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カピバラさんとやって来た神子  作者: 日和るか
18/19

番外編:異世界人の彼と日本でデート

来日(異世界転移)した彼氏との番外編です

 ルーイが来日(異世界転移)してくれた! こっちで初デートだよ!

 うーん、どこ行こうかなー。


「まずは換金したいんですが」

 そう言ってルーイは手にした布袋の中を見せてくれた。

「ひえっ! なんですか、この眩さは!」

「何って金の装飾品ですが……」

「それは見れば分かるよ。換金したいってどうして?」


「こちらに必要な通貨にする為じゃないですか」

「向こうではルーイに面倒見てもらってたじゃん。私は年上だし働いているからそんな心配はいいのよ?」


「……すみません。これらは国からのセリナへの報奨金で買った物なんです。あちらの通貨は使えないでしょう? こちらの通貨にするなら“金”が一番いいってカピバラさんが」


 カピバラさんは素知らぬ顔でタブレットを器用にスクロールして何やら画像を見ている。おうっふ。このなんちゃって齧歯類め。


「セリナ、ウチから近いのはここだ」

 

 ここはカピバラさんのウチですか? ん? そういや召喚される前に『今日から同居人だ』と言った記憶があるわ。


 カピバラさんが示したタブレットの画像は、貴金属買取店のホームページだった。

「このチェーン店が安心だとどこかで聞いた」

 さすが、蛟時代にあちこちネカフェ放浪していたからか、世情にも明るいわ。


「異世界で得たお前の金だ。不労所得とでも思って新NISAでもやったらいい。なんなら銘柄の相談にも乗ってやれるぜ」


 どこのファイナンシャル・プランナーかな!?

 異世界で神獣になったぬいぐるみは、こちらに逆輸入では投資の神かっ。


「こちらの世界についてはカピバラさんに色々教わったのですが、想像も出来ませんでした。本物の異世界。まるで夢の中にいるようです……」

 

 ルーイはテレビをずっと見ている。言語問題はあちらからこちらへの移転でも適用されたので良かった。さすが女神様。慣れたら、そのうち某夢の国に連れて行こう。


「モカリマッセ商会には世話になったぜ。金のアクセサリーとして型落ちしたものなんかを安く譲ってもらってなあ」

「……ああ、恋人へのプレゼントがそれか?とか訝しがられましたね」


 ルーイはね、“恋人”っていう時少し照れるのよね。可愛いわあ。


「カピバラさん! 金相場を見ててね! NISAも調べといて!」


「どうせ俺は外に出られないからな。任せとけ! FXもしていいか?」


「それはちょっと……」

 やばそう、ってか怖いじゃない。


「ね、今日はルーイの服を買いに行こう」

「僕の?」

「そう、絶対何着ても似合うからね! 選ぶの楽しみだわあ」


 現在彼に着せている一着しかないのだから早急に必要だ。

 ルーイ自身は「機動性が高いですね!」と評しており、着心地は満足しているみたい。

 靴も要るわ。転移してきた時のはね……。うん、もしアクシデントがあってルーイの姿を見られても、こっちでなるべく違和感ないようにって、カピバラさんがチョイスした努力は認める。でもね、どんな格好してても多分コスプレと判断されるから大丈夫よ。


 靴は革製品なんだけど見た目がゴツい軍靴に近いんだよ。メイドイン地球の普段着との差がえらい事だ。心許ないだろうけど、お出かけには紳士用サンダルを履いてもらおうと思う。


 父や弟が来た時にさっと履ける「ちょっとコンビニ行ってくる」用として買ったものが、彼氏の役に立つとは。税込五百円で買った私、グッジョブ!



 朝ごはんにお米を炊いて、ベーコンエッグにウインナー、ブロッコリーとシーチキンのマヨ和えと、簡単なものを作るとルーイは目を輝かせて美味しいと言って米もおかずもおかわりした。ほんと手抜きでごめん。

 そのうちちゃんとした手料理をご馳走するから。


 カピバラさんがお昼は「昨日と朝の残り物でいい」と言ってくれたからそうさせてもらう。晩は奮発してデパ地下のお惣菜でも買おう。


 そうして私とルーイは暫定デートに出かけた。





 初対面の印象通り、ルーイは色素薄い北欧系のイメージな訳よ。それで十六歳のルーイにこちらでの年相応の高校生みたいなコーデはなんか違うの。ぶっちゃけると、やっぱり二十代前半社会人って感じの方が似合うのよね。


 見かけだけでもあまり年が離れていないようにしたいとかの下心、もとい、女心は少ししかないからね!


 ルーイ、異世界の都会に絶句。こっち来てから彼の常識を覆す事ばかりだもの。速い乗り物に高層建築物。それだけで驚愕だよね。


 上空を轟音で飛ぶ機影に「ドラゴンですか!?」とルーイが叫んで、私を庇うように上体を被せてきたのも仕方がないと思う。あっちでは勇者召喚の理由にもなる、空飛ぶ脅威だもんね。


 巨大なビル群。目前を横切る自動車にバイク、自転車のスピード。クラクションに賑やかな音楽。(せわ)しない日常の街の喧騒だ。音と色の洪水に圧倒されてルーイは信号待ちの間、目を白黒させて突っ立っていた。

 カルチャーショックが半端ないはず。逆の立場なら私は失神してるかもしれん。


「わっ、セリナ! あの女性、下着姿じゃないですか!?」

「大丈夫、ああいった服なの」

「セリナのスカートでも短いのに……あちらの女性なんて……」

「うん、攻めてるよねえ」


 ルーイは女の人に目がいって仕方がないらしい。思った以上に街中に溢れる女性の服装の多様さに驚いている。時々ギョッとして一瞬女性を凝視するもののすぐに視線を逸らす。

 目のやり場に困るんだろうな。まあ、あっちじゃ足を晒すなんて考えられないものねえ。


 


「ルーイ! ルリアニーナ様色のシャツよ! ほら着てみて!」

「……僕がですか?」

 ちょっと、嫌そうな顔しない! 敬虔な女神信者でしょ!? いいじゃない優しいピンク色!


「大丈夫だって、上にブラウンのジャケット羽織るし!」


 初めての経験だけど、恋人の服選ぶのって楽しいわあ。

 ほんとはジャケットを濃いピンクにしたかったんだけどね。スタイルも顔もいいから絶対着こなせるし。それは追い追い。


 とりあえず脱サンダルをしたし、全身地球コーデになった。


 ぐるぐると腕を回し、足を高く上げたり屈伸して「うん、大丈夫。戦える」って基準はどうかと思うけど。東京で暴漢に遭う確率は低いと伝えても「これだけ人がいるのだから油断できない」そうだ。守護神官のサガだろうからもう何も言うまい。


 どこへ行こう。

 まずは定番の浅草寺かな? 仲見世はあっちの“市”みたいで楽しいだろう。 ド◯キとかで、色んな商品見せるのも喜びそうだ。


「ねえ、お昼ご飯食べようか」

「そう言えばお腹空きましたね。もうそんな時間ですか。セリナといると楽しくて時間が経つのが早いですね」


 わぁおっ! ……こういうのを恥ずかしげもなく口に出来るのよね。

 ルーイ・ラム・アシュロン、十六歳。タラシすぎない?


「おすすめの店があるんだあ」

 こっちこっち、とルーイの手を握る。

「セリナ、手が塞がります」

 ルーイは、着ていた服とサンダル、購入した物の入った手提げ紙袋を片手に持っているのを気にしている。


「周り見てよ。手を繋いでいる人たち、仲良さそうでしょ」

「確かに」

「それでね」

 繋いだ手の指を絡める。ルーイの肩がぴくりとした。くすぐったかったのかもしれない。

「これはね、恋人繋ぎって言うの」

 ちらりと隣のルーイを見上げれば、目を見開いて繋がれた手を見つめていた。反応がいちいち可愛いのう。


「……恋人繋ぎ……」


 そう呟くと、彼は絡めた指に僅かに力を込める。

「……いざとなれば荷物を捨てればいいか……」

 本当に頼もしいS Pだ。



 おすすめの店に入ろうとすると、ちょうど出てきた人にぶつかりそうになった。

「あ、すみません」

 互いに謝った。が、続けて「……セリナ?」と相手が言った。


 元カレだった。しかも二股かけてた問題のあの女つき。

 こんな偶然ある?





4、5話くらい、こちらでの話を予定です

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