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親友が好きだと言っていた女子に告白された  作者: 白髪銀髪


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本気で反省したかどうかは知らないが

 ◇ ◇ ◇



 中学まではあったけど、高校の教室にベランダなんてものは存在しなかった。

 まあ、春も大分進み、夏本番も近づいてきているとはいえ、早朝っていうのが一番寒い時間だってことは間違いないわけで、屋内で待つことになったのは幸いかもしれないけど。

 もっとも、この時期なら、そのくらいの気温を涼しいとかっていうのかもしれないけどな。

 

「ねえ、どういうこと?」


「私に聞かれても知らないし。うちらが登校する前に誰かが片付けたんじゃないの?」


「マジむかつくんだけど。空気読んでほしいよね」


 そんな風に話しながらというか、愚痴を言い合いながら入ってきたやつらに、まだ、声をかけたりなんてことはしない。

 話している内容から、ほぼ間違いなく、黒だと考えられても、現行犯って意味は大きい。

 それに、今回は、被害にあったとしても、犯人に償いの意味も含めて、片付けさせればいいことだしな。

 今回、こうして待ち伏せるにあたって、白月にはそれでも、一つ謝るべきことがあった。

 

「あんたが悪いんだからね、白月茉莉」


 そう口にしたやつが掲げた袋から、白月の席に向かってゴミが投棄される。

 そこで、教室内の電気が点灯され。


「は?」


 混乱しているそいつらの前に、俺たちは姿を見せる。

 まあ、姿を見せるって言っても、もともと、同じ教室内とか、せいぜい、隣の教室との間の柱の影とか二いたんだけどな。

 基本的に、外は暗いし、室内でも電気もつけず、誰かがいるだろうと意識して目を凝らさなければ、影に隠れるようにしていた俺たちに気がつくことはできなかっただろう。

 

「まあ、真っ黒なのは外の景色じゃなくて、おまえらの心の中のことだろうけどな」


 そこにいたのは、クラスメイトじゃなく、おそらくは、一年ですらない、女子生徒三人。

 名前とかは知らないけど、興味もないし、どうでもいい。それは、俺たちが気にするべきことじゃない。

 上履きの色とかが違うから、一年じゃないってことは、中等部なんてものはないこの学校の生徒である目の前の女子たちは先輩だってことになるんだろうが、そんなことはまったく気にすることもなく。


「明らかに現行犯だが、なにか、言っておくべきことはあるか?」


「はあ? あんた、誰?」


 制服を着ていて、この場に姿を見せているって時点で、ある程度察してほしいものだけど、こいつらが救いようのない馬鹿だってことは、目の前の光景を見ていればわかるから、そこに突っ込んだりはしない。

 

「一年一組、真田朔仁だ。ちなみに、部活だとか、委員会だとかには所属してねえ。まあ、時間も時間だし、回りくどいことはしないでおくか」


 というか、この期に及んで、余計なことは必要ないだろう。

 

「はあ? なに?」


「うざ。出しゃばってくんなし」


「待ち伏せとか、きもっ」


 反射的に言い返したんだろうけど、なにを言われようと、現場を見て、話を聞いている以上、こっちには響かない。

 そもそも、具合的じゃないし、反論ですらない。


「言いたいことはそれだけか? 言うべきことは他にもあるだろ?」


 まあ、それは俺に言っても仕方ないことだ。


「白月」

 

 目の前のやつらは黙ったままだったから、俺が自分の隠れていた――ってほどでもないけど――ところへ声をかけると、同じように身を潜めていた白月が立ち上がり、姿を見せる。


「もう一度聞いてやる。本当に、おまえらが言うべきことはなにもないんだな? 最近のスマホは高性能で、多少暗がりだろうと、夜だろうと、はっきり映像は撮れるもんなんだよ」


 俺は手に持っていたスマホを振る。

 もちろん、今、こいつらがしでかそうとしていたこととか、会話なんかを記録しているわけじゃない。ただ、スマホを振ってみせているだけのことだ。嘘をついていることもない。なにしろ、暗がりでというか、スマホの動画機能なんて、碌に使ったこともないからな。

 そして、スマホを構えてみせて。


「こっちの準備は整ったから、言い訳でも、言い逃れでも、なんでもしてみろよ」


 本当は、こんなものに頼らず、こいつらが自ら反省して、心から白月に謝罪するってほうが良いんだけど。

 とはいえ、今、謝られても、それが心からのものじゃないってことは、確実だろう。 

 もちろん、誠意が足りねえなあ、なんて、こっちから脅すみたいなやり方をするつもりはないわけだけど。

 

「ねえ、ちょっと」


「動画って、やばくない?」


「どうせはったりよ。こんな暗い中で、まともに撮れるはずない」


 どうやら、反省するつもりはないらしいな。

 ある意味、関心するが、もちろん、こっちはそれで済ませるつもりはない。


「そもそも、動画だとかなんだとかなんて、関係あると思ってんのか? こっちはここで、今まさに、おまえらのやったことを見てんだぞ? 俺たちの証言と、おまえらの証言、どっちが信じられると思う?」


 白月に続いて、爽司と透花も教室内に入ってくる。

 

「透花。残ってる先生を呼んできてくれないか?」


「は、はい」


 透花が去っていくのを見届けてから。


「実際に、この場を見て判断してもらおうじゃねえか。もっとも、来る前に逃げ出したければ、そうしてもかまわねえけど、報告を受けてなお、この場にいないやつらのことはどう思われるのか。まあ、そんなことは俺の知ったことじゃないから、どうでもいいけどな」


 こいつらが説教を受けようと、停学だか、奉仕活動だか、反省文だかの処分を受けようと、俺たちには関係ないことだ。

 そもそも、そんなこと、こっちは求めてないしな。

 俺たちの求めていることはただ一つ。誠意の籠ってない謝罪に意味がないっていうなら、しっかり、誠意を込めて謝罪しろってことだ。

 

「それとも、他人の机にこれだけのことをしておいて、それを少しも悪いとは思ってないとかってことなのか?」


 そうなると――言葉が通じないとなると、こっちの取れる手段も限られてくる。

 ただ、それは、大人の証人が到着してからにしたいところだ。


「真田くん。私はべつに謝罪を求めているわけではありませんから」


「白月」


 俺だって、こいつらが心から謝罪するとは思ってないけど。

 ただ、形だけでも、とりあえず、すっきりさせておいたほうが良いんじゃないかと思っただけだ。


「いちいち気にしていたらきりがありませんから。毎日、片付けるのも面倒ですし。こうして、現場を一度押さえておけば、明日以降、子供じみた嫌がらせがなくなるのではないかと思っただけです」


 まあ、毎日片づけるのも、面倒といえば、面倒だしな。  

 犯人がわかった以上、そいつらに片付けさせればいいだけだろうとも思えるけど、それを含めたって、時間がかかるだけで、良いことはなにもない。


「それでいいのか?」


「はい」


 白月は、強がっているとか、そんな風には見えなかった。

 本人がそれでかまわないってことなら、それでいいんだけど。


「ただ、明日以降は、たとえ、机が汚されているとか、他のなにか問題が起こっていたとしても、可能な限りそのまま放置していてください。私は気にしませんし、そのほうが、いろいろと楽ですから」


「そうか」


 ただ、これだけは言わせておいてもらう。


「いいか? 今後一切、白月茉莉にくだらねえ嫌がらせなんかをするんじゃねえぞ。もし、そうじゃねえっていうなら、容赦はしねえ。うちの道場で性根から叩き直してやるから覚悟しとけ」


 白月に限った話じゃないけど。 

 そもそも、高校生にもなってやるようなことじゃないわけだしな。

 

「行け」


 扉を示してやれば、そいつらは、白月に謝罪するような素振りなど一切見せることなく、駆け出していった。


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