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第二十二話 アルテの見せ場

 穴の中を進んでいたが、時速六十キロで進んでいても全然奥が見えない。

 というかそれよりも前に、調査を任されているであろう竜人の男に追い付いてしまった。

 立ち往生していた。という方が正しいかもしれないが。


「なんだ。お前たちは」


 竜人の男性が威圧するように話しかけてくる。

 とはいえ、『敵か味方か』を判断しているような表情ではなく、『何やってんだこいつら』とでも言いたそうな表情だ。

 気持ちは大変わかる。

 時速六十キロで進みながら、天井に照明用のマジックアイテムを埋め込み、そして道を整備しながらやってくる奴がいたら同じような表情になるだろう。

 威圧しているように見えるのは本人の顔の作りが原因だ。おそらく。


 というわけで、亜人たちの王に発行してもらった『調査・整備独自権限保証書』を見せる。

 サインを確認して頷いた。


「なるほど、先ほどは威圧して失礼した。俺はドルガン。この穴の調査を任されている。独自の調査と整備の権限を持っているようだが、俺にも任務がある。出来る限り情報を共有してもらえると助かる」

「まあ、それは当然だな。で、立ち往生しているように見えていたが……原因はこれか」


 理央は奥を見る。

 そこには、斜めになっている坂と『水面』が見えていた。


「理央。これって、海水面とほぼ同じ高さってことか?」

「どうやらそういうことらしいな」

「え、でも、バスタードストリートとここは三十メートルの高さの違いがあるはずだよ?全然気が付かなかった」

「そりゃ俺の浮遊魔法でずっと移動していたんだ。俺は緩い坂になっていたことがわかっていたから調節してたけど、正直まっすぐに進んでいたようにしか見えないのは仕方がない……まあそんなことはおいておくとして、このここから先をどうするかだな」

「それなら僕に任せて!」


 アルテはそういって理央の鞄からポンッと飛び出すと、そのまま水中に消えていった。

 すると、水面が波打っていき、水位が低くなっていった。


「うおっ、これどうなってんだ?」

「おそらく、水とほぼ同化しているんだろう。その後、自分の体の後ろ側を引っ込めるように動かすことで、俺たちからは水が引いているように見えるんだ。考えたな」


 口でほめながら、理央はアルテが作っていく道を歩いていく。


「……俺も一緒に行っていいだろうか」

「ご自由に」


 ドルガンもついてくることになった。


「む、むううう……これ結構難しいね」


 アルテが水を制御しながら進んでいるが、海から来る水圧に耐えながらの作業になるので、難しい部分があるのかもしれない。


「アルテ。疲れはないか?」

「むむむ。ちょっと力を入れながらヨガをやっているような感じ。でも、動かない時は体力を使わないから、適度に休憩していいかな」

「ああ。いいぞ」


 理央は再び袋を取り出すと、その中から照明用のマジックアイテムを取り出して、浮遊魔法で天井に行って埋め込んでいく。


「……そのようなアイテム。あったかな?」

「既製品を独自に改造したものです」


 そっけなくいう理央。


「そこまで時間はなかったはずだ。あまりにも作り直すのが早いような気がするが、君は技術者なのかい?」

「まあ、それができなくもない」

「ふむ。なるほど。技術力もかなり優れているようだな。それに、保証書に書かれている限りでは、かなりの権限をすでに渡されている。四天王を倒したとも書かれているが……」

「お互いに本気じゃないけど、まあ、勝負して勝ったのは事実だな」


 えっちらおっちら進むアルテの速度に合わせて、ゆるゆると進みながら地属性魔法で道を整備しながら照明を埋め込む理央。

 かなり余裕のようで、手を止めることは一度もない。


「……なあ理央。一応聞いておきたいんだが、これ、一番奥まで行った後どうするんだ?」

「ん?」

「いや、これって、奥まで行ったら海につながるはずだよな。そこからどうするんだ?アルテをここで放置するわけじゃないだろうし」

「!?」


 アルテを放置。という言葉にものすごく反応しているような気がした。


「あくまで俺個人の予定だが、奥まで行ったらとりあえずオーシャンモンスターが寄ってきているかどうかを確認して、穴をふさいで強化して水が入ってこないようにする。まあ、あとは上に掘り進めるかなんかするさ。いずれにしても、ハートライト王国につながっていないから使いようがないんだよな……」


 理央はそうつぶやく。


「まあそれ以前に……お、来たな」

「え?」


 エイドが声を漏らす。

 そして付与魔法で視力を強化して奥の方を見ると、デカいワニがこちらに向かって泳いできている。


「うわっ!ワニ!?」

「そういうことだ。カエルが生きていようと死んでいようと、追加の戦力がこの穴を通じて送られてくるのは必然。というわけで、奥についたら水が入ってこないようにして、ついでに迎撃システムを作る必要がある」

「作業量がエグイいいいい……」


 そういいながら後ろに下がるエイド。


「……そういえばエイドは戦闘力はあまりなかったな」

「頭脳派だからな」

「ドルガンは?」

「俺は竜人としては普通だ」

「戦った相手が王だけだから比較できんな。まあ、いずれにしても問題はない」

「「え?」」


 そういっている間にも、ワニが突撃してくる。

 しかし、途中ですごい力で押されたかのように胴体部分が潰れた。

 心臓部分がやられたようで、ワニが勢いそのままに水がないこちらまでやってくるが、倒れながら地面を転がっている。


「そもそも、このあたりの水は今はアルテの一部だ。そもそもこちらに到達する前に、アルテを貫いてここまでくる必要がある。かなりの水を取り込んで圧縮して密度がかなりの物になっているアルテを貫通するのは困難だろう」

「……水圧っていう壁があるのか」

「そういうことだ」


 歩みを止めることなく進む理央。

 迷いはなく、確信していなければできないことだ。


「……なんていうか。すごいよな。理央って……」

「当然だ」


 鼻を鳴らす理央。


「よしっ!あるじ!作業が慣れてきた!もっとスピードを出せるよ!」

「わかった。ならやってくれ」

「レッツゴー!」


 楽しそうな様子でアルテが言うと、そのまますさまじいいきおいで水が奥に引っ込んでいく。


「うおおっ!すんごいことになってるな!」

「俺たちもさっさとついていくか」


 理央が浮遊魔法を使って、全員を地面から浮かせた。

 そして、そのまますごい勢いで水平移動していく。

 時速は六十キロではなく、百キロを超えた。


「うおおお!はええええええ!」

「な。なんだこの速度は!」


 エイドとドルガンが驚いているが、理央は気にしない。


(さーて、奥はどうなっているんだか……)


 あまり悲観している様子はない理央。

 ホバーボードに長時間乗ってなれているアルテの速度は圧倒的だ。

 油断するつもりはないが、速度は出しておいて何も損はない。


「……ん?奥が見えてきたな」

「みたいだな!で、どうするんだ!?」

「とりあえず、アルテには海から水が入ってこないように抑えていてもらうしかない。というより、そのすぐ後ろにオーシャンモンスターが大量に待ち構えている可能性もあるからな。まずはそっちの対応をして、どうにかして穴をこっちで使いこなせるように上に掘り進めて改造するぞ」

「だからやること多いんだよおおおおおお!」





 ……で、結局有言実行しました。

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