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「なるほど」
「それでは今日は挨拶がてらということで、この辺で失礼します」
そう言うと木藤はくるりと背を向けて、歩き出した。
しかし数歩歩いたところで振り返り、岩崎に告げた。
先ほどとはうって変わった、重い声で。
「いちおう言っておきます。忠告です。大事なことですから心して聞いてください。私も普段は猟銃一丁で山狩りをしていますが、あの化け物にそんなものが通用するとは思ってはいません。まず無理でしょうね。あいつを直接この目で見たわけではないのですが、そう確信しています。二本の警官が持っているようなちゃちな拳銃も同じです。あいつにはそんなものは、ほとんど効果がないでしょう。もっと強力な武器が必要です。強力な武器が」
「強力な武器……ですか?」
「そう、強力な武器です。必ず必要になりますね。間違いなく」
「そうですか。ところで木藤さんは、その強力な武器というものを、持っているんですか?」
木藤はそれには答えずなんとも言い難い奇妙な顔で笑うと、再び背を向けて、そのまま歩き去った。
次の日、山狩りの時に岩崎は、木藤という男が訪ねて来たことを北山に告げた。
「そうですか。岩崎さんのところにも来ましたか」
「北山さんのところにも来たのですか」
「ええ、来ましたよ。一昨日に」
「私のところに来た前の日ですね」
「ええ、そうなりますね」
「何て言っていましたか?」
「同じですよ。強力な武器が必要だと」
「そうですか……」
「……」
お互いにしばらく無言だったが、岩崎が先に口を開いた。
「それで北山さんは、木藤の言うとおり、強力な武器が必要だと思いますか。どうですか?」
「そうですね。あいつを実際にこの目で見たわけではありませんが、木藤さんの言うとおり、必要かもしれませんね、強力な武器というやつが」




