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掌ですくいあげた物語⑨ 〜にんにく電車から〜

作者: タンザン

乗った車両が にんにく臭かった

月曜の朝の通勤電車

きのうの晩ごはんに 

だれか 焼肉か餃子でも食べたかな


だれかのカラダの中を巡って

出てきた息が

ぼくのカラダの中へはいってくる


まわりにいる人たちは

なんともないようすでいるけど

まちがいなく

吸う息を

吐く息を

共有している


そういえば はじめて

スキューバダイビングをやったとき

水中で

ひとつのタンクの空気を  

ふたり交互に吸う訓練

受けたよなあ

意味なく思い出す



呼吸って ある程度なら

自分の思いどおりになる


いやな臭いがするときには

息をとめたり

きもちを落ち着かせるのに

ゆっくり深呼吸したりする

呼吸のリズムだって

相手に合わせていると

きもちが通じあうって言う


自分が生きていくのに必要な呼吸を

他人と合わせることもできるんだ

なんとも不思議 



ぼくはとかく「場」の空気に感染しやすい

悲しみに沈んだ空気にふれれば

きもちは重くなるし

怒りに震える空気のなかでは

自覚しない怒りが燃えあがる

喜びにあふれる空気に包まれれば

笑顔になり

優しさに満ちた空気によって

心が癒される


こんなぼくの感情って

いったいどこからやってくるんだろう

ほんとに 内なるものの中から

生まれているのかな


満員の電車が駅に着いて 

ぼくはホームへ吐き出された

ひと息つく

呼吸が自分のリズムをとりもどしていく



いつもの人の波にのっていると 

自然と会社へ吸い込まれていく


ここでも 空気を吸っている

いま社内では もっぱら

可視化 見える化の空気が漂う


見えなかったものを 

見えるようにするんじゃなく

見えないものこそ

感じていたいんだけどなあ


となりの洋食屋さんの 

「定食ランチあります」と書かれた旗が ゆれている 

どこからか 風が吹いているんだ

 

おやっ

店先のいつもの場所で寝ている猫が 

ひとつ小さく 息をついた


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