神隠しか 人さらいか
「 はい。あのとおり、いまもああして道端に座り込んで、『ここを通ることもあろう』などといいますが、この道を《山の神様》がとおるなんて、それこそばあさまがこどものころ、この村で二人のこどもがいなくなったときのはなしでして。 ほら、そういうのを昔は『神隠し』なんて言っておりましたでしょう? この道は、今はちがう道ができたので人の通りもあまりないようにみえますが、むかしは山をこえて旅の人がとおる道でしてね。 ―― きっといまで言う『人さらい』にあったんでしょうな」
そこで廊下のほうから、旦那様、と声がかかり、下女からなにか手紙を二通うけとった主人がひとつをヒコイチにさしだした。
「 《ホテエさん》のところからもどったのが、お手紙を預かってまいりました。 品はやはり、買い取らせてもらえませんで・・・」
すまなそうにさげる頭をヒコイチはあげてくれといい、「そ、それより、その、いなくなったっていう、」と、はなしをもどす。
ええ、とまた奥をふりかえった主人は、「 ばあさまの姉妹なんですよ 」と、顔をもどした。
「・・・それじゃあ、」
―― いきにあそこに座っていたのは、・・・子どものころの、あのばあさまか?
オトメちゃんが桃をくれるの




