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明らかに猪の数が減っているのだ。
例年ならもうニ、三頭仕留めていてもよいころなのだが、仕留めるどころか見かけることさえほとんどなかった。
足跡や糞を探そうにも、それを探すのに苦労しているありさまだ。
――いったい、どうしたというんだ?
いくら考えてみても、猪が減る原因は思いつかない。
捜し歩いて疲れた北山は、山の傾斜に腰を下ろした。
その時である。
――うん?
手を地面につけた際に、指に何かが当たった。
手にとって見ると、丸くて柔らかくて、ぐちゃぐちゃしたものだった。
気付けば同じものがそばに、もう一つ転がっている。
北山はそれも拾い上げた。
感触その他から何かの生物の体の一部のような感じだが、すでに黒く変色しかかっていて、いくら観察してもよくわからなかった。
北山はそれを地面に置くと立ち上がり、歩きはじめた。
その日一日粘ってみたが、北山は何の成果も上げることが出来なかった。
北山は次の日も山に分け入った。
数年前に定年を迎えた北山は、その気になれば毎日でも猪を狩ることが出来た。
しかしそんな北山でも、二日連続で山に入ったのは初めての経験だった。
それほど追い込まれていたのだ。
猪が一頭も仕留められないでいることに。




