言うなんて」


 職員室を後にして。


「べつに、変なことは言ってないだろ。当然の要求をしたまでだ」


 生徒に対しては、言わなくてもできるようにとか、偉そうにものを言うくせに、自分たちは仕事の範囲程度にしかやらないんだよな。部活動の顧問の話は、また、べつにのことだから、ここではおいておくけど。そもそも、俺は部活に所属したことがあるわけじゃないから、詳しくは知らないし。

 ただ、ものすごく薄給だとか、ほとんど無償、みたいな話は、噂程度には聞いたことがあるって程度だ。


「いえ、内容の話ではなくて、そもそも、教師に直談判するなんてことをするとは思っていなかったという意味です」


「俺が個人的にやるより、楽に済むだろ」


 犯人捜しじみた真似なんて、進んでやりたいわけじゃないからな。

 行為っていうより、そもそも、余計な手間をかけたくないって意味で。

 そんなことをしているような暇があるなら、べつのことに、有意義に時間を費やしたい。

 教師はいいんだよ。生徒の問題を解決するのも、自主性だのなんだのと言っても、結局、仕事の内なんだから。


「真田くん」


 白月が立ち止まって呼びかけてきたので、少し先に出る形になっていた俺も立ち止まって、振り返る。


「このたびは、ありがとうございました。嬉しかったのは本当ですから」


「感謝は、どうせ、いらないって言ってもされるんだろうから、ありがたく受け取っておくけど、言ったと思うけど、知り合いが手の届くところで困ってたんだから、助けるのはあたりまえだ。だから、気にするな」


 白月だって、勉強を教えてくれているけど、感謝はいらないとかって、いつも言ってるだろ。それと、同じようなもんだ。


 

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