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しかし何度も山を歩き回っている北山は、そんなものがこんな所に存在してはいないことを知っていた。
――なんだ、あれは?
見ているうちに北山は気付いた。
その壁のようなものが移動しているのだ。
――えっ!
北山が見ている目の前をそれは通り過ぎ、やがてその姿を消した。
北山には長く感じられたが、実際に見ていた時間はごく短いものだった。
北山はしばらくその場に立ち尽くしていたが、急に恐怖心が襲ってきて、慌てて山を下った。
家に帰ってからさんざんあれの正体について考えてみたが、北山にはあれがなんだったのか、皆目検討がつかなかった。
深雪が夜に部屋でテレビを見ていると、窓のほうから何か聞こえてきた。
――えっ、なに?
ここはマンションの四階である。
誰かがベランダに侵入して来たとは考え難い。
深雪は咄嗟に見に行くことを思いついたが、やめた。
怖かったからだ。
何かとんでもないものが、そこにはいるかもしれないのだ。
すると再び聞こえてきた。
それは小動物の鳴き声、あるいは幼い女の子の声のようなものに思えた。
――鳥かしら?




