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第十六話 東端到着

「どうだエイド。楽しかっただろう?これが時速三百キロの世界だ!」

「殺す気か!ていうか風魔法で正面からの風をすべて無効にしてるのに、幻覚魔法で臨場感出すんじゃねえよ!」


 わざわざ夜に出発する意味もなかったので、昼間から街道を爆走しだした理央たち。

 基本的にエイドが言った通りで、風魔法で正面からの風をすべて制御しているため、物理的には快適なはずなのだが、理央自身、そしてエイドとアルテにも幻覚魔法を使っているので、臨場感は凄まじい。

 エイドとしても、大した固定具もないのに時速三百キロで移動すればどうなるのかなどわかっているが、臨場感というものが与えてくる恐怖には逆らえない。

 前後に長くするように拡張パーツをつけて、そこにエイドを乗せたのはいいが、エイドの精神をゴリゴリに削りまくっていた。


 ちなみに、アルテが何故平気になったのかというと、スライム故に適応能力が高いからである。

 暑さ、寒さは当然として、上位種になれば毒沼やマグマにすらも適応し、そしてその耐性を得る。

 長時間『高速』を理央が制御する安全な形で体験したことにより、速度にたいして適応しているのだ。もちろん自分が出せるわけではないが。


 というわけで、確信犯で爆走する理央と、それに適応したアルテはいいが、やはり人間であるエイドには辛いのだ。


「はぁ、時速三百キロか……ん?ちょっと待て。その速度で地上を動くのって、理央の世界でも、レールをしっかり敷いて頑丈な鉄の箱を走らせるんだよな。風の影響を受けにくいようにするために先端を流線型にするんだっけ?」

「よく知ってるな」

「なんでこんなむき出しで爆走するんだ!」

「ちょっと楽しくなってきたからに決まっているだろう」

「まあまあエイド。あるじはずっとこんな感じだからなれたほうがいいよ」


 なんだか弁護士を呼びたくなってきたエイドだが、無駄だろう。正直、エイドは理央に口で勝てる気がしない。


「で、もうそろそろ東端の亜人国家付近だな」

「そうだな」

「爆走しまくってたもんね。早かったなぁ……」


 馬車での移動が中心になる以上、食料と他に必要なものには限界がある。

 理央のように、時速三百キロのノンストップ。それプラス収納魔法に必要なものをすべて入れているとか反則だ。

 ちなみに、このような状態だと、話をするか飯を食うくらいしか娯楽がない。

 魔法を緻密に組み合わせて自動車もどきを作ることは可能だが、それでは異世界に来た意味がないとしてホバーボードを乗り回していた理央だが、特に疲れている様子はなく、魔法を使ったコンロなどで料理をした。

 だいたい何でもできるエイドは料理も可能であり、エイドとアルテも満足していた。

 アルテの味覚が人間と同じなのか疑問だった理央だが、同じようだったので楽である。別に違っていても調節するので問題はないが。


 とまあそんな状態だったわけだが、東端エリアの亜人国家に到着した。

 ちなみに、昼十時に出発して、休憩一時間込みで次の日の朝八時に到着である。

 めちゃくちゃ夜が怖かったのだ。

 理央は覚醒状態をいじる魔法を自分に使っており、ホバーボードの自動運転もあって疑似睡眠で頭を休ませていたが、その魔法はエイドには使っていなかったのでエイドはヘロヘロになっている。

 鬼である。悪魔である。鬼畜である。


「とりあえずエイドは宿で寝ているといい」

「ああ、そうさせてもらうわ。ずっと抱きつきっぱなしで全身がやばいのなんのって……」


 なぜ理央が平気だったのか聞く余裕すらないエイド。

 ちなみにアルテは夢の中だ。カバンの中で待機できるスライムがこれほど素晴らしい種族であることを感じたことはないだろう。


「亜人国家は、四つの国の中央と言える場所に、交流のための街があるんだったな」

「ああ、『バスタードストリート』っていう街がある。四種族のトップの会議室が中央にあって、普段は管理権限が与えられた責任者がいるみたいだが……ふああ……まあ、逆に言えば、そこに行けば情報も集まると思うぞ」

「わかった」


 というわけで、早速通行証を使って門を通って、そのまま料金が高めの宿に直行。

 エイドは体の汚れを風呂で落とすと、寝間着で爆睡し始めた。


「あるじ。エイドは一人で宿に放置して大丈夫なの?」


 部屋を出るときにアルテが待機していたカバンを背負ったことで疑問に思ったようだ。


「問題ない。小さなカバンしか持たせてないし、防御魔法も一見わからないようにかけている。それに、エイド自身、ウィズダム・セイヴァーズにいた頃は徹夜が多かったはずだ。そのうち起きるだろ」

「そんなものかな。まあ、エイドが無事ならいいけどね」


 というわけで宿を出てそのまま街の中央に向かう。

 そこには五階建ての建造物があり、『バスタードストリート管理局』とかかれていた。

 どうやら制限があるのは二階からで、一階フロアはあまり問題はないらしい。


「あまり人間はいないな。亜人がほとんどか」

「まあこの街だしね」


 最新情報が載っているという新聞を購入して読んで見る。


「……思ったよりオーシャンモンスターは出現数が多いんだな」

「このあたりはダンジョンが出現したら即座に攻略されて、オーシャンモンスターに戦力を集中させる体制をとってるみたいだね。オーシャンモンスターの出現数は二日に一体か」

「なんかイーストフレアの王都で確認した武器の素材をこっちで入手してる場合もあるみたいだな……ていうか、ウィズダム・セイヴァーズの支店があるのか」

「エイドってこんなに遠くの街まで関わってたのかな?」

「関わってたんだろ」

「本店の方ではドエライ事になってるけど、距離がありすぎてこっちには影響がまだないのかな」

「そんなもんだろうな」


 ホバーボードは馬車よりも圧倒的に早い。

 正直、まだ情報が伝わるまでに時間がかかるだろう。

 できたとして、空気を察することができる程度だ。

 とはいえ、東に大きな影響力を持つイーストフレア王国にとって、このエリアの情報は重要のはず。


「あるじ。とりあえず必要な情報は何なの?」

「亜人たちの王の情報かな」


 理央が目指すのは建国である。

 オーシャンモンスターがいるせいで、この大陸は周辺大陸との関わりがない。

 そもそもエレメント大陸があまり広くないので、窮屈なのだ。

 外とも関わりたい。

 そのためには、自分で法律を作って運用できる国があったほうがやりやすい。


 その程度のことだ。


「さて、ちょっと探検してみるか」

「目的地は?」

「決めてない。勘だ。最近移動しかしてないからな」

「そーだね」


 というわけで、バスタードストリートの探索開始である。

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