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第14話(最終話) シンジたちは狐面をやっつけることにしちゃいました!?

一つ一つの物語という名の線が、一つに交差する。

物語という名の線が、一つに交差し、


交差した点は、終局を奏で始める。

シンジ編-真実-(1)


「この世界がVRMMO!?」

 俺は驚くと同時に、思わず声に出してしまう。

「そうだよぉ、ちょっとネタバラシが早かったかなあ笑」

 突然現れてそんなことを言ったのは狐面の女性だった。長い持ち手の先に大きな鎌と、刺突出来そうな短剣のようなものが付いている大鎌を片手で軽々と持っており、刃の色は血のように赤黒く、見ているだけで気味が悪い。そんな大鎌をゆっくり回して構える、狐面の服装は、淡い卵色で、アズサと同じように着物を着崩している。狐面で素顔は見えないが、妖艶に感じるそのスタイルと口元に合わない一人称に、場の空気も読まずに一人生唾を飲む。

 それはともかく、この感じは。。。。

「フルダイブ型の仮想現実(VR)で世界中の複数人が同時に参加できるオンラインゲームってやつだね♪」

 狐面が説明してくれた。仮想現実(VR)に俺たちはいる。一体いつ、俺たちはゲームの世界に入ったんだ!?けれど、身体能力の向上や特殊な【能力】など、現実ではありえないことが起こっている。ゲームであれば、これらが全て説明できる。俺は、狐面に問いかける。

「仮にVRMMOだとして、俺たちの身体本体は今どこにある!?」

 俺の質問に狐面はくすくすと冗談交じりに笑うと、とても快活に答える。

「そんなこと、君たちに教えると思う?」

「くっ。。。!」

 俺の質問に全く答える気のない狐面に、苛立ちを覚える。突然現れたことも含めて、こいつは謎だらけだ。口を割ってもらいたいが、暖簾に腕押しのように、何を言ってもふざけた回答しか返ってこない。

 一方で、アズサは青筋を立てながら首を横に振っている。驚いている様子もあり、自分が仮想世界にいることを知らなかった様子である。アズサは、暗い顔のまま、小さく口を開く。

「私は。。。、じゃあ。。。、なんなの。。。。2号。。。。」

 その言葉に、2号呼ばれた狐面は、「やれやれ」と愚痴をこぼしながら、左手を腰に当て、右手で指を指す。

「そういえば、3号は知らなかったんだっけ。ボクたちが誰なのかとか、この【組織】が作られた理由とか。なんでこんなことやってるのか、とか。」

 ユキトが言っていてた特別な事情。。。、アズサは狐面の一人だったのか。けれど、あまり事情に詳しくない様子だ。だから、ユキトと共に来ることになったのかもしれない。そういえば、ここへ来るときに、アイナとアズサのお喋りが聞こえてきた中で、そんな話をしていたな、【組織】がどうとか。

「まあ、これから死ぬ人たちには関係ないかなあ。そう思うでしょ?3号も♪」

 そう、言い終えると、明らかな殺気を感じる。アズサは3号と呼ばれても返事はしない。完全に意気消沈している。

 狐面はババ抜きをする様子は無さそうだが、俺は質問を続ける。

「いちおう聞いておこう、お前、ババ抜き用のカードは、持っているのか?」

 狐面は再びクスクスと笑いながら口を開く。

「そこはゲームに則って、ちゃんとボクも持ってるよ。ボクからカードを奪ってクリア出来るなら、殺される前をオススメするよ。」

 クリアすれば、現実世界に戻れる。現実世界に戻るとは、このVRMMOからログアウト出来るという意味だったのか。まさか、ゲームとは考えつかなかった。感覚と見た目も、本当にそのまんまだ。

 考えている間にも狐面はクスクスと笑っている。まるでピエロのようなやつだが、殺気がどんどん鋭くなっていくのを感じる。

「誰からボクと戦うんだい?なんなら全員一斉にきても構わないよ?」

 そんなことを考えているうちに、ケイジュが矢面に立つ。

「オレ様がお前からカードを奪ってやる。オレ様は次は引かれるターンではあるが、お前を戦闘不能にすれば、全てのカードが全員に分かる。そうだな?」

 狐面は相変わらずクスクスと笑いながら、大鎌の持ち手を胸の谷間にゆっくりと入れる。動きにたぶん意味はない。

「そうだけど、すごい自信だね。キミ1人でボクに勝てると思ってるのかい?」

 ケイジュはニヤリと笑いながら、構える。

「勝てるさ。」

「待て、ケイジュ。」

 俺はケイジュを制止する。

「俺も一緒に戦う。俺に作戦がある。ここは協力しよう。」

 ケイジュがちっと舌打ちをしながらこちらを見やる。

「いいだろう。アイナの命もかかっているしな。」

「いいのかい、ボクの目の前で作戦会議なんかしちゃって。」

 狐面の言うことはこの際無視だ。

「口で伝えなくても、俺たちには分かるのさ。」

 出任せを言って、狐面が少しでも混乱すれば御の字だ。とにかく、時間を稼ぐんだ。アイナたち誰かがクリア出来ると今は信じる。

 そう、誰かだ。誰かがクリアすれば、後は全員を起こせばいい。俺はアイナの方に軽く視線をやる。

「アイナ!ユキトたちとカードを確認し合え!誰かクリア出来たら、俺たちの勝ちだ!」

 アイナは大きく頷く。

「分かった!」

 俺はアイナの言葉を聞いてから、狐面を睨む。そして、そのままバインダーも確認する。俺の能力【能力】である【0】のフルパワー、それは【零】を憑依させること。分かった。

「【零】よ!俺に力を貸してくれ!」

 すると俺の見た目が零の鎧で覆われていく。手には大雑把過ぎる巨大な剣を両手に持つ。けれど驚くほど剣は軽く、零の鎧も重さを感じない。改めて狐面を見やる。その変わった姿を見て、ケイジュが一瞬こちらを見て、また舌打ちをする。

「シンジよ、その格好がお前の【能力】か。」

「あぁ。アイナたちの時間を稼ぐぞ。」



アイナ編(1)


「みんな、今のカードを言い合おう!」

 私が今できること、それはシンジとケイジュくんが戦うことで出来る時間を使って、私たちのカードを確認し合って、クリアの可能性を導くこと。相手はかなり余裕がある。たぶん、あの二人で駄目ならこっちを守ってくれているユキトくんとアズサちゃんが戦うことになる。その前に。

「私が持っているカードは、

『3、4、A、2』

だよ」

 その言葉に、ユキトくんがはっとした顔でこちらを見やる。

「おれが持っているカードは

『6、3、Q、7』

だよ!」

「あたしが持ってるカードは

『7、5、A、2』

だよ」

 アズサちゃんも続けて答えてくれる。

「「『2と3 』だ!」」

 全員が、口を揃えて声に出す。

「分かった、順番に引くんだ。」

 ユキトくんが私たちに的確に指示をだす。まずは、私がユキトくんから『3』を引く。次に私はアズサちゃんからカードを1枚引かれる。そして、また私がアズサちゃんから『2』のカードを引く。これで、私が消去すれば私はクリアになる。

 シンジの伝えたいことは、私に十分伝わっている。誰かがクリアして、この世界、VRMMOから抜け出す。そして、目が覚めた現実世界で、他の誰かを全員起こせば良い。

「みんな、安心してね!すぐに起こすから!」

 私はユキトくんとアズサちゃんに声を掛ける。アズサちゃんだけは暗い顔をしている。

「大丈夫だよ、私、ちゃんとアズサちゃんも探してみせるから。。。。」

 アズサちゃんは暗い顔のまま、静かに苦笑いをする。私は、バインダーのカードを確認して言い放つ。

「消去!」

 その瞬間、私の身体は金色に輝き、目の前に「Clear」の文字が浮かぶ。その後すぐ、目の前が、真っ暗になった。

 身体がずしりと重く感じる。VRの機材であろうヘルメットのようなものを被っているし、何やらカプセルの中にいるようだ。私はヘルメットを取り、カプセルから出る。何処かは分からないけれど、他の皆も同じようにカプセルに入って並んでいる。

「お兄ちゃんがいない。。。。」

 ざっと探してみるが、お兄ちゃんのカプセルがない。また、アズサちゃんのカプセルも、狐面の人のカプセルも見当たらない。ただ、空のカプセルが一つある。これにお兄ちゃんが入っていたのなら、無理矢理出されたのかしら。また、先程、仮想世界で殺されたはずのライトくんを確認する。

「良かった、まだ息はあるわ。」

 中では殺していてもこっちの世界では死んでいないみたいね。ひとまず、カプセルの線を引っ張り抜く。

「いけない、他のみんなも起こさなくちゃ!」

 アズサちゃんが一人になってしまうけれど。。。。 「シンジたちが、あの狐面を追っ払ってくれていればいいのだけれど。。。。」

 ひとまず、シンジ、ユキト、そしてケイジュ、スバル、シオン、コウヤとケーブルを引っこ抜いていく。そしてら一つしか無い扉の向こうへ行くことにする。

 鉄で出来た頑丈な扉は思ったより軽く開けることが出来た。そこにも、カプセルが一つ。名前が刻まれている。「a ka ne」アカネ?誰だろう。狐面の一人かもしれない。中は良く見えない。更に奥へ続く扉があるので、行ってみる。そこにも2つのカプセルがある。

「botan と、miku 。。。」

 ボタンのほうは知らない顔だったが、ミクのほうは、アズサちゃんにそっくりだった。

「このカプセルがアズサちゃんだ!本当はミクちゃんだったのね。。。。」

 ボタンも一旦そのままに、ミクちゃんのカプセルのケーブルを引っこ抜く。

「これで全員現実世界にもどってこれたはず」



シンジ編-真実-(2)


「うおぉぉぉぉぉ!」

俺は叫びながら、狐面に向かって振り被る。狐面は大鎌で弾くと、俺の懐を狙ってくる。しかし、そこにケイジュがその動きを読んでいたかのように、フォローして殴り抜ける。

「何やってやがる、シンジ!」

「すまない、助かった!」

狐面がクスクスと笑いながら、俺の方へ攻撃をしかけて来る。俺は、それを剣で受け止めていたら、狐面はそれを大鎌で剣の方向を逸らせて、軽くいなす。再びケイジュが攻撃でフォローしてくれたので、そこに更に俺がフォローに入る。子供の頃にやったやつだ。

「「衝破十文字!!」」

 俺とケイジュの二人で十文字を描いて攻撃する。狐面にはダメージはあるが、致命傷では無さそうである。狐面が初めてクスクス笑いをやめているのが分かる。

「ふーん♪けっこうやるじゃんっ。。。♪」

「間髪入れずに行くぜ。」

ケイジュはそう呟くと、ライトの時と同様、懐に飛び込むと、右足が地面にめり込むほど力を込めた。

「【必殺の槍】」

 ケイジュの鋭い左足が狐面の腹部に刺さる。浮いたところに、俺は空中の狐面を睨む。すると【0】の能力で見える浮遊霊が鋭い爪を持った腕に変わる。そのまま俺が左手を振り下ろすと鋭い爪痕を空中に残しながら狐面を切り裂く。縦・横・縦と、切り裂き、俺は高くジャンプすると、剣が光輝く。

「【零魔人剣】!!」

そのまま空中で剣を振り下ろし地面まで光の尾を引きながら叩き落とす。

 地面に叩きつけられた狐面は、完全に意識を失い、その場に転がった。

 仮面が割れ、そこに見える女性の顔は仮面でガードされていたため、無傷であり、とても美しい顔をしていた。

 そう思った束の間、身体が、バグったようなモザイクがかかり始めた。しばらくして、ライトやケイジュも同様にモザイクがかかり始めた。

 ユキトは「何があってもアズサは見つけてみせるから」と言っていた。


 気がつけば身体がずしりと重く感じる。VRの機材であろうヘルメットのようなものを被っているし、何やらカプセルの中にいるようだ。

「よっこいせ」

 ちょっと年寄りくさいセリフを吐きながら、ヘルメットのようなものを取り上げて、カプセルから抜け出してみると、そこにはカードゲーム屋に来たメンバーがほぼほぼ揃っている。

「ユキト、無事か?」

「なんとかね。なんか身体が重く感じるけど、早くアズサを見つけなくちゃ。。。!」

「ぱっとみた限りではここにはいないな。それにアイナがいない。奥の扉が空いてるから、そっちのほうか。」

「まさか、ゲームとはな。。。、がっかりだぜ。」

そう言いながらケイジュがカプセルからでてくる。俺はケイジュにニヤリとしながら口を開ける。

「オレ様は早くも卒業だな。」

「うるせえ。それよりもアイナを探しに行くぞ。」

「アズサもね。」

 ユキトが起き上がってこちらに来た。

 俺たちはアイナが進んだであろう、開いている扉の先へ向かう。


 扉を抜けたらカプセルが一つある。カプセルに近づいてみると、「a ka ne」と刻まれている。中は見えないので、アイナもスルーしたのであろう。そのまま次の部屋に行くとアイナが何かのカプセルのケーブルを引っこ抜いていた。なるほど、おれたちのカプセルもあぁやって引っこ抜いて助けてくれたのか。

「アズサ!」

 俺が確認するより先にユキトが走ってカプセルのもとへ行く。よく見ると、確かにアズサにそっくりな出で立ちである。

 ユキトが駆けつけたことに驚いている、アイナもこちらに気付く。

「ユキトくん!シンジも!みんなちゃんと目が覚めたんだね!」

 少し涙ぐむアイナ。おれはそれを見て、グッジョブと右手の親指を立てる。

 そして、アズサがカプセルの中で、頭に付いているヘルメットを重そうに取ろうとしている。一生懸命にあずさがヘルメットを取ってカプセルを開ける。

「アズサ!」

 思わずユキトが叫ぶ。

「ユ、キト、ユキト。。。!」

 カプセルから這い出てきたアズサがユキトに抱きつく。ユキトはアズサがよろけていたので、しっかりと受け止めた。

「ユキト、アズサ、よかったな。」

 アイナに続きアズサも涙ぐんでいる。そういえば、ライトたちはどうなったんだろう。

「アイナ、ライトは無事だったのか?」

 俺の質問に、アイナもグッジョブと言わんばかりに右手の親指を立てる。それを見て、ひとまず大丈夫だったことを確認する。しかし、ケンゴの姿は無かったように見えた。

「アイナ、お前の兄貴。。。、ケンゴは。。。?」

 それを聞いて、アイナは首を横に振る。そうか、ケンゴは見つかっていないのか。既に開いているカプセルは2つあった。一つはアイナ、もう一つはケンゴだとは思ったのだが。。。。

 そう思った矢先、ユキトがアズサを抱きかかえながら、手を挙げる。

「ケンゴなら、おそらく店の外だ。あいつ、一番最初にデモンストレーションでこっちに戻って来たんだ。だから、気を失ったまま、というか、生気?を吸われて、意識がないまま店の外に放り出されたらしい。」

「そうなのか。であれば早くケンゴと合流しよう。」


 ケンゴと合流して、このVRMMOを何故行っているのか、生気を吸い取って何をしようとしているのか。巻き込まれた以上、俺たちはこのゲームを終わられる義務があると思う。


 そう、俺たちの戦いは、まだまだこれからだ。








かなり、無理やりですが、ここでこのお話は終わりです。

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