桃の種
たまにはこの時間にあげようかと。。。。果たして目をとめてくださる方がいるのか・・・・
あやしい《てづま》をつかう元締めにも、割れた皿はさすがに戻せず、箱の中のそれと、新しい皿とを取りかえる。
先に『謝り』のつかいをもらっていた元締めは、やっぱり《地蔵婆さま》だったか、とヒコイチのはなしにうなずいた。
「・・・おれが、いきに会ったのは、そのオフクちゃんだったみてえだ・・・」
懐に残った桃をおさえるようしてうなだれるのをながめ、元締めは髭をよじり、腹の位置をなおすように、なあ、ヒコさんよ、と座りなおした。
「 ―― この世には、きっと、おれたちとはちがうモンも居て、それは、おれたちとはちがう理をもってるんで、こんなことが、おこるのかもしれねえなあ・・・。ヒコさんがそんなに気を落とすこたアないさ、 ほら、この桃の種、村の『こどもが』もらったおかげで、みんなが食べられるようになったって話なんだが、その 種を『もらったこども』 はな、たしかあの《地蔵婆さま》だ」
ヒコさんが帰ってから思い出したのよ、と桃のはいった籠をみやる。




