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「北山です。どうしてもあなたにお話したいことがあって。ちょっとお邪魔してもよろしいですか」
岩崎は北山を中に招きいれた。 応接室のソファーに腰を下ろすと、早速北山が話し始めた。
「猪の数が減っているんですよ」
「猪の数が……ですか?」
この時の岩崎には、北山が言わんとすることがまだよくわかっていなかった。
「ええ。考えられないくらいに減っています。私はかれこれ四十年もの間、猪を狩ってきました。ここら一帯が住宅地になる前から住んでいますし。と言うより、実家がこの辺りでしたので、生まれてから今までずっとここで生活をして来ました。そしてあの山は、私が子供の頃は遊び場で、成人してからは狩猟の場ですから。おそらくあの山については、私ぐらい知っている人間はいないと自負しています」
「……」
「そんな私ですから猪の数が減っていることも、よくわかります。それも何年かかけて少しずつ減ったのではなくて、今年に入ってから急にものすごい勢いで減っていますね」
「……それで」
「……そうでしたね。どうも私は順序だててわかりやすく説明するということが、うまくなくて。言いたいことを真っ先に言う癖がありましてね」
北山はポケットから何かを取り出した。
それは小さな巾着袋だった。
そしてその中に入っているものを、岩崎に見せた。
「!」
それは二つの目玉だった。
「猪の目です。昨日見つけました。前にも見つけたことがあるのですが、それは腐敗が進んでいて、目玉ということに気づきませんでした。そのうちに秋田犬が目を残して姿をくらましたという話を聞きまして。それでも最初に見つけたものが目玉であるということに気づかなかったのですが……」
「……ですが」
「あなたの話をニュースで知って。そしてようやくあの時みつけたものが、猪の目玉であると言うことに気付いたんです。それからは猪ではなくて目玉のほうを探していたのですが、昨日ようやく見つけることが出来ました」
「……なるほど。あなたの言わんとすることが、なんとなく想像がつきました。想像がつきましたが、ここはあなたの口からはっきりと言ってもらえますか」
「わかりました。私はここで生まれ育ちました。あの山には特別な思い入れがあります。そしてあの山に住む猪たちにも。私が一方的に猪を狩っているので理解してくれない人が多いのですが、私はあの猪たちが大好きなのです。それを次々に襲って喰っているやつが……」
そこまで言って、北山の口が止まった。




