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目的のものはレンガの下にあった。
北山はそれを手に取ると、建物の正目へと歩き出した。
そして正面で止まった。
――それじゃあ、行きますか。
その顔は、なんだが嬉しそうだった。
岩崎が家で武器になりそうなものを闇雲に家捜ししていると、北山がやってきた。
気付けばすでに空が赤く染まっている。
「そうですか。なるほど。木藤さん、そんなことを言いましたか」
木藤の話をすると、北山はそう言った。
「で、来ましたよ」
「えっ」
「神城ですよ。私のところにも来ました。ほんと、あんなにも凍りついた笑いは、六十年以上生きてきましたけど、いままでに一度も見たことがなかったですね。すざまじいものでした」
「そうですか。北山さんのところにも、やっぱり来ましたか」
岩崎は神城の顔を思い出した。
確かにあれは、異常なまでに凍り付いていた。
人間にあんな顔が出来ること自体が不思議なほどに。
「で、木藤さんは、強力な武技が必要だと言ったんですね」
「ええ、確かに言いました」
「木藤さんの強力な武器って、いったい何ですか?」
「それは聞いてませんので、私にはわかりませんが」
「それで岩崎さんは、何か強力な武器とかは、用意できましたか?」
「いえ、これと言っては……」
北山は小さく何か言うとバッグを引き寄せ、筒状のものを取り出した。
それは二本のダイナマイトだった。
「今は定年ですけど、それまではこいつを扱うような仕事していたんですよ。会社に行って、無断で取って来ました。今日は休みで鍵が掛かっていますが、鍵の隠し場所なんて当然知っていますからね。いつもはもう少しあるのですけど、最近使って補充がまだだったみたいですね。この二本しかありませんでした。その点が残念と言えば残念ではありますが」
岩崎が何も言わずにダイナマイトを見つめていると、北山が言った。
「そんな顔をしなくても大丈夫ですよ。こいつの扱いには充分慣れていますので、ご心配無用ですよ。私に任せてください。出来ればこんなものは使わなくてすむものなら、そっちのほうがずっといいのですが」
「そうですね。使わなくてすむものなら……」
北山が岩崎の肩を叩いた。
「それじゃあ、行きますか。木藤の話が本当だとしたら、私たちはもう逃れることが出来ないでしょうね。猪を大量に殺したやつ、ばかでかい秋田犬を殺したやつ、あなたの恋人を襲ったやつが、私たちを狙っています。もはや崖っぷちですね、私たちは。そうなれば、もうやることは一つですね」
「その一つとは何ですか?」




