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親友が好きだと言っていた女子に告白された  作者: 白髪銀髪


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気にしないでいることはできないだろう

 そこまでは正確に覚えているやつはいなかったけど、俺のほんの少し前ということは間違いない。

 もちろん、それより早く来ていたにもかかわらず、事を起こした後、どこかへ隠れていて、時間をおいてからあらためて教室へ戻ってきた、なんてことも考えられるけど。

 いや、それはないな、と俺は首を振って考えを振り払った。 

 推理小説なんかでは、犯人は現場に戻って来る、留まっていることが多いものだけど、実際には、現場に戻ってくるのはリスクしかない。

 大抵は、相手のリアクションを見たいがために戻ってくるんだろうけど、普段、全然関係ないやつなら、戻ってこなければ、疑いをかけられることもないからな。

 ただ、やるだけやって満足して、なんてことはあるのかってことだな。

 なんのためにしでかしたのかって考えると、白月に対する嫌がらせの類であることは間違いないだろうけど、それなら、それが白月本人に対してどの程度の効果があったのかを確認したいと思うのは当然で。

 そういう意味では、あぶり出しは効果的だと思う。

 つまり、白月に、普段どおりに振舞ってもらうのを、わざわざ、いつもの動線だけじゃなく、校舎全体にその姿を見せることで、どこかで確実に白月の情報を収集しているだろう犯人を刺激するってことだな。

 そうしたなら、犯人は似たようなことを繰り返す、もしくは、より直接的な手段に出ることも叶えられるわけで。

 まあ、今回のことでも十分に注意を受ける――もちろん、明るみに出ればだけど――だろうけど、再犯ともなれば、さらに思い、はっきり言えば、停学なんてことまでも考えられる。まあ、退学になるかどうかとか、そんな詳しい規定はわからないわけだけど。

 白月は成績優秀者であり、特待生でもある。

 学校側からすれば、俗なことを言えば、特待生には進学実績を作ってもらうために、できる限り、勉学に集中してもらいたい、その環境を提供したいと考えているだろうから、それを阻害、あるいは、邪魔するような行為を繰り返すようなやつは、邪魔にしかならない、と判断されるかもしれない。

 もっとも、こんなことをしでかすんだから、そんなことまで織り込み済みかもしれないけど。

 とはいえ、そんな覚悟があるんなら、もっと直接的で、効果的な方法はあると思うんだよなあ。 

 つまり、やっぱり、相手は複数犯ってことなんだろう。

 そして、これは偏見かもしれないけど、やったやつは多分、女子生徒だろう。

 俺が男子だからだけど、男子なら、こんな回りくどい手段はとらない。言いたいことがあるなら、直接、面と向かって口にすることだろう。

 もっとよく、登校してきたやつらのことを観察しておくべきだったんだろうが、片付けが優先だったし、白月が登校してきた瞬間は、俺も白月に意識を向けていたから、他の観察ができていなかった。

 もっとも、犯人が観察したかっただろう場面は、俺が先に来て机と周囲を片付けたから、訪れなかったわけだけど。

 人伝に聞いても、ショックを受けることはあるだろうけど、やっぱり、実際に現場を見ているのと見ていないのとじゃあ、その伝わり方に差がありすぎるからな。

 

「白月自身は、誰かに恨みを買ってるとかって、意識はあるのか?」


「もはや、隠す気もありませんね」


 白月に直接聞いてみれば、苦笑を返された。まあ、本当にわずかなものだったが。

 朝から、休み時間も何度か挟まれてるし、白月が誰かに聞きに行く時間は十分にあった。ずっと席に着いていたわけでもないし、俺も常について歩いていたわけでもない。

 俺の知らないところで、誰かに、なにかがあったんだろうということを聞いていてもおかしくはない。

 まあ、知っているやつがそもそも限られているから、誰が話したのかはすぐにわかるだろうけど、そんなことを探していても意味はない。 

 

「べつに、知らなければ知らないままでいいと思ってたけど」


 そのために、急いで片付けたわけだしな。

 

「けど、白月が知りたいと思ったなら、それで、自分で聞き取りまでするくらいなら、それを止めることはできないからな」


 もっとも、俺に聞いてきても教えなかっただろうけど。

 他のやつらも同じ考えとは限らない。むしろ、白月が知りたいと考えるなら、その権利はあると思うのは普通のことだろうからな。

 

「ただ……いや、やっぱり、なんでもない」


「お気遣いくださるのはありがたく感じますが、たかだか、嫌がらせ程度のこと、私は特別気にしたりしませんよ。本当に」


 あれは、嫌がらせの範囲に収まることなのか?

 そりゃあ、確かに、ストーカーに直接手出しで襲われるってことと比べたなら、大したことじゃないと考えるのも、おかしくないのかもしれないけど。

 ただ、俺にはそう言って取り繕っているだけで、内心でどうなのかってことまでは、うかがい知れないけど。そりゃあ、推測はできるけど、それは、一般論的な話で、白月茉莉本人の心の内ってことじゃないからな。それを勝手に断定するのは失礼だろう。

 直接聞かされたならまだしも、白月がそれを話すことは、まあ、多分、ないだろうし。

 それに、本当に気にしていないという可能性もある。たとえば、俺だったら、面倒なやつもいるなあとか、ご苦労なことだなとか、そんな風に感じることがあっても、それを引きずるかといえば、そんなことはないだろうしな。

 もちろん、俺と白月は違う人間なわけだけど、あくまでも、そういう風に考えるやつもいるってだけのことだ。

 それなら、余計に刺激して、根深いものにさせてしまうのは違うんじゃないかとも思うわけで。 


「ですから、真田くんも気にしないでいてください」


「それは、無理だな」


 ただし、その白月の提案は頷くことはできないけど。

 目をわずかに見開く白月に。


「白月がどう感じているのかってことは白月の勝手だろうが、俺がどう考えているのかってことも、俺の勝手だろう。まあ、友人って言えるかどうかはわからないけど、クラスメイトが害意を持って攻撃されたんだぞ。いや、クラスメイトがっていうより、白月がってことだけど。白月には世話になってるし、なにより、あんな場面を見てるからな、それで気にしないってほうが無理だ」


 少なくとも俺にとっては、この件をここで切り上げて後を任せるってほうが、落ち着かない。

 どうせ、この段階になってもなにも動きがないってことは、職員室のほうだって、碌に動こうとはしないってことだろ?

 そもそも、職員室じゃあ、なにがあったのかってこと自体、把握してない可能性もある。実際、朝のホームルームなんかでも、白月個人はもとより、このクラスに対してってことでも、いつもどおりの連絡事項しかなかったわけだからな。

 もし、あの事態を理解しているのなら、なにかしらの注意だとか、疑念だとかを、投げかけられていたことだろう。さすがに、学年集会とか、全校集会とかってことにまではならないんじゃないかとは思ってったけど。中学なら、そうなっていてもおかしくはないだろうけど、高校は人数も倍以上にはなっているわけで。

 知らなかったのなら、つまりその程度の興味関心しか生徒に対して持っていないってことだし、知っていて放置すると決めた相手に頼ることはなにもないわけで。

 いずれにしても、あの態度だった時点で職員側に期待はできない。

 もっとも、職員側が犯人だった場合には、その態度をとる理由にもなるんだろうけど……一応、注意しては見ていたけど、教師の注意が白月にだけ多く向けられているとか、そんなこともなかったしな。


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