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山神様(やまがみさま)と桃のはなし  作者: ぽすしち


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22/32

生えた手に



  「 ああ、 ―― そこかい 」



  

 提灯で、ぼう、と照らされる蔵の白い壁に、すくうように両をあわせたこどもの手が、

     


       ―― 生えている。




 雲がきれたのか、月が、なまこ塀より少し上に出る、その、白くちいさなものを照らす。



 寄って見た『つくりもの』のようなそれには、しっかりと小さな爪があり、ヒコイチは、ぐっと奥の歯をかみながら、その手を下からささえ、懐から桃をとりだした。



 ふれたこどもの手は、柔らかいのに、やはり、ひどく冷たかった。





   「 ―― こりゃ、オフクちゃんの分だ」

 


 合わされたちいさな《くぼみ)に、桃は きれいにころがりおさまる。

 



 小さな手が桃をだいじそうに包み、その両手をヒコイチの手が包むと、指の間を水が流れ落ちるような感触の後、


    ―― なにもなくなった。






 しばらく動けなかった男は、ようやっと息をはき、息を吸う。



 蔵をみあげてみるが、月に照らされたその壁の、もうどこにもなにも現れず、提灯を持ち直したヒコイチはしかたなく、元締めの家をめざすことにした。







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