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「どうして私といっしょに犯人を探そうと思ったんですか。一人のほうが好きなだけ探せるというのに」


北山が頭をかいた。


「それはねえ。動機付けと言うやつですよ」


「動機付け?」


「そう、動機付けです。私は猪が減ったのは、猪を襲っているやつがいるからだと考えるようになりました。ですから猪を狩ると同時に、猪を襲っているやつも探していたのです。そこにきて、この騒ぎです。山の中には毎日朝から日が沈むまで、警官や猟友会のメンバーが、大勢うろうろしています」


確かに山に入ると、警官や猟銃を持った人によく遭遇する。


猟友会のメンバーであり、猟銃を持っている北山といっしょでなければ、岩崎一人だったとしたら、見つかればすぐにでも山を下ろされていたことだろう。


「そうすると、私の気持ちに変化が現れました。あれだけ大勢の警官や猟友会のメンバーが山に入っているのに、私一人が参加したところで、いったい何の役に立つと言うのだろうか。あれだけの人が真剣に探しているのに、私が見つけて首尾よく猪の敵を討つことが出来るのだろうか。あんなに大勢で探しているのに、まだ見つからないのは、ひょっとしたらそんなやつはここにはいないのではないのか。そもそも猪を次々と襲っているようなやつに、こんな一般的な猟銃が通用するのだろうか。そういった余計なことを、考えなくても良いことを、いろいろ考えてしまいますね。マイナス思考ってやつですか。よくないことですね。ほんと、よくない」


「……」


「そう言った感じで、ここのところ気持ちが萎えていたんです。そこで思いついたのが岩崎さん、あなたです」


「私……ですか?」


「ええ。岩崎さんは恋人があいつに襲われた。誰よりもあいつを憎んでいるんじゃないかと思いましてね、そこで岩崎さんといっしょにいれば、私のモチベーションもふっかつするのではないかと」


「……」


「期待通りでした。あなたを見ていると、なにがなんでもあいつをみつけてやっつけてやりうという気になりますね」


「そうですか……」


「まあぶっちゃけて言うと、岩崎さんを利用させてもらっているわけなんですがね。すみません」


北山はまた頭をかいた。岩崎が言った。


「理由はともかく、私を誘ってくれたことには、感謝しています。私一人では、山に入ることすれ出来ないわけですから。何もしないで一人っきりで悶々と過ごしていたら、ただ人任せで待っているだけだったら、おそらく私はどうにかなっていたことでしょう。こうして山に入り、犯人を捜していることが、私に希望を持たせて、私に生きる気力を与えているのですから。北山さんには、本当に感謝しているんですよ」


「いや、そういっていただけると、私も有り難いです。岩崎さんを利用していることに、ずっと引け目を感じていましたから」


北山は誘ってきた時のように、右手を差し出した。


岩崎はその手をしっかりと握りしめた。



下谷は今日も鉄塔に登っていた。


それが仕事だからだ。

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