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8話 ダンジョン その2

「あっ! あれ!」


先頭を歩いてた萩原が曲がり角の向こうを見て嬉しそうな声を出す。


その先にあったのは蓋が湾曲した赤い箱だった。



「やった! 宝箱だ!」


萩原はいそいそと宝箱に駆け寄り蓋を開けて中から何かを取り出した。

それは掌に収まるサイズの四角柱の物体だった。


まるで水晶のように半透明で綺麗な緑色をしている。


グリーンクリスタルと呼ばれるMPを200P増幅させるアイテムだ。


「やったな。まずは一つ目」


松岡はグリーンクリスタルを手に取って言った。


「やっぱり話に聞いてた通り宝箱があるみたいだね」


「よ〜し、この調子でどんどんみつけよう」


と萩原は意気込んだ。


そしてそこからしばらく進むと大きな部屋にたどり着く。



部屋は一辺の長さが12、3mぐらいの正方形で、四方の壁の真ん中から通路が続いている。


「さあどっちに行くよ」


その十字に分かれた部屋を見てどちらへ進むか話し始めた時。



正面の通路の向こうから複数のスケルトンの姿が見えた。


「でたぞ」


3体のスケルトンが部屋に入ってきたかと思うと、なんと左右の通路からもモンスターがやってきた。


「ちょっと…何匹出てくるの?」


萩原が後退りする。



総勢10匹ほどのスケルトンとゴブリンに俺達は包囲されてしまった。



これだけ大勢の敵を相手にする時は、こんな広いところより狭い通路に誘き寄せてその先で待ち伏せて一匹づつ倒すのが理想だが……



「あっ!」


楠本の声に後ろを振り返る。

すると俺の考えを見透かしたかのようにあのケージトラップがいつの間か現れ退路を塞いでいた。



「逃げ道はねえようだな。やるぞ!」


今井が先陣を切って駆け出す。


俺も鞘からロングソードを引き抜いて構えた。


そして正面から襲ってくるスケルトンに向けて大きく剣を振りかぶる。


そのまま斜め上から渾身の袈裟斬りを食らわせた。


スケルトンは背骨を切断され音を立てて地面に倒れた。



すると今度は右側からもう一体のスケルトンが剣で斬りかかる。


俺はそれを剣で受け止め鍔迫り合いになった。


するとその隙に萩原がそのスケルトンを横薙ぎで真っ二つにした。


安心したのも束の間、今度は右側からゴブリンが棍棒を振りかぶって襲いかかる。


俺は咄嗟に後ろにステップしてその打撃を回避した。


それと同時に左手をゴブリンに向かって伸ばし魔力を集中させる。



そして異常魔法フリーズを発動させた。


伸ばした手の先に淡い紫色の光の輪が浮かび上がる。


するとゴブリンはまるで動画を一時停止したかのようにピタッと動きを止めた。


フリーズは5秒間モンスターの動きを停止させることができる異常魔法だ。消費MPは12P。



金縛りになっているその隙に俺は水平斬りでゴブリンの首を跳ね飛ばした。



するとその時、部屋の中心に何かが突然現れた。



エンジ色のコートに冷笑を浮かべているような仮面。


袖から出た手袋にはステッキが握られている。


LV12の魔導士型のモンスター、ダークマージだった。


するとダークマージは手のステッキを俺に向ける。


その直後、ステッキの先端から電流が放たれた。


「くっ!」


俺は体を捻ってその電流を避けた。


そして直ぐに剣で反撃する。


だがダークマージは突然その場からふっと消えていなくなった。


驚いて周囲を見渡すとダークマージは俺の背後に瞬間移動していた。


ダークマージはこのテレポートの能力を持っているため攻撃を当てるのは困難だ。


すると楠本がダークマージに向けて手を伸ばした。


直後、楠本の手のひらの前に淡い紫色の光の輪が出現した。


今楠本が使ったのは異常魔法のシールだ。


1分間魔力を使った行動を封じることができる。消費MPは12P。


このダークマージにはシールが効果絶大だ。


魔力を使った行動を封じられれば攻撃もテレポートもできない木偶の坊と化す。


俺は何もできなくなったダークマージを斜め上から斬りつけた。


ダークマージはあっさりとやられ地面に突っ伏した。


その直後、突然スケルトンの体が凄い勢いで俺の方に飛んできた。


「うわっ!」


俺は地面に倒れその上にスケルトンが覆い被さる。


スケルトンの不気味な眼窩を目の前にして肝を潰す。


「あっ、わりい!」


どうやら今井に攻撃されて吹っ飛んできたようだ。


俺は直ぐにスケルトンを引き剥がし立ち上がる。


そしてそのスケルトンの背骨に剣を突き刺して止めを刺した。


ふと気がつくと部屋の中に敵の姿はもうなかった。


周りにはモンスターの残滓である白い粒子が地面から舞い上がっていた。



「やった! 殲滅したよ」


と萩原は歓喜の声をあげる。


「ふう、なんとかなったな」


松岡も安心した表情を浮かべる。


あれ程の数の敵に遭遇したにもかかわらずパーティみんながほとんどMPを失わずに済んだのは幸いだった。




そして俺たちはこの部屋でしばし休憩したあと探索を再開した。


次々に湧いてくる敵を倒しながら迷路のように入り組んだダンジョンの地下1階を練り歩く。


だが所々の通路があのケージトラップで塞がれており向こうのパーティと合流することはできなかった。


地下1階から2階へと続く階段は2箇所ありどうやら地下2階へ行かないと合流できない構造になっているようだ。


そして俺たちは階段を降りて地下2階へと突入する。


その地下2階をしばらく探索していると2個目の宝箱を発見した。


「きたぜ! 今度はなんだ?」


今井は意気揚々と宝箱の蓋に手をかけた。


するその時。



蓋が勝手に勢いよく開き中から何かが飛び出した。


そしてそれが強烈で妖しげな光を放ったかと思うと、今井は驚いた体勢のままフリーズをかけられたかのように固まる。


その上体の表面は石のような質感になっていた。


「カズ!」


「なんだ!?」


今井の前に浮いているのは、普通の人間よりひと回り大きい生首だった。


肌は青白く目は白目。

そして頭からは髪の毛のように沢山の蛇が生えてうねっている。



「うわっ! きもっ!」


その悍ましい姿に萩原は身を縮めて青ざめる。



メデューサ。

目から放たれた光を浴びた人間を石に変える能力を持つ厄介なモンスターだ。



これ以上石化の犠牲者を出さない為には速攻で仕留めるしかない。


俺は直ぐに手を伸ばし異常魔法フリーズを発動させた。



するとメドゥーサは突如動きを停止させた。


そこをすかさず松岡がロングソードを叩きつける。



頭がザックリと割れたメドゥーサは地面を転がった。


そして灰のように崩れて消えていく。


MATの画面には『23EXPを獲得しました』というメッセージが表示されていた。



「あっはははは!」


萩原は石化した今井を指差して笑い出した。


「なんで石化した姿ってこんなに面白いんだろ」


楠本も笑いながらカメラでその姿を撮影する。

確かにさっきまで隣で喋っていた人間が石になって固まっているのは面白いというかちょっと怖いというか。なんとも奇妙な光景だ。

俺達はしばし今井の石像を観賞した。



石化状態はしばらく時間が経てば解除されるが、モンスターによってその時間が異なる。

メデューサの場合は1時間ほどかかるらしい。

石化してる間は動けないがいかなる攻撃も受けることがない。


俺達は仕方なく今井を置き去りにして先に進んだ。







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