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7話 ダンジョン



どこの学校にもスクールカーストというものがある。


この松岡達はまさにそのカーストの頂点にいるグループだろう。


ルックスが良くて社交性があってパラメータも高い。

そんな松岡達のパーティにカーストの底辺にいる根暗な俺が馴染めるはずもなかった。




どんよりとした曇り空の下の草原を松岡達は和気あいあいと話しながら楽しそうに歩いている。


蚊帳の外の俺は居た堪れない気持ちを引きずりながらとぼとぼと後ろをついて行く。


時折モンスターが襲ってきてもみんながさっさと蹴散らしてしまうので俺は手持ち無沙汰だ。


その気まずさを誤魔化そうと俺は大して意味もなくMATで地図やモンスター図鑑を見たりしてやり過ごしていた。



「御厨君はどう?」


「え?」


「この辺りで美味しい獲物見なかった?」


「い…いや、俺この辺りには来たことないから」


そんな俺を気遣ってか、萩原はたまにこうして俺に話を振ってくれる。だがそれでも中々話の輪に入れず歯痒い思いをしていた。


「はは、そりゃ一人でクエストしてたら遠くまで行けねえよな」


この前のことといい今井は対して悪気があって言ってるわけではなさそうだが、それでもこいつとだけは仲良くなれる気がしない。



そんな俺にとって唯一の朗報といえば、話を聞く限りでは萩原にはまだ彼氏が居ないということぐらいだ。

まあ俺が彼女と付き合える確率など紙よりも薄いだろうが。




今日のクエストはゲートから西南西に2kmほどの場所にあるダンジョンの探索。

今までは入ることができなかったが先週クリムゾンボアを倒してドロップしたダンジョンの鍵を使って入ることができる。


パーティメンバーは男子が俺、松岡、今井、竹内、後藤。女子が萩原、日高、楠本、根岸。この前のメンバーに根岸を加えた9人だ。



因みに今日俺が使える魔法は炎の攻撃魔法ファイアフォースと異常魔法のフリーズだ。



30分ほど経った頃、俺達はダンジョンの入口に到着した。



そこには一辺が3mほどの大きな立方体が草原の真ん中にポツンと建っていた。


表面をよく見ると石でもコンクリートでもない不思議な材質をしている。

そして側面には扉らしきものがあり、その真ん中に鍵穴のような穴が空いている。



「ここがダンジョンの入口か……」


松岡は腰に手を当てて一瞥した。


「なんか思ったより簡素だね」


萩原もそう言って熟視する。



そして皆はポーチからヘッドライトを取り出すとそれを腰のベルトに固定した。

無論本来は頭につけるものだが、勇者達は戦い易いように腰に付けて使っている。



そして松岡は例の鍵を出すと鍵穴に差し込んで回した。


すると扉は左右に開くでもなく上に引くわけでもなく、突然ふっと消えて無くなった。

そして下に降りる階段が現れた。



俺達はその魔窟の入口を前にしばし口を紡ぐ。



「よっしゃ! 先頭はおれがいくぜ」


向こう見ずな性格の竹内が一番手を買ってでる。


「あたし怖いから最後がいい」


根岸はやる気なさそう言って道を譲る。


そして竹内に続いて俺達は長い階段を下りていった。



「なんかドキドキするね」


隣で萩原が呟いた。


「ああ……」


一段降りる毎にじわじわと緊張感が高まっていく。



「すげえな。どうやって建てたんだ? こんなもの…」


「どうしよう。急に怖くなってきたな〜」


「おもしれえじゃん。ワクワクすんぜ」


皆は怖さ半分、楽しさ半分といった様子で感想を漏らす。




この通称ダンジョンと呼ばれる迷宮の様な遺跡は、この島に6ヶ所あり、そして世界中に幾つも点在している。


それらは全て有史以前から存在しており、何の為に建てられたのか全く解っていない。

考古学最大の謎といわれている。


どんな材質でどんな方法で造られたのか、内部はヒビ割れなどの劣化が全く見られずそんな悠久の歴史があるようにはとても見えない。


そんな得体の知れない建造物の中に自分がいると思うと流石に少し背筋が冷える。


学校側も遊び心が過ぎるというか。わざわざこんな場所を利用してまで訓練することないだろうに。



このダンジョンは地下3階まであるらしい。

そしてクエストのルールに明記されている訳ではないが上級生の話によるとこのダンジョンにはアイテムが入った宝箱が幾つかあるらしい。

今日のクエストの目的はその宝箱を全て回収することだ。



階段を下りると幅3m、高さ3mほどの通路が続いていた。

そしてその先に右への曲がり角がある。


「たけっち、気をつけろよ」


松岡に忠告され竹内はゆっくりと顔を出し向こうに何もいないことを確認する。

角を曲がると次は左への曲がり角があった。



すると角の向こうから物音がしてみんな足を止める。



「きゃっ!」


「ひっ!…」


女子達が悲鳴をあげそうになる。

正直俺も少し寒気がした。


現れたのは剣を携えた二体の人骨だった。



「ボーンナイトだっけか? これ……」


そう言って竹内は武器を構えた。

この人骨型のモンスターは幾つか種類があり俺も正確に判別出来ない。


すると松岡はMATを前に出しカメラ機能でそのモンスターを撮影した。



MATにはモンスター図鑑というものが内蔵されている。

討伐の難易度を示すLV、獲得できるEXP、身体的特徴や行動パターンや魔法の耐性など、ありとあらゆる具体的な情報を閲覧することができる。


だがモンスターというのは数万種類と存在するため、遭遇してからではデータを探している暇がない。



そこで役立つのがこのカメラ機能だ。


モンスターの姿を正確に撮影すると、図鑑の中から瞬時に検索してデータを引き出してくれるのだ。

そしてそのデータはパーティメンバー全員の画面に表示される。









「スケルトン。……大して強くはないな……だけど光以外の魔法は余り効かないみたいだ」


「じゃああたしに任せて」


萩原は前に出てMATを手にした。


二体のスケルトンはその気味の悪い眼窩でこちらを見ながら、今にも崩れそうなほど腐敗した身体を軋ませてひたひたと歩み寄ってくる。



放たれたセイントビームが胸の中心に当たり、スケルトンは身体のパーツを撒き散らして倒れた。


そしてもう一体がそのボロボロに錆びついた剣を振りかぶるが、それより先に竹内はバトルアックスと呼ばれる手斧で相手の首をはね、頭蓋骨が地に転がる。


倒したかと思いきや、なんとスケルトンは少しよろけた後何事もなかったかのように再び攻撃してきた。


「って!」


肩に剣を叩き込まれ竹内は片膝をつく。



俺はすかさずフォローに入り、敵の腕を狙う。


剣を地面に落とし攻撃手段がなくなった首無しの人骨を余裕を持って水平に斬り引導を渡す。


「頭を狙っても大して意味はなく背骨を折らない限り動き続ける……だそうだ」


松岡は落ち着いた様子で淡々と読み上げる。


「……先に言え」


竹内はちょっと不貞腐れて立ち上がり裾の汚れを払った。



2匹のスケルトンを倒しその先へ進むと左右に道が分かれていた。


俺たちはそのT字路を特に理由もなく右を選んで進んだ。


するとその時。


突然目の前で何かが光った。


「いてっ!」


そして今井が何かにぶつかった。


気がつくと目の前にいつの間にか格子が出現しており道を塞いでいた。


よく見るとその格子はガラスのように半透明で紫色をしている。


「こいつが噂のケージトラップってやつか」


今井はその格子をまじまじと見つめた。


「どうしよう。分断されちゃったよ」


萩原は不安そうに言った。


突如現れたケージトラップにより俺たちは4人と5人にパーティを分断されてしまった。


「ちょっと待ってて」


と日高はそう言ってポーチから紙を取り出した。


それはこのダンジョンの地図だった。


どうやら松岡たちは以前このダンジョンに挑んでマッピングした上級生からこの地図を譲り受けたらしいのだ。


ちょっとズルい気もするが別にクエストのルールで禁止はされていない。


「大丈夫こっちから回れば合流できるよ。まあそっちもケージで阻まれてなければだけど」


と日高は地図を指でなぞりながら言った。


「まあ流石に閉じ込められて出れなくなるなんていう理不尽にトラップは仕込んでないとは思うがな」


と松岡は地図を凝視しながら言った。


そして俺たちは一旦二手に分かれて行動することになった。


俺は萩原、松岡、今井、楠本と一緒にダンジョンを進んでいく。









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