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フクとトメ
「 ―― 姉妹の・・妹さんの方・・・《オトメちゃん》が、いなくなっちまったんですか?」
ヒコイチの、力のない声に顔をあげた当主が、よく名をごぞんじで、と膝をうち、「 うちのばあさまが、『トメ』ですよ 」と驚く。
「 え? 」
「 いや、いなくなったのは姉のほうで・・・、フクという名でした。 おれは信じちゃいないんですが、うちではオフクは神隠しにあった、といわれてるんですよ。 なんでも、ばあさんと遊びに出ようとしたところで、先に外にでてた姉さんのほうがいなくなった、っていうんですがね・・・。 オトメばあさんはそのころまだ五つなんですから覚えてるのもあやしいんですが、『 道に立ってた姉さんが 風がふいて連れてかれるのをみた 』なんて、いまでも騒ぐんで」
そうすると、オフクちゃんはどこだ、と急にとりみだし、家人におさえられることになる。
「 ―― 桃を、見にいこうって約束してたらしくて、この季節になるとよけい思い出すんでしょうな」
「桃を『見に』?」




