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警察は最初から同一犯人の仕業だとほぼ断定していた。


そうなれば、秋田犬や飯田を襲う理由が岩崎にはない。


その上、恵一という高校生の証言が出てきた。


彼は日華利が一人で公園に入って行くのを見たと言った。


そしてこちらのほうが重要な証言となったのだが、暗くてよくは見えなかったが、山に何か大きな動物がいたと言ったのだ。


これには警察もマスコミも飛びついた。


警察は当初、ほぼ熊であろうと判断した。


確かにこの山には、数はけっして多いとは言えないものの、熊が生息している。


とは言っても普段は千メートルを越える山の奥深くが生息地域とされ、ふもとや住宅地までは降りてこないだろうと意見が出された。


実際、人里で熊を見たと言う人は誰もいなかった。


しかし野生動物のやることに、人間の理屈や都合は無関係である。


山に熊がいること、秋田犬や人間を襲うことが出来る動物はここらあたりでは熊しか存在しないと言う歴然とした事実によって、いつの間にか犯人は「ほぼ熊」から「完全に熊」と修正されてしまった。


少年が言った「あれは絶対に熊なんかじゃなかった」と言う声も、轟音の中の鈴の音ようにかき消されてしまった。



熊と認定されてからは、警察、そして猟銃を持った猟友会のメンバーが集まってきた。


とは言っても相手は県を代表する千メートル超えの山である。


全体を隅から隅までくまなく調べ上げるなんてことは、とてもじゃないが不可能だ。


警察も猟友会も岩崎のすむ住宅街の近く、そして五キロほど離れた小さな町の近くを中心にして、山狩りを開始した。


警察から、不要の外出は控え、特に夜間に一人で出歩かないようにとの勧告があったが、みな言われる前からそうしていた。


誰もが命は大事だからだ。


子供たちは登下校の際には集団で集まり、何人もの大人がそれに付き添った。


岩崎がコンビニに行くと、コンビニの店長が夜間の売り上げが劇的に減ったと嘆いていた。


もちろん岩崎にとっては、そんなことはどうでもいいことだ。



マスコミの数は減ったが、それでも周りの騒ぎは、当分おさまりそうにない。


しかし岩崎は日常生活を取り戻しつつあった。警察やマスコミ、近所の人への対応も落ちつき、しばらく休んでいた会社に出社するようになった。


そこであらためて日華利を失った悲しみが、岩崎を押さえつけた。

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