この道で
ヒコイチが、心におもったことがそのまま伝わったようで、年老いた女はまたわらった。
「 『さがす』といっても、―― 《ここ》でいなくなってしまったので、ここを、通るのではないかと、おもっておりましてね」
「この、道で・・・ってことですかい?」
「 ええ。 まあ、この道をとおる『神様』に、連れ去られたので、ここを通ることもあろうかと思うんでございます」
「・・・山の・・神様に?」
うなずく老婆はむこうの山をみて、いつかえしてくれるんだかねえ、とそれほど困ってもいないようにつぶやく。
「 ―― そりゃ・・・・・人が、《山神様》に、連れ去られたってことで?」
こんな、山の中でもない、道端で?
「 そうなんですよ。 ここは神様の通り道なんで、ときおり、この道に一人でいる『こども』を、そうやって連れて行くんです。 ―― でもね、うちの場合は、わたしが、出るのが遅れたのが悪かったんですけどねえ・・・」
「 『こども』!? も、もしかして、女の子じゃねえですかい? この蔵で遊んでる姉妹で、妹を待ってるって、 さっき、 おれがっ、 っつ」
ヒコイチの腕を、老婆がつかんでいた。




