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あまりのことに巨人を凝視続ける岩崎が、あることに気がついた。


最初は真っ黒に見えた巨人の身体だが、よく見れば、ごくごく小さな光がその身体の中にある。


それもかなりの数が。


――なんだあの小さな光の群れは?


さらに見続けて、ようやく気付いた。


それは星だった。


無数の星が、その巨体の中にある。


つまりその身体の中に、宇宙が見えているのだった。


巨人の身体の中に宇宙があるのか、それとも身体が次元の通路のように宇宙と繋がっているのか。


それは岩崎にはわからなかった。


わかったことは、そこにまぎれもなく宇宙が存在しているということだけだ。


岩崎は思わず一歩下がった。


するとそれに反応するかのように、巨人の身体がすうっと煙のように消えてしまった。


そこには化け物の死体と、消えかかっている炎があるのみとなった。


「あらあら、もういっちゃうの。言いたいことは言ったから、今日はもう終わりなのねえ。自分の子供が死んだっていうのに、ほんと淡白だわ。ちょっとは悲しみなさいよ。まったく。私と二人っきりの時は、あんなにも濃厚で激しいのにねえ。にしてもいくらたくさん産んだからと言っても、それでも帰るのが早すぎるわよ。急いでしなきゃいけないことなんて、何一つないくせに」


神城だった。岩崎は神城を見た。


「たくさん……産んだって?」


神城は答えた。


まるで親しい友人と、他愛もない世間話でもするような口調で。


「そうよ。知らなかったの。まあ誰にも言っていないから、知らないのも当然といえば当然だけどね。私は卵で産んだのよ。米粒なんかよりもずっとずっと小さな卵でね。数万個、いや数十万個はあったわね。そんなものはいちいち数えてないから、よくはわからないけど。その中で気の早い二人だけが、先に卵からかえっちゃったの。あんな小さな卵から産まれたと言うのに、出てきたらあっと言う間に大きくなっちゃって。腰が抜けるほどびっくりしたわよ。赤ちゃんの成長する過程を楽しみにしていた母親としては、ほんと肩透かしだったわ」


「……数十万個」


「そう、数十万個よ。それぐらいはゆうにあったわね。それでね、特別にあなたにだけに、とってもいいことを教えてあげるわ。私、曲がりなりにも母親だから、わかるのよ。残りの卵が全部、今夜一つ残らずに孵化するってね」


神城がいい終えた途端、何かが山の中で動いた。


高い木々の間を得体のじれないものが蠢いている。


それも一つや二つではなかった。


標高千メートルを超える山。


その山の岩崎が見ることが出来る場所、広大な範囲全てにおいてそれが起こり、山全体の木々が揺れているのだ。


驚愕の岩崎を尻目に、神城が静かな口調で言った。


「ほうら、言ってるそばからみんな卵からかえっちゃったわ。でもこうして見てみると、なかなか壮大な眺めね。でもあれだけの子供たちのお腹を、みんないっぱいにしようとしたら、いったいどれだけの数の動物や人間が必要かしらねえ」


岩崎が神城を見つめていると、神城が恥じるような仕草でうつむいた。


「それなのにあの人ったら。言ったのよ、帰る間際に。もっともっと子供が欲しいんですって。もう、まったく、困った人だわ」


神城はそう言って、両頬を両手で覆った。



         終

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