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地蔵婆(じぞうばば)
そこまでじっくりと眺めてしまったものだから、すこしわらいをうかべた顔で、老婆がこちらに頭をさげた。
こちらもあわてて頭をさげてから、もしかすると、どこか加減が悪いのかとおもいあたる。
「その、・・どうかなさいましたかい?」
「いいえ、立てないわけではございませぬ」
ヒコイチの顔をみて、相手は心配しないようにと、立ってみせた。
「 すこし、―― 人をさがしておりますゆえ、ときおりこうして、道をながめておりまして・・・。 村の人たちからは、地蔵婆などと、よばれております」
その呼び名が気に入ってるように、笑う声まで、なんだか上品だった。
人をさがすのに、こんな人通りのない道で?




