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そして下谷は感じた。
神城以外の何かの視線を。
それも桁外れに強力なやつを。
それは何千何万という人間に、いっせいに凝視されているような感覚だった。
その視線は、空から感じた。
いつも神城が見上げているあたりからだ。
下谷はゆっくりと、実にゆっくりとその目を神城から空へと移した。
しかしそこには青空が広がっているだけで、他には何ひとつ見当たらなかった。
鳥さえ飛んでいない。
しかし下谷は空を見た途端、さらに強烈な視線を感じた。
いや、それは視線などという次元のものではなかった。
強力でわけのなからない、今までに一度も感じたことのない圧倒的なエネルギー。
いびつで混沌とした、不快極まる負の波動。
それが空から下谷の全身に向かってきていた。
降り注いでいるといった状態なのだが、降り注いでいるといった生易しいものではなかった。
なんだかの暴力を、頭の先から足の指の先までのいたるところに受けている。そう言ったほうが近いかもしれない。
殴られ、蹴られ、引っ?かれ、鋭利なもので刺し抜かれ、熱湯を浴びせられ、高圧の電流を落とされ続けている。
そんな感覚だった。
それは錯覚ではけっしてない。
歴然とした事実だ。
下谷の全身がまぎれもない現実のものとして認識しているのだ。
下谷に吐き気と頭痛、めまいと身体のしびれ、そしてのどの渇きが襲ってきた。
喉は異常なほど乾いているのに、同時に全身から脂っこい汗をかいていた。
この時になって下谷は、はっきりとわかったことがあった。
あの何も見えない空、何もいないはずの空間には、何かが確実にいる、と。




