表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親友が好きだと言っていた女子に告白された  作者: 白髪銀髪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/98

気持ちを尊重するということ

 言葉を無視できないっていうか、報いなくちゃならないと思っているというか。

 白月は、自分のほうが先に世話になっていてそれの礼だからとかって言うんだろうけど、どう考えてもそれだけじゃ足りないだろうな。

 とはいえ、逆の立場になって考えたとき、恩だとか、礼だとかっていうのは、大きさの問題じゃなく、気持ちの問題だからと言われるだろうことはわかっている。

 あるいは、同級生と一緒に勉強をすることに、なにか特別な理由が必要だとでも? なんて感じかもしれない。

 こっちから、迷惑だったら断ってくれてもかまわない、とも言い出し辛いし。

 実際、誘ったのは俺だけど、決めたのは白月自身だから、口出しできることでもないしな。もちろん、そうやって逃げ道を塞ぐっていう意味合いもない。 

 それに、いろいろを無視したとして、白月と一緒に勉強できるっていうのは大きい。解説がわかりやすいからな。時間を忘れられるくらいに集中して勉強できるっていうのも、一人だったら無理だっただろうし。


「とりあえず、今日のところはここまでにしましょう。あまり、遅くなりすぎるのも悪いですから」


 そう白月が言い出さなければ、ずっと机に向かい続けていられたかもしれない。そのくらい、集中力が続いていた。


「それに、こうして自習するときには、適度に、時間を区切って勉強することが能率にも繋がります。実際の試験では、せいぜい、一時間、もしくは一時間半、長くても、二時間を超えて同じ試験を受け続けるということは滅多にありませんから。あるいは、学生の教科試験という意味では、ないと言い切ってもかまわないことかもしれません」


 逆に言えば、一時間やら、二時間、同じ教科に集中し続けた後、十分程度の休憩の後、別の教科に集中できるよう、頭を切り替える必要があるってことでもある。

 まだ、外は明るさが残っているけど、そのくらいのうちに帰ったほうがいいってことはあるからな。

 門限がどうこうって話じゃなく、安全を考えてって意味で。

 もちろん。


「帰りは危ないし、俺たちで送ってくけど」


 爽司がそう言い出すだろうことはわかっていたし、なんなら、俺も元からそのつもりだった。

 

「そのようなご迷惑をかけるわけには」


「俺だって、こんなことを迷惑だなんて思ってないから。むしろ、こんな時間に女の子を一人で帰すような真似、危なくてできないから。あんまり、仰々しく言うつもりはないけど、たとえば白月が襲われるようなことはなかったとしても、絶対安心だって思えたとしても、多分、こうして送らせてくれって言うと思う」


 もちろん、俺や爽司がついていれば絶対安心、ということでもないけど。

 白月にとって、俺や爽司がどこまで信頼足りえているのかっていうのも、はっきりとはわからないしな。そりゃあ、俺たちの前であからさまに疑っています、なんて言えないだろうし。いくら、白月の面の皮が厚かろうと。

 

「だよな、朔仁」


 爽司が俺にも話を振る。


「俺だけじゃなく、朔仁もいるし、女子二人としても問題ないから」


 それは、じゃあ透花のほうも、なんて言い出すことを予想してのことなんだろう。

 俺たちだって、自分がついていればたとえ襲われるようなことがあっても絶対大丈夫だ、なんて過信しているほどのことはない。

 ただ、明るいとは言えない道を、女子一人で行かせるよりは、男もついていたほうがいくらかましだろうなと思える程度だ。白月はどうか知らないけど、透花が暗いところとか、お化けやらなにやらを怖がるとかってことも知らないし。

 まあ、爽司がこんなことを言い出した別の理由も察しはつくし、俺も、幼馴染としては、思惑に乗るのはやぶさかじゃない。どっちに対しても、だけど。

 

「まあ、わざわざ来てもらってるんだから、そのくらいはさせてくれ」


「よし、決まりだな」


 異論を挟ませる暇を作らず、爽司は立ち上がる。 

 父さんは道場のほうにいるだろうから、そっちは気にせず、キッチンにいる母さんにだけ、声はかけておく。


「透花たちのこと、送ってくるから」


 心情的には透花のほうにつきたいとは思っているけど、爽司は爽司で、多分、頑張ってはいるんだろう。方向性はともかく、意思は感じられる。

 それで、爽司が今は白月のほうに傾いているんなら、俺も中立でいたいとは思う。


「じゃあ、また、学校でな」


 そう言って、爽司と白月の二人とは俺の家の前で別れ。


「行くか」


「はい」


 透花のほうも、いまさら断っても意味はないとわかっているようで、大人しく隣を歩く。

 表面的に落ち込んでいるようには見えないし、俺に女子の心の機微とか、そういったことはわからない。

 ただ、幼馴染として、長く付き合っているから察しがついているってだけで。


「……爽司は馬鹿だから、はっきり言わないと変わらないぞ」


 こういう話をするのも、初めてのことじゃない。

 

「あいつは、多分、告白されてそれを断ることはない。それもなんとなくわかるだろ?」


 それからどれだけ続くのかっていうのは、俺の関わる話じゃないから、頑張れとか、お幸せにとか、そんな声をかけるくらいしかできることもないけど。


「はい」


 透花は頷いて、しかし。


「それは、なんとなく、感じられます。ですが、爽司くんの気持ちを無視したいわけでもないんです」


「爽司の気持ち?」


 俺だって、経験があるわけでもないし、詳しいわけでももちろんないから、言えることじゃないかもしれないけど、そんなことを気にしていたら告白なんてできないんじゃないか? 

 最初から両思いだってわかっている、形だけを必要としての告白だっていうことなら、関係ないかもしれないけど、思っている相手に、自分の気持ちを伝えたい、余所を向いている相手にこっちを向いてほしいと気持ちを伝えるのが告白だろ?

 

「爽司くんは優しいですから、私の気持ちを無視することはないかもしませんが、爽司くんが本当に想う方と付き合っているのなら、それを邪魔したくもありません」


 たしかに、爽司はそのときそのときの相手と、真面目に向き合ってはいると思う。

 実際、付き合っている間には他の誰とも付き合わないってことから考えても、それは確かだろう。

 ただ、それだけが理由なら、爽司gは付き合っていない間に想いを伝えるくらいのことはしても良いんじゃないかとは思うけどな。

 もちろん、爽司が付き合っている誰かと別れることを期待しているわけじゃない。誰が相手だろうと、その想いは成就すればいいとも思っている。 

 ただ、それは、爽司が透花のことをなんとも思ってないってことにはならないだろう。

 実際、爽司がこれだけずっと近くにいる透花にだけ声をかけないっていうのは、嫌われているとかって理由じゃないことは、爽司と透花の様子を見て、話しをしてみればわかることだしな。

 ただ、俺には爽司が言っている、透花はそういうのじゃないっていうことの意味が測りかねているから、いまいち、強くは出られないんだけど。

 そんなものを突き破るほどのことができるくらいなら、透花のほうからとっくに想いを伝えているだろうしな。

 それじゃあ、今まで伝えてこなかった透花が悪いのかって言われると、どう考えても爽司の態度に問題があることは事実だから、爽司の肩を持つことはないけどな。

 

「朔仁くんもそうなんじゃありませんか?」


「俺が? いや、むしろ俺はさっさと透花が爽司に告白したとして、成功しない可能性はかなり低いんじゃないかと思ってるけど」


 こんなことで背中を押せているとも思えないけど。十数年、幼馴染を続けているのは伊達じゃない。 

 しかし、透花が言い出したのは予想していないことで。


「そうではなく、朔仁くんは茉莉ちゃんのことを気にかけていらっしゃるのではありませんか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ