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親友が好きだと言っていた女子に告白された  作者: 白髪銀髪


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毎度同じような手で

 ◇ ◇ ◇



 明くる学校で、白月は問題なく登校してきた。

 風邪くらい引いていてもおかしくないと思っていたけど、どうやら、無事だったらしい。

 

「おはようございます、真田くん」


「おはよう、白月。正直、今日は休むんじゃないかと思ってた」


 今日っていうか、数日くらいは。

 もちろん、風邪ってことだけじゃなく、継父がいなくなった件もそうだけど、引っ越すとかなんとかって話も出ていたくらいだったし。 

 さすがに、転校まではしないだろうと思ってたけどな。


「もうすぐ中間テストなのに、休むなんてこと、できるはずないじゃないですか」


「真面目だな」


 だから、成績も良いんだろうけど。

 

「真面目というか、特待生の制度を利用させていただいているので、試験などを欠席するわけにはいかないんです」


 三年間の通算評定がいくつ以上だとかってことが決められていて、その成績だと、特待生として免除されていた授業料やら、奨学生としての奨学金なんかの返還義務がなくなるらしい。

 ようするに、無料とは言わずとも、相当安い費用で高校に通うことができるってことになる。

 まあ、白月が言っているのはそういったことだけじゃなく、自分が利用しているために利用できなかった他の生徒のためにもってことなんだろうけど。

 

「べつに、今日はまだ中間試験でもないだろ」


 たしかに、近いけど。

 

「試験の結果だけで成績が全て決定するということでしたら、試験日だけ登校するということでも、もしかしたら、問題ない人もいるかもしれませんが、私はできる限り、登校しておきたいです」


「それは、俺もそうだな」


 むしろ、白月より学科試験の成績が悪いだろうことは確実だから、出席だとか、授業態度だとか、提出物なんかも、相対的に、比重が大きくなる。

 もちろん、それらの重要さは、白月にとっても変わらないんだろうが。

 ただ、せっかく白月が登校してきたんなら、俺も関わった以上、結果は気になっている。

 わずかとは言えないし、まあ、人生を揺るがしたとまで言うと、言い過ぎだろうが。

 ただ、こっちから聞いていいのかどうかってところではある。白月の中で、どう消化されているのか、あるいは、まだ残っているのかわからないわけだし。

 デリカシーがないと言われるかもしれないが、それを確かめないことにはな。


「それで、縫子さんとはうまくやれてるのか?」


 昨日の今日で聞くようなことでもない気はするけど。

 今までも、一緒に過ごしていたんだろうから、問題ないだろうと思ってはいる。

 ただ、あの場では一応、縫子さんの気持ちとかも聞いたけど、再婚相手であったことも事実なんだよな。しかも、その相手が狙ったのが、言葉を飾らずに言うなら、連れていた娘だ。複雑なんてものじゃないだろう。

 もちろん、母娘の愛情はあるだろうけど。

 

「はい。むしろ、気を遣われてしまっていて」


 それは、気も遣うだろう。未遂とはいえ、強姦寸前、あるいは、あれはもう未遂じゃなかったと言っても過言じゃない。白月のために、背極的に肯定したくはないけど。

 いや、気を遣うっていうか、母親なんだから、そこは素直に、心配されているでいいんじゃないか?

 

「そうか。大丈夫だとは思うけど、なにかあったら、俺とかに、連絡してこいよ。まあ、俺にできることなんて、限られるけどな」


 昨日も言ったことだけど、念を押しておく。白月相手なら、何度言っておいても、多すぎるってこともないだろうし。

 べつに、継父のことが一応の決着をみているとはいえ、白月が狙われていたのは、それだけじゃないからな。

 

「昨日も聞きましたよ」


 もちろん、白月は俺なんかより記憶力もいいから、わざわざ、繰り返すまでもないんだけどな。

 とはいえ、あんな姿を見ていると、どうしても気になることは事実だから。


「そうだったか」


 もちろん、俺も覚えているけどな。昨日だけじゃなく、前から繰り返していることだ。

 なにもないことに越したことがないのは、そのとおりだろうけど、すでに一度あったことだし、まったく同じでなくても、似たような場面はある、かもしれない。実際、ナンパみたいなことから発展しそうになって、なんてことはあったわけだしな。

 そういった場合、白月が本当に俺に、あるいは、他の誰でも、頼ってくれるかどうかはわからないから、言い過ぎってこともないだろう。

 むしろ、心配はかけられないとか、こっちのことを心配しかねない。

 

「まあ、毎日とは言わなくても、しばらくは言い続けてやるよ。それこそ、いい加減、耳にタコができるとか、そのくらいにはな」


 勉強だって、繰り返すことで覚えるんだろう? 

 

「……そんなに毎日、私と話をしたいんですか?」


「その手には乗らねえよ。白月こそ、毎度、同じような手で俺を牽制できると思うなよ」


 恨むなら、昨日の自分の行動を恨むんだな。

 襲われかけた自分のことを恨めとか、俺も大分ひどいことを言っている自覚はあるけど、実際、なにも起きていないうちだからこそ、注意もできるからな。

 なにかが起きるのを予防するための策であり、未然に防ぐために、俺ができることなんて、ずっと一緒にいるとかってことはできないんだから、繰り返し言って聞かせるくらいしかないだろう。


「あまりしつこい男性は嫌われますよ」


「俺だって、好きでしつこく言ってるわけじゃねえよ」


 白月は溜息をついてみせる。

 まあ、心配だとかなんて、押し売りするものでもないし、それはいい。


「引っ越しだとかって話はどうなったんだ?」


「しないで済みそうです。私はもう気にしていませんし、危険もありませんから。私たちのほうで避けるというのは負けた気になりますし」


 まあ、実際、大変だからな。しないで問題ないなら、それがいいだろう。俺の気にすることでもない気はするし、勝ち負けの問題なのか? とは思わないでもないけど。

 白月をじっと見つめ――。


「そんなに見つめられると照れるのですが」


「嘘をつくな」


 そんな程度で照れるような、殊勝な性格はしてないだろ。


「べつに、嘘ではないのですけど」


「そうかよ」


 いままでの自分の言動を振り返れば、それがどの程度の説得力なのかは、すぐにわかるだろうよ。

 まあ、白月が照れていようが、どうでもいい。

 そんなことより、気配を察知するほうが重要だ。白月が言わないなら、こっちで気にするしかない。できるかどうかは別問題だとしても。


「二人とも、なにを朝から見つめあってるんだ?」


「朝一でかけてくるのがそれかよ、爽司」


 ただ心配してるだけだって。


「気になるだろ? 朔仁が誰かに肩入れするのは珍しいからな」


 珍しいってな。今まで、身近でそれほどのことがほとんどなかったってだけだ。

 ただ、爽司だろうと、透花であろうと、昨日の詳しい話をするつもりはない。少なくとも、俺からは。白月からも話したりはしないだろう。

 同情だとかは、必要としてないだろうし、すでに決着している話だ。いまさらできることもない。


「そんなこともないだろ。俺だって、世話になってるクラスメイトの心配くらいはする。ああ、一応言っておくけど、これ以上は答えないからな。爽司のことを信頼してないとか、そういうことじゃないけど、すでに決着してるし、みだりにふれ回ることでもないしな」


 噂になったりすれば、白月は困る、かもしれない。

 

「ふぅん」


 爽司はどこか、見定めているかのような視線を寄こし。


「いや、やっぱなんでもない。言うと不利になりそうだから、やめとくわ」


「なんの話だ?」


 教師が入ってきたから、それ以上は聞けなかった。


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