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蔵の中から
まさか風に飛ばされたか と、あたりをみるがどこにもおらず、こどもが隠れたり落ちたりしそうなところもない。
すると、蔵の上のほうにある小さな窓から、こどものわらいあう声がもれてきた。
ああ、蔵にはいって遊ぶことにしたのか
ひょいとむこうをみれば、たしかに蔵の重そうな戸がひらいてゆれている。
このごろどうも、おかしな《ふしぎ》にあうことが多いヒコイチは、首のうしろをかいてわらってしまった。
寒気がしたわけでもねえのに、うたがっちまったなあ・・・
背負子をかつぎなおし、先をいそいだ。