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帰り道
なんだか風の音で寝付けない。
元締めの家の裏にある木々が揺れる音と、家をなでるように風が抜けてゆく音で。
それほど新しくもない家だが造りはしっかりとしていて、ヒコイチのすむ長屋のように、強い風で戸がひどくゆれるようなこともない。
なのに、風音が気になる。
「 ―― なんだってんだ、」
起き上がり、帰ることにした。
ここにいると、風の音だけで今日のできごとが何度もおもいだされ、落ち着かなくなる。
ヒコイチがいとまを告げると、元締めはあきれたように、まあ気をつけな、と布団から出ることもなく言った。
提灯は風でゆれるが、こどもの手はあらわれない。
気づけばもう、あの蔵が見えるところまできてしまっていて、あの石を、――
「 お、 おお・・奥様、こんな夜中に・・・」
「ああ、お待ちしておりました」
石からたちあがり、老婆が腰を折る。
あとは明日あげます。
短いはなしなので、あと数回で終わりです。。。。




