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親友が好きだと言っていた女子に告白された  作者: 白髪銀髪


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結局、やれることは決まっている

 ただ、保険っていうか、母さんには話しておきたい。父さんもいれば良かったけど、それを待っていると遅くなりそうだし。

 

「白月。一つ、いいか」


「真田くんのお母様にお話しを、ということですね」


 なんとなく、ぞわっとしたが、なんでもないことだったと忘れることにする。

 

「ああ。白月がどういうイメージを持っているかはわからないけど、もしもの場合、保護者の存在はあったほうが良い」


 まあ、ぶっ飛ばしに行くなんて説明したら止められるだろうな。 

 でも、最初からぶっ飛ばすと決まってるわけじゃない。心情的には、出合頭に一発くれてやっても、全然、気にはならないけど。

 

「ボクサーの拳は刃物と同じと聞いたことがあります。できれば、穏便に済ませたいのですが」


 襲われかけて、雨の中に傘もささず部屋着で飛び出したやつがなに言ってんだ。

 今現在、一緒に暮らしてる家族とのことだとはいえ、すでに、これ以上ないくらい気まずくなってるだろうが。

 

「言っとくけど、俺はボクサーじゃないぞ」


 ついでに空手家でもない。


「屁理屈を言わないでください」


 まあ、そのとおりだけど。 

 

「なんにしても、白月が心配することじゃない。俺は、俺の意思で、拳を握る。白月のため、なんてことは言わない」


 少なくとも、この件に関しては。


「それとも、白月にはなにか解決策があるのか?」


「……考える時間がほしいです」


 衝動的に逃げることを選択した相手に、その直後に策を尋ねるのは、卑怯なことかもしれない。策があるなら実行しているはずだからな。

 そもそも、俺自身、早まっているだろうってことには、気がついている。

 この場合、当事者じゃあない俺のほうこそ、冷静でいるべきなんだろうが。

 ただ、考えても結論は変わらない気はする。いや、この場合、考えるっていうのは、話す内容を考えるってことか。

 

「それはいいけど、そんな調子で学校行けるのか?」


 事実を知れば、誰だって、登校しなくて問題ない、むしろ、登校なんてしていられるような場合じゃないと言ってくれそうだけど。

 この場合、教師は白月の言うことを信じて、味方になってくれるんだろうか。さっきは、相談するべき相手として挙げたけど。

 

「それは問題ありません」


 白月の返答はすぐのことで。

 もしかして、以前――高校に入学する以前にも、似たような状況があったんじゃないかと思わせられたけど、そんなことを聞けるはずもない。

 でも、白月の両親のことを考えると……いや、俺が考えていても仕方ない。所詮は想像にすぎないし、事実を知っている白月がここにいるんだから、憶測を膨らませることはない。それだと、冷静に判断できなくなるからな。

 

「わかった。けど、話し合いが済むまではうちにいろ」


 その叔父の行動は、大まかに二つだろう。

 全面的に謝罪する(してみせる)か、逆切れして同じことを繰り返してくるのか。

 そして、後者は言うまでもなく、前者の対応だったとしても、それがどこまで本気なのかはわからない。

 たとえば、一時的にはそうして取り繕っていたとして、しばらく間をおいて再燃するかもしれない。

 少なくとも、俺にはその可能性を排除できるようには思えない。なら、そんなところにいさせられないと思うのは、友人としてはあたりまえだ。

 なんだったら、こっちに呼びつけるってことでも……いや、居場所っつうか、避難場所を知られるほうがまずいのか? そうは言っても、どうせ、話し合いの場に俺が参席した時点でこっちの素性は割れるわけで、真田って名前から、ここの道場に辿り着くのは簡単だろう。このあたりに真田なんて名字の家は他にないし。

 

「うちが嫌だってことなら、俺に紹介できる、白月の事情を知っても協力してくれそうな相手は、透花くらいだけど」


 同じ女子相手のほうが気が楽だっていうなら。

 ほかに、そんな頼みごとをできそうな相手はいないしな。クラスメイトってことでも、女子と会話をしないとか、そんなことじゃないけど、こんなことを頼むことが出るほどの信頼を築いているような相手が他にいるのかって聞かれるとな。

 

「……いえ、透花さんを巻き込みたくはありませんから」


 白月は固い口調で。

 巻き込むっていうか、頼るってことだと思うけど。

 とはいえ、当事者の視点からすれば、他人に頼りたくはないっていうことでも、理解はできる。

 たとえば、当事者じゃなくて、第三者的な立場に立ったことがあって、そのときには頼ってほしいと思ったとしても。

 本来なら、うちにだって来るつもりはなかったんだろうからな。じゃあ、どうするつもりだったのかって聞けば、ずっと雨に濡れてるつもりだたっとかって答えが返ってきそうだから、聞かないけど。そんなたらればに意味はないし。

 俺としては、女子の味方が――近くにいたほうが良いんじゃないかとは思ったけど。


「強がってるわけじゃないんだな?」


「全部聞きますね」


 そりゃあな。だって、所詮、女子の気持ちを察するとか、俺には無理だし。

 こう、武術的な流れを読んで、次に相手が仕掛けようとしている技の予測を立てるとか、心理を予想するとかってことならできるけど。 

 

「恐れる気持ちがまったくないと言えば嘘になります。ですが、先程の真田くんとのやりとりである程度は解消できたと思っています。そして、完全に解消するためには、結局、面と面で直接向き合わないといけないとも思いますから」


 強いな。あるいは、強がっているんだとしても。

 白月がそうあろうとするのなら、俺はそれを尊重したい。なんだって、弱さを見せられればいいってことじゃないからな。

 

「……仮に、話し合いで解決できたとして、その後のことは大丈夫なのか?」


 解決して、そこで終わりって話じゃない。

 俺が考えられるのは、やっぱり、母親と一緒になって、しばらくべつに暮らすとかってことだけど。さすがに、離婚とか、そんなことまでは俺が口を挟んで良い領分じゃない。 

 ただ、現実的に、住む場所の問題とか、対応しなくちゃならないことはあるわけで。

 いくら、うちにいてくれてもいいとはいえ、白月の母親までそれで良しとするかどうかはわからないからな。

 

「一応、母が先に離婚してからもしばらくは、祖父母のところなどを頼ったりはしましたが、二人だった時間もあるので。もっとも、そのころより、私は成長してしまっているわけですが」


「まあ、うちはいつまでいてくれてもかまわないっていうのは、本心なんだけどな」


 それでも、白月が気にするなら、ルームシェアとか、ゲストハウスっていうか、下宿先だとかって考えてくれてもかまわないけど。

 うちは無駄――ってことはないんだけど、敷地はあるし、内弟子を取っても問題ないよう、生活空間もある程度は整えられる。

 父さんは警察への顔もある程度は利くから、学校への説明もなんとかなるだろう。

 まあ、どっちかってことなら、その叔父のほうをどうにかしたいけどな。それこそ、警察に行くとか。 

 もちろん、一番大事なのは、白月の気持ちだけど。

 未遂とはいえ、本当のところ、立件はできるんじゃねえかな。まあ、本人の証言だけで証拠がないとなると、警察も難しそうだっていうのは理解できるけど。


「……やっぱ、ぶっ飛ばして謝らせるのが一番早いんじゃないか?」


 白月がどうとかじゃなく、俺も個人的に許せないんだが。

 形だけでも、脅しつけといたほうが良いんじゃないのか?


「私も同じことを繰り返すようですが、それはよくないと思います。真田くんのほうも訴えられかねませんから。未成年とはいえ、です」


 とはいえ、最初にすることは決まっているけどな。

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