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親友が好きだと言っていた女子に告白された  作者: 白髪銀髪


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告白とかに対するスタンス

 白月とはたしかに同じクラスで席も前後、最近じゃあ一緒に帰ったりもしていたけど、他の交友関係がまったくないとか、ほかに誰とも話さない、みたいなことはない。

 白月がどうかは、まあ、クラスの女子から遠巻きにされすぎてるってこともないみたいだ。周囲にも人が少ないって意味なら、そのとおりかもしれないけど。

 一緒に下校することに関しては、白月は最初、迷惑をかけるってことで渋っていたけど、爽司が毎度、一緒に帰ることができていて嬉しいみたいに話すから、最近じゃあ、なにも言わなくなっていた。それが、俺が一緒だとしても。

 その日は爽司がクラスメイトと遊びに行くっていうから、俺は白月と二人で帰ることになったんだが。


「真田くんも友人は少ないんですか?」


「そうだな。積極的に関わろうと思ってはないかもな」


 べつに、一人でいることが好きとか、そういうことじゃないとは思ってるけど、実際、クラスメイトとかとどこかへ遊びに行くってよりは道場で汗を流しているほうが好きだからな。

 教室内とかでは普通に話もするけど、休日にわざわざ遊びに行く、みたいなことはない。

 

「白月は、こんな風に普通に俺と下校していていいのか? 呼ばれてるとかって話が聞こえたりしたけど」


 あとは、手紙をもらっているとか。

 

「なにか、問題があるんですか?」


「なにかっつうか、それって、告白の呼び出しとか、そういうことじゃないのか?」


 それなら、相手は待ってるんじゃないかと思うんだけど。

 

「そうかもしれませんが、私がわざわざ行かなくてはならない義理もないと思いますし」


「義理って……」


 そりゃあ、白月にも予定があるんだろうし、急に呼び出されても困るっていうのはわからないでもないけど。

 おそらく、家に帰っても、とくにこれといった用事があるわけじゃないんだろうなっていうのは、こうして、毎日一緒に下校している俺だから、なんとなく、察しているってだけで。

 

「そもそも、真田くんはラブレターなんていうものでの呼び出しを、本当に信じているんですか?」


「は? あ、いや、信じるもなにも、実物をもらってるんだろ?」


 これのことですか、と白月が鞄から取りしたのを見て、俺も頷く。

 それは、一通とか、二通なんて数じゃなかったが。


「真田くんはチェーンメールみたいなメッセージを信じるほうの人ですか?」


「それって、このメールを何人に送信しないと不幸が訪れるとか、そういう感じのやつか?」

 

 あいにく、俺はさっぱり信じていないし、そんなメールをもらったこともない。そもそも、スマホを持ち始めたのが、つい、このひと月くらいのことだからな。

 

「全然信じてないけど」


「そうですよね。私も同じです。差出人の名前もなく、急に時間と場所だけ指定してそこに来るように呼び出される、いきなり靴箱に入れられている手紙なんて、怪しくてとても信じられるものではありません。それに、面識のない相手にいきなり好きだとか、付き合ってくれとか言われても、そんなことはできるはずもないと、わかりそうなものですが」


 まあ、実物としてある手紙だから、開けたらウィルスに感染して、なんてことにはならないだろうけど。

 

「さすがに、学校でそのまま捨てたりなどという真似をしたりはしませんが、だからといって、放置していることもできませんから」


 白月が今見せてくれた手紙だけだっていうなら問題はないだろうが、おそらく、これが初めてってわけでも、これからはないってことにもならないっていうことは、白月もわかっているんだろう。俺でさえ、簡単に想像できたくらいだからな。

 

「そして、一つに答えたなら、残りもすべて答えなければいけなくなります。あいにく、私の身体はひとつしかありませんから、そんなことは不可能です。時間と体力がいくらあっても足りません。相手の方も、手紙を無視するような無礼な人間だとわかれば、それ以上、関わってこようとも思わないでしょう」


「そういうもんなのか」


 それが白月の処世術だっていうなら、それでいいんだけど。つうか、俺に口出しできることじゃないし。

 まあ、返事を書く紙とか、ペンだって、無料じゃないからな。相手は一通だけだからいいかもしれないけど、それを数十通ともなると、手も疲れるだろうし、全部に返信はしていられない。かといって、いくつか選んで、なんてことになると余計な面倒になることは目に見えているし、だったら、最初から全部に返信しないって決めてるってことか。

 直接告白に来るようなやつには、その場で受け答えすればいいし、そっちは、数秒程度で済む話だからな。

 手紙を書くほうには書くほうの大変さがあるのかもしれないけど、受け取るほう、答えるほうにも苦労はある。

 ともすれば、返事をするほうが大変だっていうのは、実際にその立場になってみないとわからないことなのかもしれないな。

 

「それって、いろんなところから恨みを買うんじゃないのか?」


 たとえ、それが逆恨みと呼ばれるようなものだとしても。


「そうかもしれませんが、どうしたって、禍根は残るでしょうから、私にできることはそれしかありません。それとも、真田くんは、こんな風に告白してくるようなどなたかと私が付き合えばいいと思っていますか?」


「そうは言わない」


 実際、白月に悪いところはないだろう。誠実さっていう意味なら、答えるほうが正しいのかもしれないが、同じ誠実さを求めるのなら、手紙なんかじゃなく、直接告白してこいって話になるからな。

 そして、それで恨まれたりして、直接的にしろ、間接的にしろ、白月が攻撃されるようなことになったとしても、白月に悪いとこはないっていうのは変わらないわけで、それでも白月になにか言ってくるようなやつらは、当事者じゃないから好き勝手言えるだけだ。

 

「私が冷たい人間だと?」


「それは、まだ、俺も付き合いは浅いからわからねえよ。こんなせいぜい、数週間、一か月程度一緒になったってだけのクラスメイトに対して出せるような判断じゃないだろ」


 どれくらいの付き合いになればわかるのかとか、明確な答えのあるものでもないけど。 

 それこそ、白月が言っていた、どんな相手なのか知らないのに付き合えないっていうのと、同じような理屈だ。


「まあ、学校でもこんな調子で話してたら、親しい相手はできにくいだろうなとは思うけどな」


「そう言われても、困りますけどね」


 世の中には、キャラクターを作りきって接するやつもいるが、白月がそういうタイプじゃないことはわかる。さっきの、告白に対するスタンスとかからもな。

 

「それにしては、あっさり……」


「とりあえず、真田くんのことは敵だと思っているわけではありませんので」


 それは、光栄だって言えばいいのか?

 実際、白月に告白するつもりなんてものは、持ち合わせていないわけだが。


「……もし、時間が経って、相手の為人をなんとなく知りつつあって、誠実に告白してくるような相手だったら、付き合っても良いと思ってるってことか?」


 爽司がふられることを、良しと思ってるわけじゃない。もちろん、幼馴染として、透花とくっつけばいいと応援してはいるけど。

 それは、爽司が白月に告白することを止めるとかってことにはならないからな。


「普通はそうではありませんか? もちろん、相手のことを好きだという気持ちがあればですけれど。それとも、真田くんは違ったりするんですか?」


「いや……」


 それは、いままで、異性からそういう、愛だの、恋だのって告白をされたことがあるわけじゃないから、創作物の中では多少、見たりしたことがあったとしても、実際にそのときになってみないとわからないっていうのが、本音だな。

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