表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親友が好きだと言っていた女子に告白された  作者: 白髪銀髪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/98

お言葉に甘えさせていただいても

 自分でできそうだと思ったことなら、行けるところまで自分の力でだけで進める。他人に対してのスタンスってことじゃなく、白月自身が自分に対して決めているのはそんなスタイルだろうから。

 それに、俺は男だからな。

 

「まあ、とにかく、今は休んで寝てろ。道場だと、もしかしたら、雨が止んだ場合に誰か来るかもしれないから、白月さえよければ、俺の部屋で」


 もちろん、道場だって、普段鍵をかけてはいる。ただし、入り口まではいつでも来られる。うちの入り口はでかい門になっていて、もちろんその隣に普通の出入り口用の扉もあるんだけど、門の閂のほうは、普段、下ろしたりはしていないから。もっとも、不心得者なら、大きな門のほうをわざわざ開けようとは思わないだろう。

 狙ってのことじゃないけど、大きな重い門で、疚しい気落ちで開けようとするのは躊躇うような、こう、気配みたいなのがあるからな。

 それでも、来ようと思えば、誰でも、道場とか、住居スペースの入り口までは来られるようになっていて、扉を叩きに来ないとは言い切れない。もちろん、雨が止んだ場合、門下生が普通に鍛錬に来るだろうし。

 俺は道場でも、空き部屋でも、なんとでもなる。 

 けど、客人である白月に、そんな、ベッドもなにもないところに寝させるのは……一応、普段は使ってない布団なんかはあるけど。

 

「普段使ってない部屋とかもあるけど、どうする?」


「お言葉に甘えさせていただいてもいいですか?」


 とはいえ、今はまだ、午前中。寝るには全然早いだろう。もっとも、白月の事情を考えたなら、きちんと眠れていたのかどうかっていうのは、わからないけど。

 

「わかった。じゃあ、ちょっと付き合ってくれ」


 白月を伴い、物置みたいになっている部屋まで向かい、布団とか、シーツ、枕なんかを引っ張り出す。

 一応、袋に入っているから、汚れていたり、埃まみれだったりすることはない。ただし、夏用のものだから、この季節だと、まだ少し涼しいかもしれないけど。

 まあそれはいいか。

 俺は、布団とか、シーツなんかの入っている袋を持って。


「白月は枕でも選んでおいてくれ。まあ、同じようなのしかないけどな」


 もともとは、ここで合宿でもできるようにと準備しているものだ。まあ、最近はやってないけど。 

 

「あの、真田くん。私がそちらを持ちます」


 白月は俺の持っている布団なんかの入った袋のほうを見てくるけど。


「いや、こっちは結構重いから、白月にこれを持たせて階段を上がらせたりはさせられない」


 道場じゃないうちの居住スペースは二階建てで、一階がキッチンとか、リビングで、二階が家族のそれぞれの部屋になっている。

 それで、二階まで運んできたんだけど。


「……白月。そっちは俺の部屋だけど」


 空き部屋に準備しようとしていた俺に対して、白月は俺の部屋の前で立ち止まる。

 

「はい。それは、わかっていますけど……?」


 いや、なんでそっちが首傾げてんだよ。むしろ、首傾げたいのは俺のほうだよ。


「……さっき、普段使ってない部屋もあるけどどうするかって聞いたよな?」


「はい。お言葉に甘えさせていただきますとお答えしました」


 だよな。

 優等生……とかはあんまり関係なく、直前の会話を覚えてないはずもないよな。

 

「それとも、真田くんは私が隣で寝させてもらうのは、迷惑でしょうか?」


 白月は枕に顔を半分だけ埋めて、上目遣いに見つめてくる。

 わざとやってんのかな? わざとやってるんだろうな。

 しかし、今の――家を飛び出してきた白月を一緒にはいたくない、いや、いられないから、別の部屋で寝るから、なんてことは言い出せない。それじゃあ、まるで、俺も手を出そうとしているみたいだし。

 

「……俺のことを試してるのか?」


「真田くんのことは信じていますよ」


 白月がなにを考えているのか、本当のところはわからないけど……もしかしたら、一人でいるってほうが不安になるってことなのかもしれないか。 

 一度来たことがあるとはいえ、他人の、所詮はクラスメイトの家だ。見慣れない景色に落ち着かないなんてこともあるだろう。あるいは、その、例の継父とやらが、追いかけてきてここまで辿り着いたとき、知り合いが手の届く、目の見える範囲にいてくれるほうが安心するとか。

 その相手が俺でいいのかって疑問はあるけど、この家に今のところ、白月の知り合いと呼べるような相手は俺しかいないわけで。

 どうせ、すぐに寝るわけじゃない。むしろ、まだ、一日はほとんど残っている。その間に、白月の精神も少しは落ち着くかもしれないしな。

 まじで、白月さえよければ、透花にでも来てもらいたいところなんだけど、話を聞いた以上、他のやつにも同じ話をする、させるのは気がひけるというか。

 どうせ、幾度かは同じ話をしなくちゃならないだろう――たとえば、警察相手とかに――とはいえ、その回数は抑えたい。

 

「じゃあ、とりあえず、俺の母さんと父さんのところに話に行くぞ」


 そのことについては最初に了承を得ている。白月も、話さないでいられるとは思っていなかっただろうし。

 それに、ここまで準備をしておけば、こっちから押し切る理由にも……なるかどうかは微妙だな。

 とはいえ、父さんも母さんも、拒否することはないだろうと思う。少なくとも、白月の家族が来た場合、間に入ってはくれるだろう。

 もちろん、理由は話さないでも泊めることを了承してはくれるだろう。

 ただし、どうあれ、匿うという形になる以上、いずれ、白月の継父とはなんらかの対話をしなくちゃならなくなるわけで、そのとき、情報を持っているのといないのとでは、そして、そのことについて考えるだけの時間があったかどうかってことは大きな違いになるだろうから。 

 

「そういえば、白月。身体のほうは大丈夫か? 風邪とかはひきそうか? だるいとか、熱っぽいとか」


 白月がどのくらい雨の中を徘徊していたのかはわからない。すくなくとも、俺が白月の手を掴んだときには相当冷たかった。

 見つけてからはすぐに連れ帰って、風呂に放り込んだとはいえ。


「ご心配いただきありがとうございます。ですが、今のところは問題ありません」


「そうか」


 油断はしないけどな。対決するなら、体力も、頭だって冴えている必要がある。

 風邪気味の、ぼうっとした様子じゃあ、まともな対話はできないからな。


「朔仁くん。白月さんがいらしていたのね」


 リビングのほうに降りて行くと、母さんが食事の準備をしていて。


「朔仁くん、お昼まだだったでしょう。白月さんも一緒にどうかしら?」


 白月は、腹で答えるみたいはベタなことはしなかったが、一度俺のことを見上げてから、ご厚意感謝いたしますと席に着いた。

 

「父さんは?」


「あの人は今日は出かけているわよ」


 まあ、仕事だっていうなら、仕方ない。雨だろうと関係ないことなんだろう。

 

「いただきます」


 俺と白月、母さんは三人揃って手を合わせ。

 食事の最中にする話でもないだろうと、黙々と、片付けまでを済ませてから」


「母さん。実は白月の」


「いいわよ」


「ことをしばらくうちでって、まだ、途中までしか言ってなかったんだけど」


 いや、すぐに了承をもらえて助かることは事実なんだけど。


「でも、結論は変わらないし、良いんじゃないかしら」


「それはそうかもしれないけど」


 一応、それなりには覚悟してきたつもりだったわけで。

 まあ、先回りして部屋の準備とかして、断られないようにしたことは事実だけど。


「白月さんの身の回りのものなんかはどうするつもりなの?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ