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今のところクラスメイトその一

「白月はクラスの懇親会には出なくて良かったのか?」


 自分を棚上げしつつ、話題を振る。ある程度までは通学路も一緒みたいだし。

 

「はい。あまり、そういった場は得意ではないので」


 それは、爽司にとっては残念だったかもな。まあ、あいつは、白月がいなかったらいなかったで、他のやつに声をかけていることだろう。それが透花だったら、とは思うが、爽司の性格を考えるならそれはないだろう。

 今日の集まりは、ようは、進学を機に初めて顔を合わせたようなやつらの交流が目的なんだから、昔馴染みの透花と積極的に話をしようとは思わないはず。話しをまったくしないってことはないだろうが。幼馴染なんだってだけで、話題は提供しやすいだろうしな。

 

「真田くんも参加してはいらっしゃらないですよね?」


「あー、まあ、俺は道場で稽古がしたかったからな」

 

 べつに、時間をずらしても可能だろうけど。実際に、爽司はそうしているわけだし。

 とはいえ、それなら、白月が参加していなくても、なにも言えることはなくなるだろう。

 もっとも、白月の言っていた理由が本当なら、だけど。

 白月の言うとおりなら、学校生活全般が得意じゃないってことになる。

 多分、そういう意味じゃなく、白月が人の集まりが苦手だって言っている理由は、人目を集めるからだろうな。

 そのこと自体は、昔からなんだとしても、それに慣れているとか、許容しているとかってこととは別問題だから。それも、先天的なもので。

 まさか、ただの人間には興味ありません、なんて話じゃないだろうし。

 もちろん、本当に人の密集するようなところが苦手だってことも考えられるけど。

 会場如何によっては、それも十分に考えられる事態だしな。


「そうか」


 とはいえ、さすがにここで、それは人目を集めるからなのか? とか、なんで髪の毛が白かったり、目が赤かったりするんだ? なんてことを聞くほど馬鹿で無神経なつもりはない。

 白月がハーフだとか、クォーターだとかって話は聞いたことがないけど。

 先の話にはなるけど、俺は好奇心から、調べて、たとえば、生まれつき髪の色素が薄かったり、瞳が赤くなっていたりする人たちのことを知るわけだけど、どうやら、白月は、一般的に知られているようなそういった症状の――アルビノ症候群とか、そんな感じの名前らしいけど――人たちとも理由は違うようで、本当に偶然ってことみたいだった。

 

「それは、残念がるだろうな」


「……どうしてそう思うのですか?」


 もちろん、入学初日で、爽司と話していたことなんて、白月が知っているはずもなく。

 俺だって、爽司の口から聞いていたから、なんてことを、まさか、当人にできるはずもなく。


「白月が美人だからな。噂くらいには聞いてたけど、実際に会ってみたら、マジで、想像以上に」


 作家みたいに、言葉を尽くして容姿を語るようなことはできないけど。つうか、たとえ、できたとしても、小っ恥ずかしいし、本人には言えないだろう。

 白月は、特段、冷めたとか、そういうこともなく、いままでと同じような調子で。

 

「……よくそんなことを恥ずかしげもなく、口にできますね。やっぱり、新手のナンパでしょうか?」


 まあ、もともと、冷めてるような口調っていうなら、それはそのとおりかもしれないけど。


「違えよ」


 即座に否定したけど、ご自身の台詞を思い返してみてください、なんて言われて遡って考えてみれば、まあ、たしかに、四流ナンパ師みたいな口ぶりではあったかもしれないとは、認めるしかないか。

 

「白月は、なにか、部活とかするつもりはあるのか?」


「いいえ。とはいえ、ほかにすることがあるというわけではありませんが」


 部活が強制、なんてことはない。そもそも、部活を強制されるなんていうのは、漫画とか、ライトノベルだとかの中だけの話で、実際に耳にしたことはない。俺が高校生になりたてで、他の学校の事情なんて知らないってこともあるだろうけど。 

 学校見学も行ったりしなかったからな。単純に、近さで選んだわけだし、校則がどうとか、はっきり言って、気にしたことはない。

 

「じゃあ、うちの道場で格闘技をやるっていうのはどうだ? 初心者歓迎、さっきのナンパの撃退なんかにも使えるようになったりする、かもしれない」


 実際に、対人として使えるようになるには、年月がかかるだろうけど。自分も相手も危なっかしすぎて。

 もちろん、学生の本分が勉強だからとかっていうなら、無理には誘わないけど。

 部活にしてもなんにしても、自分の意思じゃないと長く続かないからな。

 そして、格闘技――に限った話じゃないかもしれないが――は、中途半端に修めるのが一番危険だ。


「せっかくのお誘いですが」


 まあ、そうだよな。

 昔からやってたんならともかく、高校生になった相手に、初めて、格闘技やりませんか、なんて声をかけても、絶対とは言わないが、躱されるだろう。

 よっぽどの理由とかがあれば別かもしれないけど、できれば、そんな理由はできてほしくねえ。


「護身術程度でしたら、興味がないとは言いませんが」


「一番の護身は、無視して逃げる。つまり、駆け足の速さだな。体力に自信があれば、だけど。基本的に、ああいうやつらって持久力はないことが多いから」


 俺が絡まれたことのある経験からとかってことじゃなくて、昼間から他校生をナンパしに来るなんて、部活とか、課外活動をしてない、あるいは、所属はしていても真面目に活動していないって証拠だろ? それなら、持久力はあんまりないはず。

 そう言ってやると、白月は目を瞬かせてから、小さく笑い。


「それは、そのとおりですね」


「なんか面白いところがあったか?」


 喧嘩だろうが、いちゃもんだろうが、吹っ掛けてくるやつらは基本的に自信があるんだから、そんなやつらには付き合わないに限る。

 だから、駆け足と持久力があれば、さっきのナンパみたいな面倒事なら、大抵はスルーできると思うんだが。

 声をあげるでもいいけど、それだと、周囲に人がいないと意味ないからな。一方、駆け足なら一人でできる。

 そして、この辺りは駅周辺だから、必然、交番なんかも近くなるしな。

 うちの都合上、警察の知り合いも、何人かはいる。

 まあ、武術を習ってるやつがなにを言ってるんだ感があることは否定しないけど。


「まあ、白月も帰宅部で、スポーツ的なことをやってこなかったって言うなら、強くは言えねえけどな」


 ちなみに、俺は毎日走り込みもしている。

 格闘技だし、身体が資本。基礎体力なんて、どれだけあっても、困ることはない。むしろ、ないと困る。筋トレとか走り込みなんて、その最たるものだ。

 

「今度は一緒に走るか、とは聞かないのですね。ランニングがデートになるのかどうかはわかりませんが」


「おまえは俺をなんだと思ってるんだよ」


 そんなに、次から次に、手を変え、品を変え、ナンパに勤しんだりしねえよ。


「ほぼ初対面の相手に、どう思うもなにもないと思うのですが。今のところ、そうですね、クラスメイト一とかでしょうか?」


 それはそうかもしれないが、できれば、ナンパ師の称号は返上したいところなんだが。

 まあ、一緒に武術を嗜み、ともに高め合う好敵手みたいな相手がほしくないと言えば、嘘になるけど。

 今の道場の門下生もいるけど、数が増えても困らないどころか、新しい手合いが増えるのは歓迎だし。


「ちなみに、私は女子なのですが」


 それは、見ればわかる。


「世界大会の格闘技では、男女が分かれていることが多いですよね? 真田くんの道場ではそうではないのですか?」


「俺は、武術っていうのは、ようするに、力のないやつが力のあるやつに対抗するための技術だと思ってるから。それで、男女で分けるとか意味ないだろ?」


 

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