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親友が好きだと言っていた女子に告白された  作者: 白髪銀髪


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褒めてもなにも出ません

 まあ、毎日ってことだと、通話料だか、通信料だかがかかりすぎると思うから、そこは、通話じゃなく、メッセージにするとか、臨機応変に、だな。

 しかし。


「ついこの前まで入試だって勉強漬けだったのに、どうしてこうもすぐにまた試験があるんだろうな」


「先生方の仕事が生徒を教育するということだからでしょうね。それでお給料をもらい、生活をしているわけですから、当然のことだと思いますが。もっとも、試験の場合は、その教科について、という制限が設けられるわけですが」


 それは、愚痴のような呟きだったが、白月は律儀に拾い。


「その学校への入学を決めるのに、真田くんは近いからという理由で決められたようですが、進学実績というものを重要視する人も多いですよね。その実績というのは、身もふたもない言い方をするのなら、難関と呼ばれる偏差値の高いとされる有名校への進学者数のことです。ですが、当然、受験をするのは生徒であり、教師ではありません。生徒がどれだけの習熟度に達しているのかを調べるのには、やはり、本番とまるきり同じとはいかずとも、似たような、学科試験という形を取ることが有効だからです」


 白月は最後に、少なくとも現代社会ではそれが重要視されているようですから、と付け加えた。

 

「もし、真田くんが試験という体制について疑問を感じているのであれば、ルールを作る側に回る必要があるわけですが、それにしても、勉強をしなくてはならないことに変わりはありません。むしろ、決められた教科の、決められた範囲だけを勉強すればいいという定期試験、および、学科試験であるうちはやさしいと考えたほうがいいでしょう」


 などと、しかつめらしく語ったのち。


「まあ、試験があることは今の私たちに避けられることではありませんから、どうして試験があるのかということを考えるより、どうして、試験を突破しなくてはならないのかということを考えたほうが生産性はあるでしょうね」


「どうせ、自分のためとか、そういうことだろ?」


 ただ、自分のためだからと言われたからやるっていうのが、健全なのかどうかは疑問だけど。まあ、結局、勉強するっていう行為自体は同じわけだから、その結果が同じなら問題はないのか。もちろん、自分自身のためになるってことがわからないわけじゃない。

 しかし、白月は首を横に振り。


「試験に受からないと、追試がありますよね。真田くんが試験を避けたいというのであれば、赤点を回避して、試験を一回で終わらせるために、試験対策をする必要があるということです。もちろん、この場合の対策というのは学習のことですよ」


「たしかに、追試とか、補講は避けたいところだな」


 いくら、学校まで近いとはいえ、わざわざ、休みにまで登校したくはないからな。

 とはいえ、それもつまりは自分のためってことなんじゃないのかとは思うけど、理由なんてどうでもいいわけだしな。いや、やる気とかに関わるっていうなら、それはそのとおりかもしれないけど。


「それに、勉強するという建前があれば、私と一緒にいる時間も取れるわけですし」


 たしかに、教師役として、白月は非常に助かる相手だ。教師相手に質問しに行くよりも遥かに楽で、今のところ、答えが返ってこなかったこともない。

 

「……そうだな」


 今のところは、それの建前は通用しているけどな。

 ただ、爽司のことがあるから。べつに、爽司より透花に肩入れするとか、そんなこともないけど。どっちも、幼馴染の親友だってことには変わりないし。

 できれば、爽司が透花のほうを向けば、二人の想いが叶うってことで、一番丸く収まりそうだが、それは俺にどうにかできることでもない。

 だかれ、できれば、今のところ――いや、爽司が今付き合っているのは、どうやら先輩女子らしいから、気を回す必要もないんだが。もっとも、それがいつまで続くのかってことはわからないけど。

 

「あまり嬉しそうではありませんね」


 眉をひそめる白月の自己肯定感が、相も変わらず、絶好調だってことはわかった。 

 

「いや、そんなことはねえよ」


 内面……はまだ判断できないけど、すくなくとも、外見がすごい美少女だっていうことには違いないからな。

 噂として知ってはいたけど、実際にこうして隣を歩いていても、現実感はあんまりないっていうか。たしかに噂になるだけのことはあると言ったらいいのか。

 まあ、その内面も。


「実際、白月は外側だけじゃなくて、内面もすごいやつだよ。一緒に勉強してるとよくわかる」


「どうしたんですか、いきなり。頭でも打ちましたか?」


 訝しんだ顔をされる。いきなりそんなことを言われて、その反応になることは予想できた。

 だけど、俺はそれは間違いないと断言できる。いや、ここまで短い期間かもしれないけど、こうしてクラスメイトになって、勉強したりするようになってわかってきたって言うべきかもしれないか。

 たしかに、知識とか、経験則とか、そういったことは教師陣のほうが上だろう。すくなくとも、担当科目に関しては。 

 それについては専門職だから、なんとも言えないけどな。

 でも、その専門職の人間よりもわかりやすいと思える説明を、それも、複数の、あるいは、実技を除くすべてとも言える学科目に対してできるっていうのは、十分に誇っていいことだと思う。

 白月の言うとおり、勉強が積み重ねでしかないのなら、今の白月自身に辿り着くまで、いったい、どれほどの積み重ねがあったのか。その努力には、素直に敬意を表する。

 

「白月が教えるのもうまいのは、白月自身でそうして努力してきたからだろ。白月が勉強が好きでやっていたのかどうかはわからないけど、いや、それでもすごいことだな。勉強が好きだなんて言い切れるまで勉強と向き合ってきたってことなんだから」


 頭の出来が違うとか、そんな言葉だけで終わらせていいやつじゃない。

 もちろん、世の中のどんな分野においても、天才とか呼ばれるような人はいるんだろうけど。

 それでも、その才能を使いこなすのには、努力だか、修練だかが必要になるんだろう。それを無視はできないし、していいことでもない。

 

「……べつに、私は勉強が好きでやっているわけではありませんが」


「そうなのか」


 あんなに語ってたし、てっきり、好きなのかと思ってた。

 

「つうか、好きじゃないのにそれでも続けられる、しかも、結果も出してるって、そっちのほうがすごいだろ」


 好きこそものの上手なれとかっていうのは聞くし、わかる話だけど。

 実際、俺は勉強とかそこまで好きじゃないし、それで、今のこの状態なわけだからな。

 こんなこと、同じ学生なら誰でもしている程度のことだって言うかもしれないけど、それでも、白月が努力しているってことに変わりはないわけだからな。

 

「褒めてもなにも出ませんよ」


「いや、そこは素直に受け取っておいてくれよ」


 俺がどんだけひねくれてると思ってるんだよ。感謝されるようなことじゃないしな。

 

「大丈夫ですよ。真田くんも勉強を好きになると思いますから」


「そうか? ていうか、やっぱり、好きなんじゃねえか」


 そりゃあ、好きかどうかにかかわらず、学生の間は――あるいは、社会人になったとしても――しなくちゃならないことなんだから、どうせなら、好きになったほうがいいだろうってことはわかるけどな。

 

「真田くんは武術を十年以上続けているんですよね? ご実家が道場だということを鑑みても、それは、継続する力があるということです。大丈夫です。多少、好きになれなくても、その程度であれば、私が引っ張り続ければ済む話ですから」


 そんな心強い言葉をもらった。

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