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第三話 昔話

 朝、窓から差し込む陽光は天幕に遮られディアナの元には届かない。


「お嬢様、朝ですよ。起きてください」

「おはよ」

「おはようございます」


 「お嬢様」という言葉からも分かるように僕は女に、しかもこの帝国の姫様という立場に転生してしまっていた。

 身の回りのことは、ほとんどマリアがやってくれている。

 母は僕を産んだときに亡くなったらしく、父とは夕食を摂るときに時々一緒になるから話すこともあった。


 僕がディアナ=デア=サウスとなって七年の月日が過ぎた。

 現在七歳の僕は目下、言語との格闘中だ。

 というか前世、中学一年なりたてで英語に手をかけ始めたばかりの僕に新言語とかハードルが高すぎやしないだろうか。

 今では聞き取ることはできるようになったが、おそらく僕の言葉は彼女らネイティブからしたら違和感丸出しだろう。

 そう考えると不安で、今でも僕はイントネーションの違和を感じさせないために三歳から使い続けている単語を並べる様な話し方をしている。


「お嬢様、顔を洗いましょう」

「わかった」


 洗面台の前へ行き、鏡を見る。

 鏡には、銀髪ロング、金色の瞳をもった少女が映っている。

 自分でも見惚れるほどの容姿に今日もつい、まじまじと見てしまう。


「くすっ」と声が聞こえる。

 自分の顔をまじまじと見つめる僕が面白かったようだ。

 気恥ずかしくなり、すぐに顔を洗った。

 いつも通り朝食を摂って歯を磨く。


「お嬢様、今日はどう致しましょうか」


 十歳から学園に通うようになるが、八歳になり予習をするようになるまでは基本的に自由だ。


「本、読んで」

「かしこまりました。今日は……この本にしましょうか」

マリアは少し悩んでから一冊の本を手に取った。


(帝国創世記)


「うん」

「では」


 昔々、吸血鬼たちの国に羽はなく牙もない、そして眼も赤くないまるで人間のような少女がいました。


 みんなが少女を蔑み、嫌います。


 遂に少女は追い出されてしまい、放浪の末に人間たちの大陸にたどり着きます。


 当時いくつもの国が大陸にひしめき合い、各地で戦争が繰り返されていました。


 長年の戦で民は疲弊し、土地は荒れ果てています。


 誰もが戦争の終結を願い日々を生き延びていました。


 そんな中、少女はある村に恐る恐る立ち寄ります。


 少女は村の人々に受け入れられ、暫くは穏やかな日々が続きました。


 しかし悲劇は突然訪れます。


 少女が別の村へ買い物に行き、帰ってくると村は既に何処かの国の敗残兵に占領され多くの村人が死んでいたのです。


 少女は地面に落ちていた剣を手に、たった一人で兵達を倒してしまいます。


 怒り、悲しんだ少女の瞳は常とは違う深紅に染まっていました。


 少女はこのようなことが二度と起こらないよう、戦争を無くす決意をします。


 少女は村々を巡り、同士を集め、鼓舞し、数多の命を犠牲にして遂に諸国を統一しました。


 その後、少女はかつて過ごした村に国を作り皇帝としておよそ四百年もの間、老いることなく諸国を統治し続けました。


 そして少女の死後、帝国には少女の特徴が表れる真祖と呼ばれる存在が希に生まれるようになったのでした


「おしまい」

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