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親友が好きだと言っていた女子に告白された  作者: 白髪銀髪


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透花に頼み事

「できればでいいんだけど、今日の放課後にも、一応、教室の様子を確認してみてくれないか? あくまで、帰りがけにすこしだけ様子を見るって程度でかまわないから」


 部活で疲れているだろう透花に、さらに、余計な仕事を頼むっていうのは、心苦しいところはある。

 体育館は、言ってしまえば、一階の施設で、俺たちの教室は四階。部活が終わった後にそれだけの大変な運動をこなさせることに悪いと思う気持ちはある。

 

「それはかまいませんけれど、なにを確認すればよいのでしょうか?」


「いや、なにかを確認するとかってことはしないでいいから、ただ、教室の様子を見てほしい」


 もしかしたら、今日、白月がなにも反応を示さなかったことを面白く思わず、連日、嫌がらせじみたことをしてくるかもしれない。

 発見時刻が早ければ、それだけ、対応というか、犯人の絞り込みもしやすくなる。

 もちろん、男子の運動部で遅くまで残ってるクラスメイトに頼んでもかまわないんだけど。


「わかりました」


「すまん。今度、埋め合わせは必ずする」


 それとも、俺が稽古を終えてから、学校まで戻ってきたほうが良いのか? もちろん、そうするつもりがないわけじゃない。

 ただ、時間がなあ。

 真田家から学校までの通学にかかる時間は、確かに短いんだけど、敷地内の体育館で活動しているバスケ部程じゃあないからな。

 言うまでもなく、今日は現れないという可能性もあって、その場合は完全に無駄足を踏ませてしまうことになるんだから、本当に悪いとは思っている。


「埋め合わせなんて、考えなくていいですよ。私だって、朔仁くんにご面倒をおかけすることはよくありますから」


「そんなこともないだろ」


 いや、透花に頼られたことが今までに一度もないとか、そういうことじゃなく。

 それでも、幼馴染という間柄だからこそ、対等な関係でいたい。まあ、対等なんて、当人が勝手に思うことなんだけど。

 

「俺もその時間くらいで顔を出したいと思ってるから」


「なにか用事があるということですか?」

 

 透花が不思議そうな顔をする。

 部活もやっていない俺の用事なんて、大抵は時間帯に関係なく済ませられるものであって、そんな、下校時間ギリギリにならないとこなせない、なんてこともないだろう。

 それに、一旦帰った帰宅部が、再びやってくる、なんてことも。

 

「用事ってほどでもないけど」


 ただ、今朝のことを話すことなく、説明するのは難しい。

 

「あー、一応、爽司にも声かけて、できそうなら、連れてくるつもりだから」


 爽司なら、ふたつ返事で引き受けてくれるだろう。なにも、学校に泊まりこもうってわけじゃない。ただ、数時間か数分になるか、そんな程度の話だ。

 もちろん、透花に頼み事をしているってことに配慮しているわけじゃなく。

 ただ、仲間は多いほうが良いし、透花と同じく、爽司のことは信じているから。

 たとえば、自分の惚れた相手だからって、嫌がらせじみた厚意で気を引こうなんて考えるような馬鹿野郎じゃないってことは。

 透花は多くは聞かずに。


「わかりました。教室の様子を確認すればいいんですね?」


「助かる、ありがとう」


 なにもなければそれでいい。

 いや、むしろ、なにかあった場合が問題だって言えばいいのか。性格上、誰かに救援を頼むなんてことも難しそうだし。

 それこそ、現場に直接遭遇してしまった場合とか、多分、理性を働かせて、暴力その他による脅しをかけてくるなんてことにはならないと思うけど、透花に心労を抱えさせたくはない。

 そもそも、あんなことをしでかすようなやつに、まともな理性なんて残っているとは思えない。

 それでも、もしかしたら、という、間違っても、期待などとは言えないけど、俺にだって、良心はある。

 もっとも、身内であるって意識はあるけど、現状、状況だけでいうなら、透花も容疑者であることには変わりはないわけだけどな。

 もちろん、透花がそんなことをするはずはないと、幼馴染の直感では信じているけど、そんなもの、実際の捜査の足しにはならないわけで。人柄というプロファイリングだったか? そういうのが、全く役に立たないってことでもないけど。

 それでも、俺が調べるんなら、自然とそういうバイアスはかかることになる。それで文句の出るやつは、自分でも真面目に考えればいいんだろうけど、真面目にあの事態を解決しようとしたのが――自意識過剰ってことじゃなく――俺だけだったって時点で、かなり望みが薄いことには変わりない。

 

「いいえ。感謝なんてしないでください、朔仁くん。私だって気になりますから」


 それは本人だし、そうなんだろうけど……いや、素直に受け取っておこう。それで済むなら。

 ここで、感謝で返すと繰り返しになるから、俺の謝意は伝わっていると信じて。


「それで、爽司。おまえはどうするつもりだ?」


 それでも、一応、確認はする。

 

「朔仁。俺が首を横に振るとでも思ってるのか? 当然、俺も参加するからな」


 まあ、そう言うだろうと思ってた。

 

「ああ」


「ええ、それだけかよ」


 爽司はなにやら、大袈裟にアピールしてくるけど。


「じゃあ、べつに、参加しなくてもいいぞ、俺だけで片付けるから」


「いやいや、俺も参加するって」


 爽司は食い気味に主張してくる。

 だったら、余計なことをさせてくれるなよ。最初から、そう言えばいいだろうが。

 鬱陶しい爽司のことは放っておいて。


「白月――」


「もちろん、私も参加しますから」


 こっちも予想どおりだけど、爽司のときとは逆で、白月にはできれば、結果報告待ちでいてもらいたかった。

 なにせ、直接被害を受けているわけで、その場にいれば、直接危害を加えられかねない。当然、そうならないよう、俺たちだって意識はするけど、それなら、最初からその場にいなければそれで済む。

 この件に関しては、後から結果の報告を受けるだけでも、なにも問題はないはずだ。

 むしろ、犯人の意思としては、白月の意識を引きたい(それが負の感情からくるものにしろ)ってことだろうから、犯人の意思を挫くって意味なら、白月はその場に参加しないほうが良いってことまであると考えているんだけど。

 まあ、白月の立場になって考えたなら、自分に関係していることなんだから、自分で立ち会いたい、直接目で見て確認したいとか、そう考えるのはごく自然なことだから、俺が止めることはできない。


「真田くんがどうしてもとおっしゃるのでしたら、家で大人しく待っていますけれど」


「……好きにしろよ」


 そう答える俺は、大分、甘いのかもしれない。けど、まあ、俺だって、所詮は高校生だ。

 

「ただし、危険だってところに、自分から突っ込んでいくとか、そういう馬鹿な真似はするんじゃねえぞ。どこまで、なにしてくるかわからない相手なんだから」


 もしかしたら、刃物まで持ち出してくる可能性だってある。カッターとか、鋏とか。

 それで、手出しをされようものなら、俺たちはなにをしようとしてたんだってことになるからな。 

 一応、得物持った相手との想定訓練もしてるけど、だからって、素人が近くにいないほうが安心なことには変わりない。もちろん、この場合の素人って言うのは、相手のことじゃなく、俺たちの側で、守るべき場所にいるやつって意味で、だけど。


「はい。すみません、無理を聞いていただいて」


 一応、そういう意識はあるのか、あるいは、そう言っておけばいいと思っているのか。

 まあ、どっちにせよ、許可した時点で、俺のやるべきことは変わらないから、なんでもいい。

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