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親友が好きだと言っていた女子に告白された  作者: 白髪銀髪


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女王様……みたいだと言えないようなこともなきにしもあらず

「肌着類はコンビニとかで売ってるやつでいいだろ。どうせ、何か月もいるわけじゃないし。服も、まあ、白月が良ければだけど、俺の洗濯してあるやつとか、着たことのないやつとか、それに、道場のほうに道着なら余ってるはずだろうから、なんとかなると思う」


 いや、べつに、何か月いてくれてもかまわないんだけどな。現実的には、金銭面の問題があるから、俺一人の判断じゃ難しいってことはあるけど。

 あとは、そんなに長い間かかずらせたくない。

 いざとなれば、白月の家まで取りに行くってこともできなくはないわけだし。

 俺とか、爽司、透花に頼んでもいいけど、一緒に行けば、その叔父とやらがいてもある程度、対応はできるだろうからな。もっとも、その場合、物理的に近づけないって話になるわけで、具体的に、法律だとか、和解、仲裁なんてことまで十分にできると過信してはいない。もちろん、相手の改心を信じてないとか、そういうことじゃないけど。そもそも、そんな風に信じるとかって言えるほどに、白月の叔父ってやつのことを知らないからな。

 うちの――とくに道場の中でのことならなんとかできることもそれなりにあるだろうけど、他人の家とか、家族関係とかって話になると、どうしても、第三者的になるのは仕方なく。

 

「白月は、一応、その叔父だったか? そいつに、謝罪させて、再犯しないように警告して、プライベートを守ってくれてとか、そういう約定が結べたら、家に戻るつもりはあるのか?」

 

 あるいは、同じ空間にいたくもないのか。

 もちろん、他にも取り決めはいろいろと必要だろうが、その詳しい内容は俺のわかる範囲にはない。

 性的暴行だか、なんとかってことで、警察に介入してもらって、あるいは、逮捕までいくとかそういうことならまた話は違うんだろうけど、それはそれで、また、別の問題が発生しそうだしな。すくなくとも、親権とか、扶養的な面での問題はあるだろう。その点に関しては、叔父じゃなく、叔母ってほうがいて、それがまともな相手なら、なんとかなるかもしれないって期待はできそうだけど。

 白月に逆恨みしてくるようなやつなら、また考える必要があるだろうし。

 

「……そうですね。それが望ましいのでしょうね」


 白月の表情は硬く。


「あー、俺の言い方が悪かった。これが前提ってことで考えていてもらっていいんだけど、本当に、うちにはいくらいてくれてもかまわないから」


 逮捕されようと、されなかろうと、反省したと態度で示されようと、第三者の保証があろうと、自分を襲ってこようとした、あるいは、実際に襲われた相手と一緒に、ひとつ屋根の下で暮らすなんて、考えられないよな。 

 俺とか、当事者じゃなければ、保護者と一緒にいたほうが良いとか、簡単に言えるけど、当人にとってみれば、恐怖以外の何物でもないよな。

 でも、警察とかに説明するときに一番必要になるだろうことが白月自身の意思だということは間違いなさそうだし、そこははっきりさせておきたい。

 こっちから能動的に動けそうな範囲としては。

 

「白月が内弟子になるってことなら、数か月以上って長さでうちにいても問題ない理由づけになるんだけどな」


「内弟子とはなんでしょうか?」


 普通は聞かないだろう言葉に、白月が首を傾げる。


「内弟子っていうのはだな、まあ、簡単に言えば、住み込みの弟子のことだ。寝食まで共にして、一日中武術漬けでいられる。もちろん、白月の場合は、そういう体ってことでいいんだけど」


 ほら、たしか、小説にもあっただろ。内弟子ってそのままの言葉は使ってなかったと思うけど、言われるとおりに十年だか、二十年だか奉公して、そのまま仙人になって、空に昇って行ったやつ。完全に同じってことじゃないけど、似たようなものだ。

 そしてこっちは、実際に内弟子になっている必要はない。

 あくまで、家族やら、警察なんかの公的機関に説明するときに、監禁とか、誘拐だとかじゃないっていう、理由付けの類だな。 

 もちろん、白月が本気で武術を学びたいってことなら、歓迎だけど。 


「まあ、内弟子とまで言わずとも、合宿でいいんだけどな。ただ、期間が長いだけで」


 うちが武術の道場であるってことを利用するとしたら、そのくらいか。

 もちろん、友達の家に泊まりで遊びに来ているってことでもかまわないのかもしれないしな。

 ようするに、どの理由が、一番、家族……はともかく、警察なんかの公的機関を納得させられるのかって話だから。

 物的証拠がなく、襲われた事実を客観的に証明できない以上、物理的に被害者と加害者の距離を離すのが、俺たちにできる最も簡単な方法だから。

 爽司と透花も、協力してくれることだろう。理由を深く聞かなくてもな。


「念押ししとくけど、白月。迷惑だとかって勝手に判断して、なにも言わずに出ていくってことだけは止めてくれよ。もちろん、メモだけ残していくとかも。その前に、俺たちに相談してくれ」


 保護した責任とか、そういうことじゃなく、純粋に、白月を一人でいさせておくのが心配だからだ。

 

「わかりました」


 本当にわかってんのかな? 普段の調子なら信じられるんだけど、今の白月は、こう、元気がない感じだからな。

 俺が白月を真っ直ぐに見つめると。


「あの、なにか……?」


「いつもの調子じゃなくて、やけに素直で、しおらしいとも言えそうな様子だから、心配になってな」


 憎まれ口じゃないけど、女王様然としている……っていうのも違うか、不敵な感じでいるのが白月だと思ってるから、心配はする。

 まあ、今の状況を考えたなら、白月の態度なんて当然のものなんだろうけど。

 

「……それは真田くんの性癖が女王様だということですか? あまり、そういうことは他人に吹聴しないほうが良いと思いますが。趣味は人それぞれですから、他人に迷惑をかけない程度であれば、お好きにしていてかまわないとは思いますけど」


「そんなこと言ってねえんだよ」


 今の話の、どこをどうしたら、俺の性癖が女王様になるんだよ。そんなつもりは、一ミリもないから。

 

「真田くんが私のことを女王様みたいだと言ったんじゃないですか?」

 

「いや、そこで白月のほうが首を捻るのが、俺にとっては遺憾なんだよ」


 なんで、俺発信のこと、みたいになってんだよ。

 こいつ、俺を貶めるために口を開いてるんじゃないだろうな?

 まあ、ある意味、いつもどおりってことで、安心するけど。いや、いつもそんな感じだったらいいとか、そういうことを言ってるわけじゃなく。

 

「……まあいい。いや、白月の言ってることに納得してるわけじゃないからな」


「はい、わかっていますよ」


 白月が悟ったみたいな笑顔を浮かべているのが非常に気になるところだが、今はそんなことに構ってる場合じゃない。 

 とりあえず、俺の言っていることは、真面目に受け取って、納得、了承してくれたみたいだし、この件で、父さんや母さん、それから、こっちは今すぐってわけにはいかないけど、うちに通ってくる門弟連中にも、口裏を合わせておかないといけないからな。俺だって、全員の連絡先を知っているわけじゃない。

 いや、連絡先に関しては、おそらく、ここへ通うとなったとき、父さんか、母さんには同意書的なものを提出しているはずで、そこに記載されている可能性は高いけど。俺も(一応)同じ道場に通ってはいるけど、俺にとっては実家なわけで、そんな同意書的なものを書いたりはしてないから、本当にそんなものがあるのかどうかはわからないけど。連絡先っていっても、そんなの、書こうとしたって、資源が無駄になるだけだし。


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