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第七話 エイドの補足説明

 エイドは王都の中に小さなものだが一軒家を持っているようだ。

 理央とエイドはそこに移動して、話の続きをするとともに、理央が済ませておきたい分解と解析と実験を行うことにした。


 なお、ポーションは購入しているものの、様々な素材を入手しておかないと何もできないので素材屋に寄ってからにすると理央が言ったのだが、エイドが『遠すぎて手に入らない素材を部屋で栽培してるから、そっちで何とかなると思うぞ』といったので、エイドの家に行った。

 そして実際に中に入った理央の感想としては、『麻薬の密造現場みたいだな』というものだったが、あながち間違ってはいないかもしれない。


 本来なら分布すら違う薬草たちが、一つの特殊な光を生み出すマジックアイテムによって育っているのだ。

 しかも、棚を用意し、それが何段にも積み上げられているため、かなりガチである。


「……とりあえず簡単に資料にまとめた図鑑も置いてあるし、問題ないよな」

「ああ。そこまで整理されているのなら問題はない」


 そういって、理央自身も自分が持ってきたものを取り出していろいろ見始めている。


「そういえば、そんな小さな調合キットでポーションの分解までやるのか?」

「そんなわけあるか。魔法しか使うつもりはない」

「?」

「実は散々武器攻撃スキルを観察できるタイミングがあって、その観察結果なんだが、魔法もスキルも、広義的には大して変わりはない。だから、スキルと言われている概念のほとんどは魔法として再現できるということだ」

「要するに……『調合スキル』を使うんじゃなくて、『調合魔法』を編み出して使うってことだな」

「そういうことだ」


 そういいながらも着々と準備を進めて、魔法陣を出現させてポーションをたらしたり、図鑑を見て薬草を選んで魔法陣の上に置いて解析したりし始める理央。


「さて、君自身の話に戻ろうか。横穴を掘って侵入してくる可能性があるから感知器を置くというのが神聖国のタブーと言っていたな」

「ああ。現在、神聖国は大陸の中央にある国家で、最もオーシャンモンスターの位置から遠い場所でもある。逆に、海に近いところには戦闘に特化した種族の亜人たちが住んでいるから、基本的に中まで攻め込まれることはない」

「当然だな」

「神聖国はそうして手に入れている『平穏』を武器にしている部分が大きいんだ。実際、神聖国は五大国の中で最も人口が多い。東西南北に残る五大国があるけど、神聖国から積極的に軍隊を派遣してもらうわけにはいかないしな。東西南北のエリアに分かれてそれぞれの大国がオーシャンモンスターを相手に戦っているのが現状だ」

「なるほど。軍事的に積極的要請はしたくない。と東西南北の全てが考えていたら、確かに神聖国の国力が削られることはないだろうな」

「ただ言い換えれば、神聖国以外の大国は明確に犠牲者も出るし、その犠牲者は働き盛りの若いものだ。正直、失うのはキツイ。とはいえ、大国としては国民を飢えさせてる暇なんてないからな。神聖国から食料を輸入することもある」

「本来なら食料の支援は足元を見られそうなものだがそういう割り切り方をしているのか」

「神聖国だって残る四つの大国を同時に相手したいとは考えてないしな。で、そういった『中央にいるからこそできる立ち回り方』で神聖国は成り立ってるんだ。そんなときに、『もしもすでに地下にはオーシャンモンスターが横穴を掘っていたら』……もっと言えば『すでに大陸の地下にオーシャンモンスターが入り込んでいることを神聖国が知っている』となれば……まあ、結果は見えてる」

「とくに後者であれば、その話題が出た時点でそのものを排除する動きになるだろうな。ところで、ウィズダム・セイヴァーズは神聖国とつながりが深いのか?感知器の開発と設置くらいなら独断で実行できるレベルの技術力を持っていそうだが」

「多分持ってるんじゃないか?ただ……トップが変わって、目先の利益に目がくらむようになるのは珍しいことじゃないだろ。あと、神聖国は歴代の勇者召喚に関わってきた経験があって技術……というより『発想』のアドバンテージが大きくて、それが魔法によって再現されることで国力がある。発言権は高いからな。あと、前のリーダーが神聖国が嫌いだったことも相まって、今は結構繋がりが深いみたいだ」

「そのパターンか。まあ確かに珍しいことじゃないな……ひょっとして今の会長はコストカットとか大幅にしてるのか?」

「やってるやってる。で、投資が激減した」

「まあ成長しなくなるだろうな。ただ、エイドがなんでここまでウィズダム・セイヴァーズに所属して働いてたのか気になるな。正直、能力を考えればどこにでも行けるだろ」

「……約束だよ」

「納得しよう」


 理央はポーションの観察は終わったようで、次はマジックアイテムを分解している。


「……何してるんだ?」

「分解して中身を確認している」

「自分なりに改造するつもりなのか?」

「違法じゃないだろ?」

「まあ、そうだが……」

「なら問題ない」


 そう言いながら分解を再開する理央。

 エイドはだんだん理央がどういう人間かわかってきた。

 ちらっと視線を向けると、話についていけない上に興味がない様子のアルテがすやすやと眠っている。


「エイドはこれからどうするんだ?」

「とりあえず東の方に行くよ。やっぱすごいポーションを作る材料が揃っても、調合時間と輸送費がかかると抑えるかもしれないしな」

「オーシャンモンスターと戦うのか?」

「戦うのは無しだ。足手まといがひとり増えるだけだからな。理央はどうするんだ?」

「ふーむ……まあ、この国に思い入れもないしな。やること済ませたら俺も東に行く。そこでやりたいことがある」

「理央はオーシャンモンスターと戦うわけか」

「やりたいのはもっと先のことだ」

「?」

「わからなくていい……そういえば、エイドがウィズダム・セイヴァーズからいなくなったら、王国の物流は大丈夫なのか?」

「大丈夫だろ。この国には、一応王族直下の商会があるんだ。そっちに吸収されるだけだろ。制御の能力が消えても、実際に行動したという経験は残ってるからな。最初はバラバラだろうけどそのうちパズルは完成するさ」

「そうか」

「理央。お前が東に来たら、お前についていっていいか?」

「俺になにか思うところがあるなら好きにするといい」

「りょーかい」


 話しているが、一応作業中である理央。

 だが、ひとまずやりたい事は終わったようで、ポーションの素材をいろいろ魔法陣にいれて一本のポーションを作ると、満足そうに笑みを浮かべる。


「用事は済んだか?」

「ああ。それじゃあ、東でまた会おう」

「おう!情報集めて待ってるからな」


 かばんを拾い上げて、理央はエイドの家から出ていった。

 残されたエイドは、部屋にカバンが残っているのに気がつく。


「ん?忘れ物か……いや、これ、収納量が膨大なマジックバッグだ!一体いつ作ったんだ……ん?書き置きか……『素材代金の為置いていく。好きに使え』……あいつ面白いな」


 エイドもまた、満足そうに笑みを浮かべた。

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