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第7話 その他のメンバーはいきなり大ピンチになっちゃいました!?

一つ一つの物語という名の線が、一つに交差する。交差した点が、終局を奏で始める。

これはその一つの線である。

シオン編(1)


 私はシオン。突然だけれど、私は、ケンゴさんが好きだった。いつも、言い方は悪いけれど難癖を付けては、人を否定するみたいな性格に見えるちょっと意地悪な人。けれど、妹のアイナちゃんを見ていると分かる。。。本当はとっても優しい人。だからこそ、ずっと惹かれていた。

 けれど、私はダメだ。いつも引っ込み思案で、皆で集まってもうしろーの方にいてしまう。だからなのか、シンジさん、いっつも私のこと、その他ってまとめる。。。ヒドイなぁ。けれど、それもしょうがないと思ってしまう。そんなに、みんなと頻繁にやりとりしているわけではない。見た目も。。。髪だって、綺麗とは言えない小麦色。ボサボサの髪を後ろで無理やりまとめてる。ユキトさんに言われて始めた、ピンクの大きめなメガネフレームを付けてみたけれど、ケンゴさんはこっちを見向きもしてくれない。(ユキトさんのオタンコナス!)

 そんな、私だからこそ分かる。ケンゴさんは、きっと、いつも先のことを考えている。だから、あんなふうにいなくなったのも、きっと理由がある。。。だって、いつも先のことを考えている。そんな人だから。私がそう、信じた人だから。

 だからこそ私はっ!私はちゃんとクリアして、ケンゴさんを探すっ!


 仮面の少女さんたちから、閃光が走って。。。目がハッキリしてきた。よしっ、いざっ!仮面の少女さんっ!と、思って辺りを見回したら、あれ。。。それから。。。私はなんで、こんな街なかにいるんだろう。。。?

 変な感じ。。。街の人たち。。。ずっと同じところを行ったり来たりしてる。。。

 あ、そういえばカードは。。。。バインダーって。。。あっ、視界になんか見える、これか。カード番号と、なるほど、ヘルプもあるんだ。。。意外と便利。。。おっ。。。

 気になる単語がある。【能力】?個人により様々な能力が付与される。【能力】は一人につき【1つ】かあ。私の場合は。。。【聖なる歌(ホーリーソング)】?歌うの?。。。私。。。あんまし歌は上手じゃないけど。。。まぁいっか。誰かと合流したときに聞いてみよう。


 改めて街の風景を見やる。やはり、変わったところはない。変わったところというか、変な人の行列以外は特にない。

「うーん。。。」

 とぼとぼ歩きながら、通行人の近くを歩いている内に、そんな変な通行人たちを、私と同じく眺めている人を発見する。

 きっと、シンジくんがその他ーとか思っていたであろう、私と一緒に後ろの方にいた1人、スバルさん。

 もしかしたら、協力してくれるかもしれない。私は、スバルさんに小走りで追いかける。

「スバルさーんっ!1人ですか〜?」

「おっ、誰かと思えば、シオンか。ちょうど良かったよ。この人たち、話しかけても全然返事をしてくれないんだ。」

 どうやら、この人たちに、声をかけていたみたい。。。私なら絶対、会話を試みようとは思わないというけど。。。


 スバルさんは昔から何処か人とはズレてる。ズレてる。。。というか、変わった人?って感じの人だったなかな。。。

 中学校の時、授業中に出てきたゴキ◯リを素手で掴んで、そのまま教室の窓から逃がしたり、授業でもないのに、カエルを捕まえて解剖始めたり、ケンゴさんの話しだと、釣りに行くのに釣り竿持っていかないとか。。。。

 そんなスバルさんにしか出来ない、このババ抜きさんをクリア出来る道があるかもしれない。。。と、少しだけ期待してみたり、しちゃったりしていいのかな。。。。

「シオン、この通行人たち、なんか変じゃない?」

 私は、「うーん、やっぱり駄目かも。。。」と少しトホホと思ってしまう。

「変だとは思うよ。ずーっと向こうまで行って、おうちにも帰らずまた同じ道を通ってるし。でも、それは」

「いや、そうじゃないよ。」

 私は、食い気味に言葉を遮られる。

「この通行人の中に、()()()()()()()()()()がいることが、だよ。」

 私は、素直に驚いた。そのままスバルさんをパッと振り向く。

「つまり、こういった仲間はずれを探すのも、このゲームの1つなんじゃないかってことさ。」

「。。。つまり。。。その人が、カードを持ってる。。。?」

「可能性があるってこと。」

 スバルさんは決め顔でそう言った。

 そして、スバルさん、トホホと思ってしまってごめんなさい。。。


「なるほどねぇ。そういうふうに出来てるんだねぇ。このゲーム。」

 私もスバルさんも喋ってはいない。分かったような口振りで、とても上から物を言うような言い方に感じる。

 私たちの後ろにもう一人誰かいる。私は、スバルさんと2人で同時に振り返る。

「よっす。僕でした。」

 後ろの方にいたのは(おそらくシンジさんの言うその他の最後の一人)、ライトさんだった。

「ライトじゃないか!」

 スバルさんが振り返ったと同時に笑顔を向ける。


 ライトさんは男の子だけど、いつもおかっぱ頭。目は、いつもキツネみたいに細くて、瞳を見たことがないかも。身長も男の子たちの中では低いかな。学生時代もずっと、1人でいたところを、シンジさんに声をかけられてから、今のグループで行動をするようになった。けれど、私やスバルさんより更に後ろにいつもいる気がする。シンジさんとは話すけど、それ以外の人とは余り話しているのを見たことがない。


「ライトもここにいたのか!」

「うん、ずっといたよ。()()()()()()()()()()。」

 ライトさんは、細い目を更に細くしたように、満面の笑みで、スバルさんに答える。それに対して、スバルさんが、右手を上げながらライトさんに歩み寄る。

 けれど、そう言うライトさんは何処か空気が冷たい。言い知れぬ不気味さを感じる。

「スバルさん、待っ。。。」

 待って。。。私がそう言い終える前に、スバルさんの右手が宙を舞った。

「ぐあっ!がぁぁぁぁぁっ!」

 スバルさんが悲痛な叫びを上げる。

「スバルさん!?。。。きゃっ、きゃぁぁぁぁぁ!」

 何が起こったのか分からなかった。突然、スバルさんの右腕が肘のあたりから、刃物で切られたように、スパッと切れて無くなった。

 私はスバルさんの右腕を見て恐怖する。スバルさんは、無いはず右腕のあたりを、左手でさするように撫でるような動作をする。

「っ。。。っ!」

 スバルさん。。。私は、恐怖と、スバルさんの悲痛な声に取り巻かれてしまい、私の声は完全に塞がれてしまう。数秒も経たぬ内に、私たちの後方からゴトッと嫌な音が耳障りに聞こえてくる。

「ぐぁぁぁぁぁ!」

 叫び続けるスバルさんに、ライトさんは右手で胸ぐらをつかむと、少しだけ、顔色を歪ませる。

「そうやって、いつまでも叫ぶのは男らしくないんじゃないのか?あぁ?スバル?」

「ぐぅぅぅぅっ!」

「たしか、高校の時言ってたよな?男がグチグチと小さいことを、いつまでも言うなあ、とかなんとか?」

「ぐぅぅぅぅっ!」

 スバルさんは痛みに堪えているように、悲痛を我慢するように、歯を食いしばっている。

 そんなスバルさんなどお構いなく、ライトさんは苛立ちを募らせているように見える。

「だぁかぁらぁ!」

 そう言いながら、ライトさんは、片手のものすごい力で、そのままスバルさんを上空へ投げ飛ばす。そして、ライトさんの左手にプラズマのようなものが発生すると、(つるぎ)の形を形成する。飛ばされたスバルさんが落ちてくると同時にライトが叫ぶ。

「五月蝿いって!言ってんだよぉぉぉぉぉ!」

「やめてえぇぇぇぇぇ!!」

 私が、なんとか振り絞って出した声も虚しく、スバルさんの身体は、胴体から真っ二つになると、解像度の荒いテレビのように、モザイクがかかっているかのように、デジタルな血しぶきを上げながら消えていった。

 近くにいた私は、中に舞う鮮血とは逆に、目の前が真っ白になるのを感じた。

 もう、何も、考えられなくなった。

 そのまま、ライトさんはプラズマの(つるぎ)の血を払うように、左手を一度振るう。そのまま、私の方を振り向く。

「うん、やっぱり静かな方が話しやすいよね。あと、僕はスバルじゃなくて、キミと話したかったんだ。シ。。。シオン。。。ちゃん。。。。」

「。。。。」

 私はもう、先程の恐怖を拭い切ることが出来なかった。少し前に決意した、ケンゴさんを探すことも、クリアを目指すことも、頭の中がどんどん真っ白になっていくことが、自分でも分かる。

「シオンちゃん、さっきスバルが言ってたこと、覚えてるかな?」

「。。。。?」

「あちゃー。だんまり過ぎるのもどうかと思うよ。ほら、動きが違う通行人ってやつ。あれ、やっぱそうみたいでさ。おれ、そいつから1枚欲しいんだよね〜。スバルくんが消えた分はたぶんCPUが保持していると思うから。」

「。。。。?」

 何故か、ここでライトさんの言葉が詰まる。そして、夕焼けでもないのに、ライトさんの顔が赤みがかっている。

「シオンちゃんが。。。す。。。す。。。いや、一緒にクリアしたいからさ。協力するよ。」

 協力。。。どうしよう。。。怖い。。。でも、逆らえば確実に私もスバルさんみたいに。。。

 そう思っているうちに、ライトさんは唐突にバインダーを見る仕草をする。

 「さっき、スバルから貰ったカードは『1』だけど、いる?」

 私が持っているカードは『5、3、1、Q、10』の5枚。『1』を貰えば消せる。。。スバルさんのカード。。。でも断ればどうなるか。。。

「必要。。。です。。。。」

 私がそう答えると、ライトさんはキツネのような細い目で笑顔を作り、右手を差し出してきた。

「大丈夫。君の腕をいきなり切ったりしないよ。僕は、昔から彼が嫌いだったんだ。それだけだよ。」

 私は、ライトさんに対する気持ち悪さで吐きそうになるをぐっと堪える。

「。。。。嫌いってだけて殺していい理由にはならないよ。。。」

 私の答えに、ライトさんは少しだけピクッとしたけれど、笑顔を崩さないまま腕をぐいっと私の方に差し出す。

「なんか、突然目覚めちゃったからさ。人類最強みたいな?あの仮面の人たち、たぶん後悔するんじゃないかな。僕たちにこんなことしたの。」

 私は、ライトさんをこれ以上刺激しないよう、ひとまず両腕をタッチした。ライトさんがとても顔を紅潮させていたことは気になったが、私は、バインダーを確認する。

 ライトの言う通り、今、私のバインダーに『1』が入った。

「。。。スバルさん。。。ごめんなさい。。。消去します。」

 軽い電子音が頭の中で響くと、私の視界に映る数字は、残り『5、3、Q、10』となった。ライトさんを見ると細い目のまま、少し困った表情をしながら、踵を返す。

「そこは、僕にありがとう、じゃないのかな?まあ、僕は、心が広いからいいよ。君にだけ、だけどね。」

 ライトさんの、視線の向こうに見えるCPUを指さして、顔だけ軽くこちらを向く。

「さて、スバルが言ってた、CPUの中でも違う動きをするCPUを探さないとね。ひとまず、2人でデートしながら、観察しようか?」

 私は、今の私は恐怖に怯えて、もう何も、考えられない。。。


 誰か。。。助けて。。。


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