からっ風
『西堀の』隠居の友達ヒコイチは商売の品をしいれるため《元締め》のところへゆく。
そのとちゅう、蔵の前で、おさない女の子に会うのだが・・・・。 今回はあまり寒気はしないおはなしになります。
からっかぜがとおりぬけるだけの、なにもない道だった。
そこは、むこうの山からふきおろす『風』のためにあるような道で、いつ通っても風がつよい。
その途中にある豪農らしき家の蔵は、細い面を道の方へむけて建ててあった。
土ぼこりをまきあげる風の通りにあって、裾のほうのなまこ壁にはいいぐあいに年季がはいっているのに、白壁はいやにきれいなままだ。
それがなんだか気になって、ヒコイチはいつもここで足をとめるのかもしれない。
もともとこの道の、『なにもない風景』は、いつも商売する街中よりもなじみがあるようで 足を運ぶのも、しらぬまにゆったりとしたものになる。
ひくい石垣と、砂利が残るゆるい坂道。
この小さな集落は、ヒコイチが商いとしている『流し売り』の品を仕入れるため、その《元締め》のところへゆくときに、必ず通る。




