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オトメちゃんがくれた桃
「 ―― のぞいた行李のなかに、オフクちゃんはおりませんで、ただ、 ―― 乾いてかたい、《桃の種》だけが、ひとつ。 ・・・オフクちゃんが食べた《桃の種》だとおもったら、なんだか泣けて泣けてしかたがなくなって、・・・家にいる親にそれを届けたといいますが、・・・そこはもう覚えておりません」
『 山にある桃は、《山神様》のものだから、
バチをこわがって、村のモンは口にしなかったんです。
―― それが、うちのばあさまが―― 、 』
『 その種を《もらったこども》はな、
たしかあの《地蔵婆さま》だ 』
その種があったから、この桃がある。
ヒコイチは懐をおさえた。
そして、―― この桃は
『 オトメちゃんが 桃をくれるの 』
「・・・ちがいねえや・・・」
こどもの言い間違いではない。




