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親友が好きだと言っていた女子に告白された  作者: 白髪銀髪


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すぐに結論は出さなくていいとは言った

「白月。そいつのことをぶっ飛ばしてやりたいなら、協力はするからな」


 この先も、白月がその継父のことを恐れながら暮らしていかなくちゃならないなんてことはない。むしろ、世話になったからとはいえ、もっと自由にいるべきだ。

 そいつが、なんであんなことを、とか、反省するようなやつならまだいいけど、今のところ、そんな風に信じることは、俺にはできない。今まで一緒に暮らしてきていた白月はともかくな。

 俺にしてみれば、今まで手を出さなかったのだって、中学生なんて興味の対象外だったとか、その程度なんじゃないかとしか思えない。あくまで、今話しを聞いたばかりの俺の勝手な想像だけど。

 

「いえ。そんな物騒なことは考えていません」


 当然、白月は首を横に振る。まあ、ここで即座に頷かれてたら、俺も、一旦落ち着けとかって説得しようとしてたと思うけど。

 

「俺に言わせてもらえば、ストーカーと大差ないと思うけどな」


 たしかに、白月には今まで一緒に過ごしてきた中での義理だとか、恩を感じてはいるんだろうけど。

 ただ、なんにしても、真意は確かめておきたい。今までのことも、今回のことも、それから、あるのなら、この先についても。

 俺にとっては、会ったことのない、なんの思い入れもない叔父とやらの心算より、白月の今の心身のほうが心配だから。

 なにより、白月にとっては、身内(血縁)なわけだからな。

 

「認めたくない気持ちはあるだろう。これ以上、今ここで俺がなにか言っても無駄かもしれない。けど、俺は――俺たちは白月の味方だし、今後、何度、なにを相談してきて、頼ってくれてもかまわない」


 むしろ、雨に打たれながら考えようとか、そんなことを実行する前に、とりあえず一度、俺でも、爽司でも、透花にでも、ひと言声をかけてほしい。

 まあ、白月が相談しようとするなんて、相当切羽詰まった状態だろうことは想像できるし、そんな余裕があるかどうかはともかく、こうして話したことで、白月の記憶力なら、心のどこかに引っかかってくれればいい。

 

「とりあえず、次にその叔父ってやつに会うとか、家に戻るってときには、俺は確実について行くからな」


 見破られないように尾行するとか、そんなせせこましことじゃなく、隣とか、後ろでしっかり背中を支えながら。なんなら、手を繋いでいてもいい。もちろん、白月がそうしたいなら、それでかまわないなら、だけど。

 なんにしても、一応、保護? したってことで、説明する責任はあるわけだし。

 

「先に言っておくけどな。うちからいなくなったら――黙っていなくなったら、そういうことなんだって理解するからな。もちろん、俺も、できるだけ白月から目を離さないようにはするけど」

 

 ただ、俺が男で白月が女だとかってこと以上に、四六時中、ずっと見ているっていうのは、現実的じゃない。

 そんなことをすれば、理由があったとして、とても、白月の落ち着ける環境じゃないし、うちにいてもらう意味もない。


「はい」


 さっきまでみたいに、消えそうな雰囲気はなくなっているけど、いつもの、俺たちの前にいるときの白月より、テンションが数段低いからな。

 言うまでもなく、あたりまえだろうとはいえ、やっぱり、できる限り、俺たちの知っている白月に戻ってほしいって気持ちはある。もちろん、他人の気持ちを勝手に推測するなとか言われるかもしれないけど、なにも発信してくれないんじゃあ、こっちは推測するしかないわけだしな。

 

「なにも、すぐに結論出せって話じゃない。ただ、力にはなるから、それだけは覚えていてくれ」


 こんなことで、整理がつけられるものじゃないのはわかってる。 

 けど、困っていたら(困っているように見えたら)たとえ、頼まれなくても、力になる。友人ってそういうものだろ。

 いや、白月が俺たちのことを友人と認めてくれているのかどうかっていうのは……クラスメイトって言うくらいだし、そのくらいには勝手に思っていてもいいだろ?

 

「真田くんと友人ですか……? あまり、考えられないですね」


「おい。俺だって普通に傷つくんだが?」


 白月は容赦なく抉り込んできたけど。


「いいだろ、友人で。クラスメイトだってことには変わりないし」


 クラスメイトって、友人って意味も含まれてるだろ。


「……そう、ですね」


 なんだよ、その間は。

 まあ、いい。ある程度は予想していたことだ。それに、関係性の名前なんてどうでもいいことだからな。

 頼るのでも、利用するのでも、なんだろうと、白月の支えに……いや、灯りの一つにでもなれるなら、通行人その一とかでもかまわない。もっとも、そこまでかかわったら、それはもう、通行人その一なんて役どころじゃないかもしれないけどな。

 

「一人じゃないからな。俺たちを頼れ」


 後になって思い出したらベッドで数時間は頭を抱えそうなセリフだろうと、なんてことはない。勢いに任せて、我に返る前にやり切ってしまえばいいだけだ。

 ここまでくればなんでも同じとやけ気味になり、俺は白月の瞳を真っ直ぐに見つめ、手を握った。

 白月の肩がわずかに上下する。

 手を握るのはセクハラか? いや、乱取りまでしておいて、いまさらだな。


「たしかに俺は、勉強面なんかではまったく白月に及ばないし、他人の気持ちのなんたるかなんてことも、理解してないただの十六歳の男子高校生かもしれないけど、それでも白月が百人束になってもかなわないくらいには、腕力には自信があるつもりだ」


 多少、誇張だろうと、白月を納得させるためだ。

 

「さっきは、すぐに結論を出す必要はないと言っていませんでしたか?」


「もう一分くらいは経ってるだろ。善は急げ、巧遅拙速」


 そんな、小学生みたいな言い訳を口にする。


「急いては事を仕損じる、急がば回れ、短気は損気とも言いますが」


 それはそうだけど。

 口じゃあ白月を説得できそうにはない。まあ、そうして、反論するような、いつもの調子が戻ってきたと思えば、悪いことでもなかったかもな。

 いや、これは本当に俺反対するための言葉か?

 白月は立ち上がり。

 

「とはいえ、鉄は熱いうちにとも言いますから」


「まさか、今からすぐに家に戻ろうってことじゃないだろうな?」


 もっと、普段の白月なら、公的機関に根回しでもないけど、下準備はしっかりするんじゃないかと思うんだが。

 

「さっきも言ったけど、いろいろと片付くっていうか、整えるまでは、うちにいてくれて全然かまわないからな」


「真田くんが、どうしても私にいてほしいとおっしゃるのでしたら、悪い気はしませんが」


 白月が悪戯めいた微笑みを浮かべる。

 ここで、そうだ、って即答できるなら、白月に勝てそうなものだったけど、あいにく、戸惑った俺には勝ち目はない。

 普段の白月に調子が戻ってきていたってことは、そのくらい言いそうだと予想できていれば良かったんだけど。いや、予想していたところで変わらないか。

 さすがに、今から認めたところで、遅すぎるし、余計に白月に弄ばれるだけだ。

 まあ、爽司とか、一部の男子は、白月に弄ばれるなんて羨ましいとか言いそうだけど、そんな一部の特殊なやつらのことなんか、俺の知ったことじゃないし、俺は御免だからな。

 

「……そんな風に言えるようになってきたってことは大丈夫そうだな」


 白月の身体の横で握られた拳がわずかに震えていたことには、気づいていないふりをした。 

 もちろん、そんな状態なら、安易な判断はさせるものじゃないんだが、今は、俺がここにいる。ある程度なら、俺がフォローできる。

 

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