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「そうですか……。それでは北山さんは、その強力な武器を用意しようという予定とか気持ちはあるのですか?」
「今のところはないですねえ。そもそも強力な武器と言ったって、私の周りにそんなものは一つもないですから。用意したくても出来ないですしね」
「ですよねえ。いきなり強力な武器が必要とか言われても、私もそんなものは、身近にはないですね」
「岩崎さんもそうですか。まあ、そうですよね。普通は。でも一応頭にとどめておいて方がいいかもしれませんね。私はそう思います。あいつを確実にやつけるためには」
「そうですね。頭にはとどめておきましょう。あいつに会っても強力な武器がないがために仕留めることができなかったら、なんの意味ないですからね。出会ったら何が何でも確実にやっつけたいですし」
「そうですね。その通りですよね」
この時、北山の脳裏にはある映像が浮かんでいた。
前に一度見たことがある、動く壁、もしくは塀である。
あれが人間の作った建造物かなにかではなくて、生き物でしかも今回の犯人だとしたら。
北山は自分の持っている猟銃に視線を落とした。
――こんなもん、たとえ何丁あったとしても、とてもじゃないが追いつかないなあ。
北山は、このことを行動を共にしている岩崎にちゃんと報告しておくべきかどうか、迷った。
しかし、結局言うのはやめた。
言ったら無駄に不安をあおるだけで、岩崎の今後の行動に悪影響を及ぼすと判断したからだ。
――強力な武器ねえ。
――強力な武器かあ。
その後は二人ともしばらく口を開かなかった。
共に強力な武器のことで、頭がいっぱいだったからだ。
深雪は食い入るようにテレビを見ていた。
いま放送しているのは、ローカルニュースである。
深雪は子供の頃から、テレビというものをあまり見ないたちだった。
学校で友達が人気のアニメやかっこいいタレントの話題で盛り上がっていても、その輪の中には入れないでいた。
そんな状態でも、友達との会話を成立されるためだけに、わざわざテレビを見るということはしなかった。
二次元の映像に、なんの魅力も感じなかったからだ。




